スマホが「もっていて当たり前」の時代になると、私たち親は人類がこれまでになかった悩みを抱えることになる。
そう、子どもにいつスマホを持たせるべきか?という問題だ。
あまり早くに持たせすぎるとデメリットがありそうな気もするし、もし子どもがなにかのトラブルに巻き込まれてしまったのでは、後悔することにもなりかねない。
実際に今回子どもにスマホを買い与えた先輩パパ・先輩ママ193人への調査をおこなったところ、スマホを買い与えたことによる深刻な後悔ポイントがあることがわかった。
それと同時に、後悔ポイントは先回りして知っておけば十分に対策できることであることも判明した。
本稿の結論としては、下記だ。
▼本稿の結論
・スマホデビューは「中学生」が最多だが、後悔度も高い
・スマホを持たせて後悔するのは「スマホを手放さない」こと
・後悔しないポイントは、事前のルール設定と機能制限
・スマホとうまく付き合う方法を親子で工夫する
子どもにスマホを買い与えるべきか悩んでいる方、またスマホを買い与えたものの早くも後悔を覚えている方にとって、本稿を最後まで読めば、子どもとスマホがうまく付き合うためのポイントが理解できるはずだ。
子どもにスマホを買い与えたタイミングは「中学生」が最多
まずは初めて子どもにスマホを買い与えたときの状況を確認していくことにしよう。
初めて子どもにスマホを買い与えたタイミングは、下図となった。
もっとも多かったタイミングは「中学校」で、全体の30.6%を占めた。
次いで「小学校低学年」が27.5%と続き、かなり早いタイミングでスマホを子どもに買い与えている層も少なからずいることがわかる。
総じて、中学生の段階で実に86.5%もの子どもがスマホを手にしている結果となった。
また小学生の段階で半数以上の子どもがスマホを買い与えられていることも注目に値するだろう。
ではなぜ中学校や小学生低学年のタイミングで、子どもにスマホを買い与えるのかは、その理由に着目してみるとよくわかる。
子どもにスマホを買い与える理由は「子どもと連絡をとる必要性」が最多
子どもにスマホを買い与えた理由を聞いた結果は、下図となった。
約4割の親がスマホを買い与えた理由として、外にいる「子どもと連絡をとりあう必要性があるから」と回答している。
これはどういうことかというと、実際の回答を見るとハッキリわかる。
「電車で塾に通い始めたので、迎えに行く時間を連絡してもらうため」(36歳女性、子が小学生低学年のときにスマホ購入)
「部活で帰りが遅くなるため、連絡手段として購入しました」(44歳男性、子が中学生のときにスマホ購入)
つまり子どもが「習い事・学習塾」や「部活」を始めたタイミングがターニングポイントとなっていることがわかる。
実は3番目に多かった「安全性を考慮して」(17.6%)という理由も、これとよく似ている。
つまり「習い事」や「部活」で帰宅時間が遅くなったり、子どもが単独で家の外にいる時間が増えた結果、子どもの現在地や安否確認をするためにスマホを買い与えたというものだ。
実際の回答では、このようなものが典型例だ。
「電車通学の中学に入学したのですが、帰宅時間がわからず親として不安を感じたり、緊急事態に連絡が取り合えないために親子で不安を感じることが何度かあったため、中1の途中でスマホを買い与えました」(47歳女性、子どもが中学生のときに購入)
いずれにせよ子どもと「連絡をとりあう必要性」や「安全性を考慮して」という理由は、親側が主導となり子どもにスマホを持たせたケースと言える。
一方で、2番目に多かった「同級生に合わせて」という理由は、子ども側が主導となってスマホを手にするケースといえる。
「卒業する前に友達と携帯のLINE交換したいと言ったので」(44歳男性、子どもが小学生高学年のときにスマホ購入)
「子どもたちの連絡はほとんどがLINEで回ってきます。小学生の時ですら友達にまだ買わないのか、としつこく聞かれ子ども本人が気にしていたので」(41歳女性、子どもが中学生のときにスマホ購入)
以上のように、子どもにスマホを買い与える理由は、
・現実的な必要性に迫られるケース
・子どもが置かれている環境に合わせる
という2つの大きなケースがあることがわかった。
子どもにスマホを与えて後悔する人は4割程度
ここまで子どもにスマホを買い与えたときの状況を確認してきたが、「小学校低学年」ともなるとやはりスマホをもつには早いという印象ではないだろうか?
分別がつくはずの大人でさえスマホ依存が指摘されているのに、それが子どもともなればやはり不安視するのは自然なことだ。
そこで、実際に子どもにスマホを買い与えた先輩パパ・ママに、スマホを買い与えたことへの後悔度を聞いてみた結果が下図だ。
大きく見ると、子どもにスマホを買い与えて多かれ少なかれ後悔したことがある人は約4割となった。
一方で6割の親たちは後悔はしてないと回答しているので、スマホを買い与えたメリットのほうを強く感じていることがわかる。
ただ4割という割合としては決して無視できる割合ではないため、この点を掘り下げて詳しく見ていくことにする。
先輩パパや先輩ママが後悔したポイントには、これからスマホを子に買い与えることを考えている人や、買い与えた直後に後悔の念に駆られた人にとって多くの学ぶべきポイントがあるからだ。
もっとも後悔するポイントは「スマホを手放さない」
結論からいえば、子どもにスマホを買い与えてもっとも後悔するポイントは「スマホを手放なさなくなった」(47.5%)が突出して多かった。
ちなみに2番目に多い「ゲームしすぎ」も「スマホをずっと触っている」とかなり似たところがあり、この2つを合わせると実に7割も占める後悔ポイントとなる。
具体的にどのような状況になっているかというと、実際の回答を紹介するとこのようなものだ。
「スマホをずっと触っていて、話すときにも顔を見てくれない」(43歳男性、子どもが小学校高学年のときにスマホ購入)
「スマホを触る時間がとても増え、食事の時間もスマホを気にするようになってしまった」(46歳男性、子どもが小学校高学年のときにスマホ購入)
「友人とオンラインでゲームを長時間やって、勉強が疎かになっている事です」(39歳女性、子どもが中学生のときにスマホ購入)
つまりいい大人であるはずの筆者も若干耳が痛いところだが、家族とのコミュニケーションや勉強よりも、スマホでYoutubeを見たりゲームに熱中してしまうという状況だ。
インターネットにつながったスマホがあれば、無料でも十分楽しめるエンターテイメントやコンテンツにアクセスすることはできるし、それらに没頭してしまうのは大人も子どもも変わりはない。
とはいえ、学生は勉強することが本業ともいえるし、また学生生活でしかできないことに時間を割いてほしいと願う親側の心理もよくわかる。
主要な後悔ポイントには、このようなスマホに没頭している時間で犠牲になるものがあることを示唆している。
またほかの後悔ポイントに目を向けてみると、「有害情報に接触している」(11.3%)やスマホを通じた友人とのコミュニケーションがトラブルに発展し、「コミュニケーション疲れ」に陥っている状況(5.0%)が多くはないもののあるようだ。
実際の回答を紹介すると、このようなものがあった。
「顔も見たことない、年齢もかなり上の人と繋がっていて正直不安です」(41歳女性。子どもが中学生のときにスマホ購入)
「友達とLINEをしていて、そこで悪口などのやり取りが行われていたのを知った時、少し早かったかなと思いました」(38歳女性。子どもが小学校低学年のときにスマホ購入)
インターネット上には残念ながら詐欺サイトやフィッシングサイトのようなものもあるし、親からすれば触れてほしくない情報を掲載しているサイトもある。
またSNSはコミュニケーションツールのひとつであるが、そこでは良好なコミュニケーションだけが行われているとは限らない。
これらがあるから子どもにとって「スマホ=悪」と位置づけるのは行き過ぎた考えだが、スマホを与える以上はこうしたリスクがあることは無視できない。
「中学生」のタイミングで買い与えると後悔度が高い
ところでスマホを子どもに買い与えるとこうした後悔ポイントがあるということは、買い与えるタイミングが早ければ早いほど後悔度が高いのか?とつい考えたくなる。
一般的に、自制心やネットリテラシーは成長とともに身につくものと考えられるからだ。
ところが実際には、スマホを買い与えるタイミングと後悔度はあまり関係ないことがわかる。
子どもにスマホを買い与えてもっとも後悔したタイミングは「中学生」のときに買い与えた親たちだった。
その「中学生」をピークとして、山型の割合になっているので、買い与えるタイミングが早いと後悔する確率が上がるというわけではない。
また多くの人が買うタイミングとしている「中学生」は、後悔する確率がもっとも高いということもできる。
その一方で、小学生低学年の塾や習い事を始めた子に対して「まだスマホは早いかな?」と懸念しているのであれば、後悔する確率は30%程度のものなので、あまりそういった懸念は必要ないのかもしれない。
いずれにしても、どこかのタイミングで子どもにスマホを買うことになるのは間違いない。
であれば、自身の子どもがスマホといい距離感でスマホと付き合っていける方法を講じていくほうが現実的だ。
子どもにスマホを買い与えて後悔しないためのポイント
では子どもにスマホを持たせても後悔しないためのポイントを見ていくことにしよう。
今回回答してもらった先輩パパや先輩ママのアドバイスを集約すると、後悔しないためのポイントは以下の2つとなった。
▼子どもにスマホを持たせても後悔しないための2つのポイント
1.事前にルールをしっかり決める
2.機能制限はマストで入れる
以下、それぞれを詳しく見ていくことにしよう。
事前にルールをしっかり決める
まず多くの先輩パパ・先輩ママから聞かれたアドバイスとして、スマホを購入する前に子どもとしっかりとルールを決めることである。
どのようなルールを設定すべきか?というと、このようなルールだ。
▼事前に取り決めておくといいルール
・スマホをエンタメツールとして使うときの使用時間(ゲームやYoutubeは1日1時間までなど)
・スマホを使用していい時間帯(夜更かし対策)
・ゲームやスタンプなどへの課金額(月に500円までなど)
・新しくアプリをインストールするときのチェック
・親がスマホをいつでもチェックできること
・トラブルや意図せずお金が発生したときはすぐに相談すること
なぜ購入前にこれらのルールを取り決めておく必要があるかというと、後出しのルールは破られるからに他ならない。
子どもの目からすれば「親の都合でよくわからないルールが導入された」と映ってしまったのであれば、なんとかそのルールをかいくぐることを考えるほうに思考が向いてしまう。
また実際の回答者のアドバイスを紹介すると、このようなものがあった。
「お子さんとじっくり約束ごとを決めたほうがいいと思います。お子さん主体で守らせることを決める、約束を破ったらそれは自分自身で決めたことであればその罰に対して納得すると思うので。何か困り事があればすぐに親に話せる関係作りも大切です」(41歳男性、子どもが小学校高学年のときにスマホ購入)
「ルールを守らない事もあるので、守らなかった時どうするかを子ども自身に決めさせるのがよかったなと思いました。(親が決めると結局守らないので)」(48歳女性、子どもが中学生のときにスマホ購入)
特に中学生という時期は親から過度に干渉されることを嫌う年代でもあるため、ルールを押し付けるのではなく、子どもから側からルールと守らなかったときの罰則をコミットさせるようにもっていくと効果的なようだ。
また初めは厳しめに設定して、子どもがしっかりルールを守っていればルールを緩和するということはいくらでもできるが、最初にゆるいルールを設定して厳罰化していくのはどうしても無理がある。
ちょっとした手順の違いで効果はまるで異なるので、スマホを持たせるときはちょっと厳しすぎるかなというくらいのルール設定でもかまわないだろう。
機能制限はマストで入れる
次に、子どもにスマホを買い与えても後悔しないポイントとして、スマホの機能制限をマストで入れるべきだ。
「子どももわからない間に課金しているので、スマホゲームの課金できない設定は必須だと思います」(47歳男性、子どもが中学生のときにスマホ購入)
「googleのファミリンクなどを活用すればチェックもできるので安心です」(44歳女性、子どもが小学校低学年のときにスマホ購入)
たとえばiPhoneの場合だと、「設定<スクリーンタイム」から下図の設定画面に入れる。
「休止時間」ではスマホを使えなくなる時間を設定できるので、深夜など子どもの夜更かし対策のために活用できる。
「Appの使用時間」では、アプリの使用時間に制限をかけられるので、ゲームやYoutubeなど子どもが熱中してしまいがちなアプリには使用していい時間の制限をかけることができる。
子どもの勉強がおろそかになることが心配な方は、設定すべき機能だ。
「コンテンツとプライバシーの制限」では、アプリでの課金制限をかけることができるので、必須の設定といえる。
また「コンテンツとプライバシーの制限」ではsafariで閲覧したとき、成人向けコンテンツをブロックすることができる。
だがほかのブラウザを使えばそうした情報にも接触できてしまうので、有害情報から子どもを守りたいときは各携帯会社のフィルタリングサービスを利用するようにしよう。
ちなみにこのフィルタリングの利用は法的な義務でもある。
またandroidでも、これに似たような機能制限がかけられるので、ぜひ活用しよう。
回答にあった「ファミリンク」も親側のスマホで子のスマホの利用状況を確認できるものなので、管理しやすくなっている。
子どもにスマホを買い与えるのは大きなメリットもある
ここまでは子どもにスマホを買い与えたときの後悔ポイントと、後悔しないための対策を見てきた。
だがスマホは、あくまでツールにすぎず、善も悪もない。
金属バットを購入して野球に勤しむ人もいれば、他人に襲い掛かる人もいる。
このとき「金属バットを悪用する人もいるから、作るべきではない」という議論は、不毛としかいいようがない。
スマホもそれと同じだ。
実際に先に触れたアンケートではスマホを子どもに持たせて、メリットのほうを大きく感じている親が6割だった。
実際に子どもにスマホを持たせるメリットというのは、このようなものがある。
「いつでも連絡を取ることができ、居場所に確認もできることです」(33歳男性、子どもが小学校低学年のときにスマホ購入)
「さまざまな情報をスマホで調べるようになり色々な知識が自然に身についているので買って良かったなと感じます」(33歳男性、子どもが小学校高学年のときにスマホ購入)
もっとも親の声として多かったのが、前者のGPS機能で子どもの現在地が確認でき、帰る時間が遅くなるときも子どもから連絡をくれる安心できる、という声だった。
これは防犯という意味で、想像以上の効果を発揮するのではないだろうか。
またなにかに興味をもったとき、Google検索やYoutubeなど無料でアクセスできる情報だけでもかなりのボリュームになる。
かつては図書館のごく限られた本の中からほしい情報を探したり、その分野に詳しいかどうかもわからない限られた大人に質問するという非効率な情報摂取をせざるを得なかったが、学習という面においてもスマホは威力を発揮してくれることは間違いない。
確かにスマホは子どもにとってデメリットもあるが、こうしたメリットと天秤にかけたとき、「デメリットもあるから」という理由だけで持たせないという判断を下すのは、惜しい気がしないだろうか?
子どものスマホの月額料金は、平均3,065円
最後にもし子どもにスマホを持たせるとなったとき、どれくらいの月額料金を見込んでおけばいいかについて見ておこう。
大きく見ると、月額4,500円未満でおさまっている人が78.8%、月額3,000円未満でおさまっている人が53.4%という結果となった。
また全体の平均値は、3,065円だった。
携帯各社が家族割などの割引キャンペーンを実施しているので、うまく活用すればそれほど家計の負担にならない金額で子どもにスマホを持たせることができる。
もちろん繰り返しにはなるが、アプリへの課金制限などの設定は必須だ。
まとめ
以上が、子どもにスマホを買い与えた先輩パパや先輩ママに対する調査レポートだ。
今回の調査をおさらいすると、こうなる。
▼本稿の結論
・スマホデビューは「中学生」が最多だが、後悔度も高い
・スマホを持たせて後悔するのは「スマホを手放さない」こと
・後悔しないポイントは、事前のルール設定と機能制限
・スマホとうまく付き合う方法を親子で工夫する
スマホには親が後悔してしまうようなデメリットもあるが、いずれスマホデビューさせなければならない事実は動かない。
そうした中で、私たち親側がスマホに対して無知であることがトラブルを引き起こすこともある。
子どもがスマホといい関係性を築くためにも、単なる娯楽ツール以上に私たち大人がスマホに対する興味を抱くことも大切なのかもしれない。
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