いまやSNS上でライブ配信をおこなう配信者(ライバー)たちの収益源としてすっかり定着した「投げ銭」。
Youtubeならスパチャ、ツイキャスならお茶爆とプラットフォームごとに投げ銭の概念は微妙に異なるが、人気配信者ともなれば、この投げ銭により億単位の収益がもたらされている。
ではこの莫大な収益を支えているリスナーたちは、一体どういう心理で「投げ銭」を行っているのだろうか?
そこで【300人のホンネ】編集部では、投げ銭をした経験がある男女105名にアンケート調査をおこなった。
また本調査では、1回の配信につき最高投げ銭額が1万円以上のリスナーを「重課金リスナー」として分類し、比較を交えることにした。
この分類の意図は配信者の投げ銭からの収益を支えるのは、圧倒的多数の一般リスナーと、一部の重課金リスナーに二分されると考えられるためだ。
投げ銭ユーザーの心理は大きく2パターン
まずは回答者に投げ銭をするときの心理について、そのホンネを聞いた。
結果として、投げ銭ユーザーの心理は大きく二つに分類できる。
投げ銭ユーザーのホンネ
・純粋な応援
・配信者からの見返り期待
結果として、全体では「(配信者の)活動や配信コンテンツに対する応援」(44.8%)が最多となった。
では応援とは具体的にどういうことなのか?
配信者が配信中に目標を達成した時、誕生日やなにかの記念の配信などに投げたいと感じます。
(26歳、女性)
もっと活躍してほしいという推しへの投資。また自分も一緒にコンテンツを作っている気になれる。
(31歳、男性)
このように投げ銭を行うことで配信を盛り上げたり、配信者が目指すものに一緒に参加している気持ちになれるということが「応援」という言葉で表現されているようだ。
一方で、重課金者では「ライバーからのリアクションがほしい」(27.8%)が同率1位となり、全体と比較すると3倍近い割合となった。
好きな配信者に自分のコメントが読まれることが嬉しいです。特にリアルタイムである点がドキドキします。
(22歳、女性)
自分が一番のファンでいたい。
(27歳、女性)
などこちらは応援とは異なる、配信者からのリアクションという「見返り」を期待しての投げ銭と言えそうだ。
ただいずれのリスナー心理も、
推し活できた!という自己満足でしばらく幸せです。
(36歳、女性)
という回答が典型的なように、投げ銭ユーザーはあくまで「自己満足」ととらえていることが印象的だった。
男性は配信者につき、女性は番組につく
またこの投げ銭心理を男女別で比較してみた結果が下図だ。
男女で差が出たのは、「応援」と「ギフト」の項目だ。
女性は「活動や配信コンテンツへの応援」(53.2%)が過半数で最多となったのに対し、男性は「ライバー本人へのギフト」(32.6%)が「応援」と並んで1位となった。
男性の投げ銭行為は配信者その人への応援であるのに対し、女性のそれは活動に対する応援ということができるかもしれない。
重課金者は「投げ銭」のデメリットを感じている
一方で、投げ銭のネガティブな側面についても回答者に聞いてみた。
結果、全体では「デメリットを感じたことがない」(36.2%)が最多となった。
配信者に対する投げ銭の満足度は高いと言えそうだ。
一方で、これが重課金リスナーになるとデメリットが生じてくる。
「ついやりすぎて、お金が不足する」(61.1%)と、重課金ユーザーの過半数が金銭面でのデメリットを感じているようだ。
また「ほかユーザーとの課金競争になる」(27.8%)というデメリットを感じている重課金ユーザーも次に続き、自身が許容できる金額を超えた投げ銭をおこなっている実態がうかがえる。
では、次章では投げ銭の具体的な「金額」面についてみていくことにしよう。
配信1回あたりの投げ銭平均額は「1,007円」
まずは投げ銭をおこなうリスナーが1回の配信あたりに投げる金額の平均を聞いた。
その結果、1回の配信あたりの平均の投げ銭額は「1,007円」となった。
しかしながら分布を見ると、1,000円未満の層が67.7%となり、3,000円以上の投げ銭をおこなう9.5%が平均値を引き上げていることがうかがえる。
また仮にリスナー全体の5%が投げ銭をおこなうと仮定すると、200人規模のリスナーを集める配信者なら1万円/回、10,000人規模のリスナーがいる配信者なら50万円/回の収益がもたらされることになる。
億越えプレーヤーが出現するのも納得である。
配信1回あたりの投げ銭最高額の平均は「13,510円」
では次に、これまでに投げ銭額で、もっとも高額だった金額を聞いた。
その結果、最高投げ銭額の平均は「13,510円」となった。
こちらも平均投げ銭額の結果と同じく、分布を見ると二分されている。
つまり2,000円未満(58.1%)が収益の基盤となりつつ、10,000円以上の重課金リスナー(17.1%)が平均値を引き上げるという傾向だ。
また、本調査における配信1回あたりの最高投げ銭額は「80万円」だった。
そのとき配信で一体なにが起こっていたのだ?と考え込んでしまうような結果だが、これはまぎれもない事実である。
リスナーをそこまで熱狂させてしまう配信者もすごいが、ここで気になるのは一体どういった配信者がリスナーからの熱い支持を受けられるのか?である。
そこで次章では、配信者のタイプ別の収益について見ていくことにしょう。
人気配信者のタイプで優劣はないが、熱狂させるのは「マイナー配信者」
投げ銭を得られるやすい/得られにくいタイプがあるのか?を調査するために、回答者に投げ銭をしたことがある配信者のタイプについて聞いた。
まず全体で投げ銭をしたことがある配信者の割合がもっとも高かったのは、「女性のアイドル的なライバー」(24.8%)だった。
しかしながら「マイナーなライバー」(23.8%)、「芸能人・著名人」(21.0%)、「男性のアイドル的なライバー」(20.0%)もかなり僅差であり、配信者のタイプの違いによる有意差は見られなかった。
つまり配信者のタイプで、投げ銭の得やすい/得にくいはないようだ。
また冒頭で紹介したYoutubeの投げ銭である「スパチャランキング」ではVtuberが上位を独占していたが、今回のアンケートでは全体的に低い割合となった。
一方で、収益性の高い配信者のタイプには明らかな違いが見られた。
1配信あたりでもっとも平均投げ銭額が高かったのは「マイナーなライバー」の1,465円で、まさに投げ銭の心理である「応援」がピッタリ当てはまる結果となった。
次いで、「専門家やエキスパート」が1,342円、「アーティスト」が1,207円と続いた。
この2タイプの収益性の高さは、投げ銭は大道芸人のその芸に対する賛美という旧来の投げ銭の感覚に近いものがありそうだ。
またここでも「Vtuber」は低い数字となり、596円の平均額となった。
このVtuberの収益面でのパフォーマンスの低さの原因として考えられるのは、今回のアンケートは「18歳以上」という年齢制限があった。
結果を俯瞰すると、Vtuberのファンのボリュームゾーンは18歳より下の中高生という可能性が考えられそうだ。
【まとめ】投げ銭心理は思っている以上に純真
今回の調査結果をまとめると、投げ銭するリスナー心理は思っている以上に純真である、ということだ。
というのも、回答者の大半が「応援」と「リアクションの期待」のどちらかに二分される。
「リアクションの期待」も一種の見返りを求める心理ではあるが、
・コメントを読んでもらえる
・名前を呼んでもらえる
・推しが喜ぶ顔が見られる
など、見返りとして期待しているものは軽いものばかりだ。
今回の調査で、
ライバーの印象に残ってほしい。特別に思ってもらいたい。あわよくば個人的な連絡がとれる関係になりたい。
(31歳、女性)
という、配信者にとっては「重い」見返りを求めて投げ銭していたのは105名中1名しかいなかった。
裏を返せば、投げ銭で一定以上の収益を配信者はこうした純真な支持によって支えられているということもできる。
しばしば配信者に炎上事件が起こるのも、こうしたファンたちの純真さゆえの原因もありそうだ。
――自身のファンに、誠実であり続けること。
これこそ投げ銭ユーザーたちが配信者に期待する最大の「見返り」なのかもしれない。
アンケート実施法
アンケート実施法
・アンケート方法 インターネット上でアンケートを実施
・回答者数 105名
・調査日 2021年1月21日~2021年1月26日
・設問は選択式および自由記入
・調査主体 【300人のホンネ】編集部
・回答者性別 男性41.0%、女性59.0%
・回答者平均年齢 32.8歳
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