50代になり、それまでの友だちが離れていくような感覚を覚えたことはないだろうか?
実をいうと50代になって友だちが離れていくのはあなただけではなく、むしろ50代男女の多数派ともいえる。
しかしながら友だちが離れていくことが、「本当に悪いことなのか?」はかなり疑問である。
本稿では、全国の50代男女196名に対しアンケート調査をおこない、50代男女の友人観に関するホンネを探ることにした。
その調査結果をいきなり言ってしまうと、次のような結論となる。
▼本調査の結論
・約6割の50代男女が友だちが離れていくと感じている
・50代男女の平均的な友だち付き合いは「限られた友人と、ごくたまに」
・それでも7割の50代男女は孤独を感じていない
・50代男女の友人観は、量よりも圧倒的に質重視
本稿を最後まで読めば、あなたが感じている友だちが離れていくという感覚の正体をつかむことができる。
それでは50代の友だちに対するホンネをじっくり見ていくことにしよう。
友だちが離れていくと感じている50代は64.8%
まずは50代になって友だちが離れていっていると感じている人は、どのくらいの割合になるのかを調べてみた。
結果は下図で、男性69.3%、女性61.1%の割合で少なからず友だちが離れていっていると感じていることがわかった。
また友だちが減った感覚が「かなりある」と回答した割合に注目してみると、特に男性の割合が高く、実に4割もの50代男性が友だちが減ったと強く感じていることになる。
総じて50代男女の半数以上は、友だちが減っていると感じていることが確認できる。
50代の友だち付き合いの実態調査
そこで気になるのが、50代の男女は一体どのような友だち付き合いをしているのか?という点である。
この点について、掘り下げて見ていくことにしよう。
頻繁に連絡を取りあう友だちはゼロが4割
最初に「月に数回程度の連絡を取りあう友人の数」を聞いたところ、43.9%の50代男女が「いない」と回答した。
さらにここに連絡を取りあう人数が「1~2人」の割合を足すと、連絡を取りあう友人の数が2人以下の50代男女が81.6%も占めることになる。
固定電話か郵便しか連絡手段がなかったかつてに比べ、インターネットやLINEなどのSNSの普及で格段に旧友とのコミュニケーションを取りやすくなった。
しかしながらコミュニケーションの取りやすい環境は整っても、50代においては友だちとの連絡頻度はいっこうに盛り上がっていないことがわかる。
友だちと出かける頻度は年に1回以下が半数
次に実際に友だちと遊びや食事に出かける頻度はどのくらいあるのか?について聞いた。
結果は47.1%が「年に1回以下」と回答しており、50代男女の半数はほとんどと言っていいほど友だちと出かけることがないことがわかった。
逆に「月に1回以上」は友人と出かけるという50代男女は23.5%おり、友だち付き合いが活況な50代男女の割合は4人に1人程度ということになる。
先ほどの連絡頻度とも合わせて考えると、50代男女の友だち付き合いは「かなり限られた友人と、ごくたまに友だち付き合いをする」というスタイルが平均的と考えられる。
確かにここまでは昨今メディアに取り上げられているような「孤独な中年」のような実態が見られる。
ただし、である。
孤独というのは、あくまで相対的なものだ。
友だち付き合いにあてる時間が豊富な10代や20代の頃を基準にすると、家庭も仕事も高齢化した親の面倒もある50代の友だち付き合いが鈍るのは、当たり前ともいえる。
その事実だけをもって「50代は孤独だ」と決めつけてしまうのは、いささか早計にも思える。
またそもそも「50代男女である当人たちは、自分のことを孤独だと感じているのか?」という問題も見落とせない。
というのも友だちが少なくても孤独を感じない人はいるし、友だちが多くてもずっと孤独を抱えているという人もいるのだ。
そこで次章では、当の50代男女の回答者たちは友だちとの関係性に孤独を感じているのか?という点を見ていきたい。
友人関係に関して孤独を感じていない50代が7割
結論からいえば、友人関係に関して孤独を感じていない50代男女ともに約7割を占めた。
特に女性にいたっては、「あまり孤独を感じない」(45.4%)と「まったく孤独を感じていない」の合わせて78.5%が孤独とは到底いえない心境にあることがわかる。
また同時に、友人関係に関して強い孤独を感じている人は、男性8.0%、女性6.5%とかなり少数派だった。
これまで見てきたとおり、50代男女の平均的な友だち付き合いはごく少数の友人と、ごくたまに付き合うといったものだった。
にも関わらず、孤独を感じていない割合が圧倒的に多いのはどういうことなのか?
この点をもう少し掘り下げてみることにしたい。
50代は友だち付き合いの重要度が低い
結論を言ってしまえば、50代男女にとって友だちと付き合うことの重要度はかなり低い。
言い方は悪いが、端的に言ってしまうと「友だち」という存在自体が割とどうでもいい存在になっているのである。
そのため友だちが少なかろうと、付き合いがあまりなかろうと、孤独は感じないということになる。
下図は「20代の頃の友だち付き合いの重要度を100としたとき、50代になったいまの重要度はどのくらいか?」を数値で記入してもらった結果だ。
友だちの重要度が半分(0~60)近くにまで落ちている男女が76.0%にも昇る。
一方で、20代のころよりも友だち付き合いの重要度が上がると考えている人は、わずか9.2%に止まった。
なぜここまで友だちという存在の重要度が、50代になると落ちてしまうのか?
ここでいくつかの回答者の声を紹介したい。
まず多かった声として、やはり家族の重要度のほうが上だからという声が目立った。
「家族との時間の方が大事だから」(53歳女性、重要度50を記入)
「会えれば嬉しいけどそれぞれ家庭が忙しいので、あまり時間を取れないし、取ったとしてもやや負担に感じるので重要度は低いです」(52歳女性、重要度20を記入)
特に女性は、家族のための家事労働で時間を取られてしまうことが多く、なかなか気軽に友だちと誘い合って外出するというのも難しいようだ。
これは友だちである相手女性も同じで、「この日は私がダメ。その日はあなたがダメ」とやっているとスケジュールを合わせること自体、億劫になるのも頷ける。
次に目立ったものは、自分の趣味嗜好や価値観を曲げてまで友だち付き合いをする必要性を感じないというものだ。
「年齢を重ねたからこそ、人は重ねたものの違いが出てより多様になる。だから若い時のように無理に誰かに歩調を合わせる必要はないし、いつも友人を必要とはしなくなる」(58歳男性、重要度10を記入)
「年齢が上がるにつれて考えかたや価値観に違いが出て、話が合わなくなった気がします」(55歳女性、重要度10を記入)
確かに趣味の領域でも20代の頃は、「やったことがないことだし、一緒にやってみるか!」という未知な物事に溢れていた。
ただ年齢を重ねるごとにまったくの未知というもの自体が少なくなっていくし、また「この手のものは自分に合う/合わない」の目利きもできるようになってくる。
もちろん実際にやってみたら違う感想になるのかもしれないが、いまの趣味でも十分楽しめているので、わざわざ趣味を増やす必要性も感じない。
そして連れとなる相手も同じように考えているのだから、ますます友だちと一緒にやることや共有できるものがなくなっていく。
これがいいことなのか悪いことなのかはなんとも言えないが、行動を共にする必要性を感じていないものを無理に共にしてもお互いストレスになるのは間違いない。
「中高年は孤独だから、もっと積極的に友だち付き合いができる環境を整えるべきだ」と声高に叫んだところで、当人たちがそれを望んでいないし、そもそも孤独だと感じていること自体がない、という現実がある。
「中高年は孤独」という論調には、10代や20代的な価値観の押しつけを感じざるを得ない。
ところで1割にも満たない少数派ではあるが、20代の頃よりも友だちの重要性は上がると考えている人たちはどのような考えなのだろうか?
異なる意見にも耳を傾けておこう。
「歳をとってからの友達は頻繁にあったり連絡する事はなくても、いつでも同じ感覚で付き合える心から気心知れた人だけが残っています。そういう意味でも今の友達はとても大切な存在だと思います」(53歳女性、重要度200を記入)
「昔のように無理して付き合わず、本当に居心地のいい友人としか付き合っていないから」(56歳女性、重要度150を記入)
このように「現在まで残っている友だちは、選りすぐりの友だちだから大事にしたい」という意見だった。
仮にそれが学生時代からの友だちとなると、50代では30年来ほどの付き合いとなる。
親子よりも関係が長くなるケースも少なくなく、だからこそ大事にしたいという考え方のようだ。
今後の友だち付き合いは「現状維持」が最多
現状は限られた友だちと、ごくたまにの付き合いしかないかもしれないが、今後は子育てを終え、仕事も定年退職するとなると、自分の時間が持てるようになるはずだ。
そこで最後に、50代男女は今後友だち付き合いをどうしていくつもりなのか?を聞いた。
結果は、男性の7割、女性の6割は「いまのままでいい」と考えていることがわかった。
前章で50代男女の7割が友だち付き合いの重要度は低いと見ていたことからも、ある意味当然といえる結果なのかもしれない。
今後も気心が知れた限られた友人とほどよい距離感で付き合っていきたいというのが、50代男女のマジョリティの考え方だった。
一方で、友だち付き合いを「広げていきたい」と拡張路線で考えている人は、男女ともに2割程度。
その逆にさらに友だち付き合いを「縮小したい」と考える人は、男女ともに1割程度の割合となった。
以下では、それぞれの考え方の声を具体的に紹介していくことにしたい。
現状維持派の意見
まず友だち付き合いは現状のままでよいと考える人たちの意見から紹介していこう。
主だった声としては、このようなものが多かった。
「友だちというのはその時々で自分の状況に合った人との出会いがやってくるもので、状況が変われば過ぎ去るのも当たり前だと思っているから」(52歳女性、現状維持派)
「あまり友達づきあいに振り回されたくないなという気持ちもあります。旅行に誘われたり、飲み会など、あまり自分が行きたくないような事も昔はあったため」(58歳女性、現状維持派)
「新規開拓するより気の合う仲間と一緒にいる方が楽だし、心地よいため」(51歳男性、現状維持派)
これまでも見てきたように、いまの友だちとの関係性に孤独を感じている人は少なく、友だちの量よりも質を重視したい、という向きだ。
実際のところ、友だち付き合いはいい面もあるが、デメリットもある。
たとえば頻繁に付き合いでお酒の場に出ていた人が、それを控えるようにすれば、お金の面でも体の面でも、家族との関係性でも健康的になるのは間違いない。
友だちというと、無条件でいいものとして扱われることが多いが、現実はそうでもない。
現状維持派の主だった意見は、こうした友だちの質面を重視する声だった。
拡張路線の意見
次に2割前後とあまり多くはないが、今後友だち付き合いを拡張していくという拡張路線派の意見を見てみよう。
「退職するとより人とのつながりが減るから」(53歳男性、拡張路線派)
「外出の機会や会話や交流の機会を今より多く持ち生活に潤いをもたらしたいからです」(57歳女性、拡張路線派)
このように定年による退職や、子どもの自立によってできた時間を友だちと有意義に過ごしたいとする声が多かった。
これまで自分の時間がほとんどなかった人が、急に自由な時間を与えられても持て余してしまうおそれすらある。
そうした空白は、友だちが埋めてくれるという期待感も感じられる意見だった。
縮小路線の意見
最後に全体の1割程度の少数派ではあるが、友だち付き合いを縮小して行くという人たちの声も紹介しておこう。
「たとえ可能性は低くとも今後誠実な人物と親しくなれるのであれば拒むつもりはありませんが、利用されたり翻弄されるような無益な人間関係は整理したいです」(54歳男性、縮小路線派)
「十数年ぶりに久々に会うと友達も環境が変わっていて、仲良かったハズなのにマウントとってくる人がいたり、友達関係に変化はあるので、心から気を許す事ができる人だけで今後はいいと感じています。人の断捨離です」(55歳女性、縮小路線派)
特に学生時代にできた友だちは、ずっとあの頃のままでいてほしいものだが、実際はそういうわけにもいかないのが現実だ。
結婚相手や就職先の環境など、その後に影響を受けた人やモノで人は変わってしまう。
縮小路線派は現状維持派と同様に、量より質をさらに重要視する意向であることがわかる。
まとめ
以上が、今回の調査報告だ。
最後に本調査の結論をおさらいしておこう。
▼本調査の結論
・約6割の50代男女が友だちが離れていくと感じている
・50代男女の平均的な友だち付き合いは「限られた友人と、ごくたまに」
・それでも7割の50代男女は孤独を感じていない
・50代男女の友人観は、量よりも圧倒的に質重視
学校生活を送っているときは、友人関係は幅広いほうがなにかにつけて有利だ。
ただそれは10代や20代までの感性でしかなく、50代男女の生活状況においてはまったくと言っていいほど当てはまらない。
少なくとも今回の調査で見えたことは、50代で友だちが離れていくのは客観的な事実だが、それを自然なことと受け入れている人が多数派だった。
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