あなたはトイレのあとに手を洗わない人を見かけてショックを受け、本稿にたどり着いたのだろうか?
それともトイレのあとに手を洗わない自分に、ふと疑問を感じて検索行動を起こしたのだろうか?
本稿ではトイレのあとに手を洗わない派の全国の男女190人にアンケート調査をおこない、その心理や知られざる実態を浮き彫りにすることができた。
なお本稿には、2015年11月に消費者庁がおこなった先行調査が存在し、同調査では15.4%もの人がトイレのあとに手を洗わないことが判明している。
この先行調査を受けて、さらに深掘りしたものが本稿ということになる。
早速だが、本調査の結論をいうとこうなる。
▼本調査の結論
・洗わない派の女性の8割、男性の5割は「隠れ洗わない派」
・洗わない派の最大派閥は小のときのみ洗わない
・トイレ後に手を洗わない最大の理由は、面倒くさいと必要性を感じない
・洗わない派に洗う派への転向を期待はすべきではない
本稿を読めば、トイレのあとに手を「洗う派」の方も「洗わない派」の方も、「洗わない派」のことを正しく理解できるようになるだろう。
では手始めに、トイレのあとに手を洗う派からすれば衝撃的な事実から、目を通していただきたい。
トイレのあとに手を洗わない「隠れ洗わない派」が多数確認される
まず今回調査したトイレのあとに手を洗わない男女190人に、いついかなるときもトイレのあとに手を洗わないのか、それとも特定の状況でのみ洗わないのか?を聞いた。
その結果、プライベート時のみ手を洗わない「隠れ洗わない派」の存在のほうがむしろ多数派であることが発覚した。
特に女性ではその割合が82.3%と大多数に及んでいる。
この「隠れ洗わない派」のなにが驚くべきかというと、我々が職場や学校、公共機関のトイレなどでまれに目にする、いわば「洗わない派」ガチ勢は実は少数派でしかない。
パブリックな場ではトイレのあと手を洗うが、自宅などプライベートな状況になると途端に手を洗わなくなる「隠れ洗わない派」が、男性ではその1.4倍、女性では実に5.9倍が、その裏に潜んでいるということなのだ。
つまりこれは職場の同僚や学校のクラスメートが、トイレで手を洗っていたとしても、それはあくまで表の顔に過ぎず、裏の顔があるかもしれないことを意味する。
同時に「洗う派」の方たちは先の消費者庁の統計で、トイレのあとに手を「洗わない派」が15%近くいると聞いて、「そんなにいる?」と違和感を覚えた方もいるかもしれない。
15%といえば、30人のクラスで4~5人はいる割合になるからだ。
日本全体で考えれば、東京都の人口よりちょっと多い1800万人程度は存在していることになる。
その違和感の最大の理由は、この「トイレのあとには手を洗うべき」という社会的な圧力を巧妙にかわしながら、手を洗わない自分を裏で貫いている「隠れ洗わない派」の存在があるからだ。
あなたの「○○課長ったらトイレから出てきたのに手を洗わないのよ。ゾッとしちゃうわ」という愚痴に共感を示しているその相手が、実は「隠れ洗わない派」である可能性は否定できない。
こうしたことを考えると、トイレのあとに手を「洗わない派」の存在は、あなたが思っている以上に身近である。
また少数ながら「職場や学校のみトイレのあとに手を洗わない」とする謎の勢力が、女性では3.8%、男性は9.9%存在するのも気になるところだ。
この謎の少数勢力については、あとで触れることにする。
では話を本筋に戻して、一体全体なぜ彼らはトイレのあとに手を洗わないのか?
次の章ではその心理や理由に迫っていこう。
トイレのあとに手を洗わない理由は「面倒くさい」と「必要性を感じない」で8割
トイレのあとに手を洗わない派の男女190人に、その最大の理由を聞いた結果は下表となった。
▼トイレのあとに手を洗わない理由
面倒だから | 45.3% |
---|---|
必要性を感じない | 36.3% |
手が濡れるのがイヤ | 7.4% |
手荒れる | 4.7% |
洗面所や水洗いが不潔 | 3.2% |
水道代がもったいない | 1.6% |
習慣 | 1.1% |
蛇口を汚す | 0.5% |
すがすがしいほど事前に予想できた結果だが、「面倒だから」(45.3%)がトップの理由となり、「必要性を感じない」(36.3%)が続き、この2つの理由で8割を超えた。
具体的に実際の回答例を挙げると、このようなものになる。
「家なら面倒くさいし、小だけなら別に大丈夫だろうと思って洗っていません」(41歳女性、プライベート時のみ「洗わない派」)
「ハンカチを持ち歩くのがめんどくさい」(29歳男性、公私ともに「洗わない派」)
「男性と違って女性は大でも小でもトイレットペーパーを使って拭くので、直接汚れに触れるわけではなく、手が汚れる要素はないと思ったからです」(27歳女性、プライベート時のみ「洗わない派」)
面倒くさいとか必要性がないと言われると、それ以上ツッコミどころがなくなってしまうわけだが、筆者を含め「洗う派」の多くの人たちも、おそらく心当たりがあるはずだ。
出勤前などバタバタしているときや、人を待たせているときに、洗面所で少しだけ指先を濡らす「気持ちだけの手洗い」という行為をやったことを――。
その延長上に「面倒くさい」や「必要性を感じない」という心理が存在すると考えられる。
また女性では最後の女性のように「汚れに触れてないのに、なぜ洗う必要があるのか?」という声が散見された。
自身に触れず、小用を足す特殊スキルを習得している男性からも同様の声はあった。
トイレのあとの手洗いは、簡易的に済ませるならほんの数秒のことではあるが、人は1日に平均で5~7回小用を足す。
仮にトイレのあとに手を洗う秒数を3秒と仮定するなら、年間単位で90~130分くらいは手洗いに費やしていることになり、80年の生涯を終える頃には丸4~7日はトイレ後の手洗いをしている計算となる。
つまりトイレ後の手洗いを「面倒くさい」と切り捨てることにも、一種の合理性はあるわけだ。
また「必要性を感じない」とする「洗わない派」の中には、手洗いこそしないものの除菌スプレーを使用しているからという理由も少数ながらあったことは付記しておきたい。
以降は割合がガクンと落ちるが、次に多かった理由は「手が塗れるのがイヤ」(7.4%)、「手が荒れる」(4.7%)とするものだった。
具体的にはこのような声だ。
「手が常に乾燥しているので、あまり水洗いしたくない」(44歳女性、プライベート時のみ洗わない派)
「冬に手の乾燥がひどく、ハンドクリームがおちると痛いから」(35歳女性、プライベート時のみ洗わない派)
このように手荒れがある人が「洗わない派」になっているケースも、少数ではあるが見られる。
また洗う派がハッとさせられる視点として「洗面所や水洗いが不潔」(3.2%)という声も紹介しておきたい。
「公共のトイレの手洗い場でうがいしている人がいる。手を洗っている時に前の人が使った所でうがいした水が跳ね返ってきたら嫌だから」(40歳男性、学校や職場のみ洗わない派)
「ハンカチで手を拭くと、かえって不衛生」(60歳男性、公私ともに洗わない派)
このようにきれい好きが昂じた結果、洗わない派に転向してしまったケースもある。
そしてこの層が先に触れた「学校や職場のみトイレのあとに洗わない」とする謎の少数勢力とほぼ重なっている。
つまり職場や学校などの不特定多数が使う洗面所を、不衛生に感じて手洗いを避けている、という心理だ。
筆者は居酒屋のトイレで、洗面所に向かって嘔吐している泥酔した男性を見かけたことがあるが、その洗面所で手を洗うのはかなりの心理的抵抗を感じた。
また夏場など汗を拭ったハンカチで、トイレのあとに洗った手を拭くのが衛生的なのか?と問われるとかなり疑問なところがある。
このようにハンカチやトイレの洗面所は本当にいついかなるときも清潔なのか?という、重大な問いを投げかける意見だ。
このように「洗わない派=だらしない」と決めつけてかかることはできない一面もある。
トイレのあとに手を洗わない人たちの実態調査
さてここまで読んでこられた方は、トイレのあとに手を洗わない派の知らなかった一面に触れ、衝撃を受けたのではないだろうか?
それと同時に、これまで単純明快だった「洗わない派」のイメージ像が、とらえどころのないものに思えてきたかもしれない。
そこでこの章では、トイレのあとに手を洗わない派の実態をより詳しく深掘ることにしたい。
トイレのあとに手を洗わない派はどの属性にもいる
トイレのあとに手を洗わない人というと、ヨレヨレのスーツをきた中年のおじさんというイメージがなんとなくあるが、実態はまったく異なる。
まず性別を見ると、男性が58.4%とやや上回るものの、女性も41.6%と決して少なくない割合が「洗わない派」に存在している。
また洗わない派の年齢層にも着目してみると、男女ともにどの世代にも存在していることがわかる。
ちなみにあくまでこの集計結果は、インターネットアンケートに回答してくれた洗わない派たちの年齢層なので、単に20~40代の回答者の割合が多いという意味でしかない。
「50代以上は洗わない派の割合が少ない」など実際の「洗わない派」全体の年齢の分布を示しているわけではないので、その点は留意いただきたい。
ここではトイレのあとの手を洗わない派は、中年のおじさんだけでなく、どの性別・どの世代にも分布しているということを確認するに留めておこう。
洗わない派も大のときは手を洗う人が多数派
次にトイレのあとに手を洗わない派といっても、多様であることを示したい。
トイレは主に大と小のときがあるわけで、洗わない派の中でも見解が分かれるのだろうか?
結果は、トイレのあとに手を洗わないといっても、それは小のときのみ洗わない人が多数派であり、大のあとは洗う人が多数となった。
大も小も洗わない強硬派が女性では24.1%、男性では28.8%存在するものの、男女ともに7割近くは「小のときのみ洗わない」人たちだ。
これは見る人の目でかなり割れるところだろうが、筆者のように「大のときは洗ってるなら、まぁいいか…」と、洗わない派に対して溜飲を下げた人も少なくないはずだ。
トイレのあとに手を洗わないと聞くと、大でも小でも洗わない強硬派がつい連想されるが、実際は小のときのみ洗わない派がマジョリティであることが確認できる。
トイレのあとに手を洗わない人は20代までにその習慣が定着する
最後に洗わない派の人たちは、何歳ごろから洗わない派になったのか?という点を見ておく。
結果は、男女ともに8割近い「洗わない派」が20代までにその習慣が定着していることがわかった。
ちなみに今回「0歳」と回答している人は、物心ついたときにはすでに「洗わない派」だったいう意味であり、厳密な0歳ではないことは留意いただきたい。
ただ男女ともに3割近くは幼少の頃から「洗わない派」を貫いており、学校生活や思春期を経る10代においても女性は22.8%、男性は31.5%が洗わない派に転向している。
裏を返せば、トイレのあとに手を洗わない派は遅くとも20代にはすでに洗わない派になっており、なにも洗わない派の中年のおじさんだけを槍玉にあげることはナンセンスということだ。
他人からトイレのあとに手を洗わないことで注意をされたことがある人は半数
ここまでの調査結果を大きく見ると、トイレのあとに手を洗わない派はあなたが親しくしている人の中に紛れていても、なんら不思議ではないということがわかる。
それと同時に、高校を卒業するまでに洗わない派になっている割合が半数近いことから、歴戦の洗わない派たちぞろいであることもうかがえる。
となると、これまでにトイレ後に手洗いしないことに関して友人や上司から指摘や注意を受けたことが何度もあるだろうが、毅然として「洗わない派」を貫いているという連想が自然と働く。
ところが実際は、そうではない。
なんと女性では84.8%、男性では72.0%もの洗わない派の人たちは、これまでに他者から指摘や注意を受けたことは「あまりない/まったくない」と回答している。
むしろ指摘や注意を受けても洗わない派を貫いているガチ勢は、男女ともに2割前後にとどまり、大半の洗わない派はそうした批判とは無縁状態で暮らしている。
これは冒頭で見た学校や職場などパブリックな場では手を洗うが、プライベートのときのみ洗わない「隠れ洗わない派」の存在が多数いることが主要因と考えられる。
実際にそうした隠れ洗わない派には、こんな声もある。
「面倒くさいのですが、学校や職場で誰か別の人がいるときは、洗うフリをします」(48歳男性、プライベート時のみ洗わない派)
そこまでフリをすることに手間をかけるなら、もう洗ってしまえばいいのでは?と思わないでもないが、ここまで巧妙な「隠れ洗わない派」も存在しているのだ。
ではこうした洗わない派は実際に「トイレのあとは手を洗いなさいよ!」と指摘されることがあれば、態度を改めるのだろうか?
それでも手を洗わない習慣を改める人は少ない
結論をいえば、指摘や注意をしたところで、トイレのあとに手を「洗わない派」からの転向を期待することは難しい。
実際の洗わない派の声を紹介すると、このようなものだ。
「他の人からしたら洗うのが当然だと思うので指摘されたら洗います。ずぼらな性格が出ている自分が悪いなと思います。ですが直すのはその時だけで、今後は必ず洗うという気持ちにはならないです」(42歳男性、いつも手を洗わない派)
「洗うべきだと思います。できれば自分でも手を洗うようにしたいのですが、プライベートであれば迷惑をかける範囲も狭いと思うので、洗わないことが多いです」(52歳男性、プライベート時のみ洗わない派)
「言いたいこともわかるので特別な感情は抱かないです。洗った方が清潔感はあるかと思いますが、洗わない自分がいます」(46歳男性、いつも手を洗わない派)
――見よ、この圧倒的「のれんに腕押し」感を!
何も筆者がこうした声を恣意的にピックアップしているわけではなく、半分くらいはこうした「うんうん、洗ったほうがいいね、そうだね。私はやらんけど」というスタンスのものなのだ。
そしてもう半分は、議論の土俵にすら乗ってもらえないつれない返答だった。
「清潔好きなのはわかるけど、人のことはほっとけと思う」(39歳女性、プライベート時のみ洗わない派)
「他人は他人。オレはオレ」(51歳男性、パブリックな場でのみ洗わない派)
いずれにしても衛生観念という自身の中だけのジャスティスを振りかざしたところで、真摯に受け止めてくれるような様子はない。
洗わない派から聞いているフリをされるか、うるさがられる公算が高いのだ。
このあたりはトイレのスリッパは必要か?不要か?の記事でも触れたが、衛生観念は本当に人それぞれだ。
もちろんトイレのあとに手を洗わないよりも洗ったほうが衛生的であることは科学的なエビデンスをもって証明できるかもしれないが、「こうしたほうが衛生的」ということをすべて実践できている人間もまたいない。
たとえばジーンズも着用するたびに洗濯したほうが衛生的なのだろうが、色落ちを嫌ってまったく洗わない人もいるし、自宅のトイレ掃除も毎日、もっというなら用を足すたびにしたほうが衛生的だが、それを実現できている人もなかなかいない。
トイレのあとに手を洗わない派の大多数は、「隠れ洗わない派」として、パブリックな場では手を洗う歩み寄りを見せている。
であれば、もちろんトイレのあとに手を洗わず食品など口に入れるものを触っているなら抗議するべきだが、「洗わない派」はそこを妥協点として見て見ぬふりをするというのが落としどころではないだろうか。
まとめ
以上が、トイレのあとに手を洗わない派に関する調査レポートだ。
洗わない派といっても多様であり、隠れ洗わない派や大のあとは洗うなど、同じように語れないところがあることがわかった。
最後に本調査の結論をおさらいしておく。
▼本調査の結論
・洗わない派の女性の8割、男性の5割は「隠れ洗わない派」
・洗わない派の最大派閥は小のときのみ洗わない
・トイレ後に手を洗わない最大の理由は、面倒くさいと必要性を感じない
・洗わない派に洗う派への転向を期待はすべきではない
アンケート実施方法
▼アンケート方法
・アンケート方法 インターネット上でアンケートを実施
・回答者数 トイレのあとに手を洗わない全国の男女190名
・調査日 調査日2024年3月21~26日
・設問は単一選択式、および記述式
・調査主体 【300人のホンネ】編集部
コメント
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男子トイレにて、
個室から出てきて、その後立ってオシッコしてる人の生態について、調査希望。