あなたはいま「ロードバイクを買うべきか?クロスバイクを買うべきか?」で、今日も決着がつかず、寝つきが悪くなるほど、悩み散らかしているかもしれない。
その気持ちは、痛いほどよくわかる。
実をいうと、筆者もスポーツ自転車を初めて購入するときに、この「ロードバイクか?クロスバイクか?」という判断に大いに悩み散らかした一人だ。
そしてさんざん悩んだ挙句、筆者が下した決断は最悪の判断となってしまった。
つまり後日ロードバイクもクロスバイクも両方購入するという、ダブルコストを支払う羽目になったのである。
さらに言うと、筆者と同様の「嬉しくない二台持ち」に陥ってしまった人は、なんと3人に1人もいる。
本稿ではそうした筆者の失敗経験だけでなく、スポーツ自転車を愛用している全国の男女69人の調査結果も交えつつ、後悔しない選択の考え方を示したいと思う。
【結論】ロードバイクかクロスバイクかという二択をやめよう
早速だが、筆者自身の失敗経験とロードバイク・クロスバイク愛好家たちの声に基づき、本稿が導き出した結論は下記だ。
▼本調査の結論
・現時点でサイクリングすることが視野に入っているならロードバイク一択
・クロスバイクと本当に比較すべきは電動アシスト自転車
・通勤、街乗りなら電動アシスト自転車のほうがメリット多い
・「どうしてもスポーツ自転車!」ならクロスバイク
つまり判断のステップとしては、こうだ。
(1)現時点でスポーツバイクでサイクリングをすることを考えている人
ロードバイクを購入するべきで、クロスバイクは購入するべきではない。
(2)現時点でサイクリングをすることを考えていない人
ロードバイクを買っても無用の長物になるだけなので、クロスバイクか電動アシスト自転車で検討しよう。
(3)通勤や街乗りでの実用性・機能性なら、電動アシスト付き自転車
自転車界で、実用性や機能性の面で電動アシスト付き自転車の右に出るものはないので、電動アシスト付き自転車がおすすめ。
(4)電動アシスト付き自転車がどうしてもイヤ
クロスバイクでOK!
この「ロードバイクか?クロスバイクか?」問題には、スポーツ自転車のプロたちもWeb記事やYoutube等で発言している。
もちろんそうしたプロたちの声も参考にはなるのだが、プロと我々アマチュアはどうしても相容れない部分がある。
というのもスポーツ自転車のプロはロードバイクが三度の飯よりも大好きな人たちだが、我々アマチュアはそうではない。
ましてこれからスポーツ自転車を購入する方は、まだ好きになれるかどうかもわからない人も多くいるわけで、そもそもの見ている景色が違うのだ。
初心者だからクロスバイクという選択は後悔のもと
ところで「ロードバイクか?クロスバイクか?」を経験者に相談すると、「スポーツ自転車の初心者なら、まずはクロスバイクで慣れておくのがおすすめ」という意見が聞けるかもしれない。
実際今回調査した回答者の中にも、このような声は見られたし、なんとなくそんな風に考えている読者もいるかもしれない。
「まずはクロスバイクで慣れて、さらに踏むこみたい人はロードバイクに移行したほうが無難だと思うから」(64歳男性、クロスバイクのみを所有)
一見穏健で無難な意見に聞こえるが、筆者はこの選択はもっともとるべきではない選択と考えている。
なぜならこの選択は、およそ半分の確率で後悔することになるからだ。
なによりこの選択は、かつての筆者がとった判断でもある。
下図は、クロスバイクのみを所有している回答者に「ロードバイクもほしいか?」を聞いた結果だ。
「かなりそう思う」(8.3%)、「ややそう思う」(36.1%)の合わせて44.4%のクロスバイク所有者が、ロードバイクを少なからず求めていることがわかる。
さらに「初心者はクロスバイクから」という選択がよくないという根拠は、これだけではない。
クロスバイクだけでなく、ロードバイクも実際に所有している「二刀流」が、なんと3割も存在するのである。
筆者もこの嬉しくない二刀流にガッツリはまりこんだクチで、クロスバイクから入って半年後にロードバイクを買い直した。
クロスバイクをもつとロードバイクへの憧れが一層強まり、クロスバイクであることへのコンプレックスのようなものまで持つようになったからだ。
ちなみに最初に購入したクロスバイクが現在どうなっているのかというと、自転車置き場に放置状態になっており、奥さんから折に触れて「売るなり捨てるなり、早く処分しなさいよ」とつつかれている。
ではなぜクロスバイクを所有している半数がロードバイクもほしくなり、3人に1人の割合で嬉しくない二刀流に陥ってしまうのだろうか?
次章では、この原因について掘り下げていく。
ロードバイクとクロスバイクはまったくの別物
結論からいえば、ロードバイクとクロスバイクはまったくの別物だからだ。
言い方を変えれば、クロスバイクの延長上にロードバイクはない。
クロスバイクはロードバイクの廉価版ではないし、ロードバイクはクロスバイクの上位互換でもない。
それは実際のユーザーの使用状況に目を向ければハッキリする。
クロスバイクユーザーの使用シーンは街乗りがメイン
まずはクロスバイクユーザーの使用シーンから確認していくことにしよう。
もっとも多かったクロスバイクの使用シーンは、「街乗り」(48.5%)だった。
街乗りとは、ちょっとした買い物や外食のために自転車を使うことで、一般的なシティサイクル(ママチャリなど)に乗る目的と同じだ。
次いで多かったのは「通勤」(24.2%)があり、2~3駅くらいの距離なら電車を使うよりも、クロスバイクで勤務先まで走ったほうが早いということも十分ありうる。
また同じくらいの割合で、「50km前後のサイクリング」の27.3%があり、これはイメージとしては、休日等に運動がてらお隣の都道府県にまで足を伸ばした距離といえる。
一方で100km以上のロングライドや、レースにクロスバイクを使用する人は、今回の調査では0.0%だった。
総じて、クロスバイクをより速く走れるシティサイクルであったり、シティサイクルの上位版といった風に使用している人が多いことがわかる。
あえて言うならば、クロスバイクはなんらかの目的を果たすための「移動手段」として使われることが大半ということだ。
ロードバイクの使用シーンは自転車そのものを楽しむこと
一方で、ロードバイクユーザーの使用シーンを見ると、まったく違う結果となった。
もっとも多かったロードバイクの使用シーンは50km前後の「サイクリング」(43.8%)で、100km以上の「ロングライド」(21.9%)が続いた。
また少数ではあるが「レース」(3.1%)に参加しているガチ勢の姿も見られる。
これらの使用シーンは、移動手段としての自転車に乗るというよりかは、ロードバイクに乗ることそのものが目的となっていると言える。
もちろん「街乗り」(21.9%)や「通勤」(9.4%)といった使用シーンも、多くはないがある。
ただロードバイクは通勤ならまだしも、街乗りにはまったく向いていないことは強調しておきたい。
というのも、ロードバイクには買い物した荷物を入れるカゴはついていないし、なんなら自転車を立て掛けるスタンドすらついていない。
また盗難されたときのダメージは平均して20万円(※今回の回答者の平均購入金額)ほどになるが、車体重量は7~8kg程度(生後1年くらいの赤ちゃんくらい)で、成人男性なら難なく片手で担いでいける重さしかない。
もちろんバックパックを背負ったり、駐輪場所を選んだりと、工夫をすれば街乗りができないわけではないが、最初から素直にママチャリにまたがったほうが圧倒的に楽なことは明白だ。
あくまでロードバイクの使用シーンは、「ロードバイクに乗ること」自体を目的とした使用シーンがメインになるということだ。
裏を返せば、ロードバイクには走ること以外の実用性はないと言ってしまってもいいだろう。
さてここまでで、ロードバイクとクロスバイクの決定的な違いが明らかになったのではないだろうか。
つまりユーザーの使用状況の違いでいうと、ロードバイクとクロスバイクはこのように異なる。
・クロスバイク→軽いサイクリングもこなせるシティサイクルの上位版
・ロードバイク→走ることだけに特化した自転車
本章の最初に、「クロスバイクの延長上にロードバイクはない」と言ったが、この両者が似て非なるものであることはイメージできたのではないだろうか?
実際に悩むべき争点は、
・ロードバイクか、それ以外か?
・クロスバイクか、電動アシスト付き自転車か?
の選択しかないのだ。
ロードバイクとクロスバイクのメリット・デメリットを比較
ではより明確にクロスバイクとロードバイクの違いを比較するために、ユーザーの使用シーン以外のメリット・デメリットにも目を向けてみることにしよう。
結論からいえば、ロードバイクとクロスバイクのメリット・デメリットはこのような比較になる。
▼ロードバイクのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・速く、遠くに行ける ・趣味として没頭できる | ・購入費用が高すぎる ・慣れるのにトレーニングは必須 ・メンテの手間がかかる |
▼クロスバイクのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・使えるシーンが多い ・タフにできている | ・すべてが中途半端 |
先ほども述べたとおり、ロードバイクとクロスバイクを比較するのは、普通車とレーシングカーを比較しているようなものなので、かみ合わないところはあるが、ご容赦いただきたい。
ロードバイクのメリット
まずはロードバイクのメリットについて見ていこう。
ロードバイクのメリットとしては、このような点が挙げられる。
以下、詳細を掘り下げて見ていく。
ロードバイクは速く、遠くに行ける
繰り返すがロードバイクは、「速く遠くまで走る」ことに特化した自転車だ。
では、具体的にどのくらい速く、そして遠くに行けるのだろうか?
あくまで筆者の場合だが、向かい風のない日に平坦な道で普通にペダルを漕いでいるときの速度の違いは下表だ。
ロードバイク | クロスバイク |
---|---|
25~30km/h | 18~23km/h |
ロードバイクの中級者にもなると、これが30~35km/hくらいまで上がる。
「なんだ、たった時速5kmほどしか違わないのか」と思うかもしれないが、時速5kmの違いは歩いている人とジョギングしている人のスピードの差と同じだ。
ちなみにロードバイクで頑張ってペダルを回すと、瞬間的になら40km/hくらいまでは誰でも出せる。
もっと体感に即していうと、サイクリングロードをクロスバイクで走っていると、ロードバイクにどんどん追い抜かされることになる。
「走っていると、ロードバイクを乗っている人に抜かされることがよくある」(29歳男性、クロスバイクのみ所有)
筆者もクロスバイクに乗っているときに、それが悔しくて全力でペダルを漕いでロードバイクをなんとか追い抜かしたことがある。
しかし瞬間的にロードバイクを捕らえられても、しばらくすると猛然と抜き返される。
しかも体力ではどう見ても勝てていそうな年配のサイクリストでも、ロードバイクはクロスバイクを簡単に追い抜かしていくのである。
また「遠くへ」に関しては、先ほどの使用シーンでも見た通り、ロードバイクなら100km以上のロングライドをこなす人もザラにいる。
実際に筆者の近くだと「ビワイチ」といって、滋賀県の琵琶湖を1周するサイクルコースがあるのだが、総距離は北湖ルートで150kmほどだ。
日帰りでの完走者も、ごくごく身近に見つけることができる。
ちなみにクロスバイクでも、ロングライドができないわけではない。
実際に筆者も、クロスバイクで70kmほど走ったことがあるし、そのときの感覚では100kmも頑張ればいけそうではあった。
ただし「遠くまで走れる=楽に走れる」という観点では、クロスバイクとロードバイクではどうしても差が出る。
その主な要因は2つあり、「乗車姿勢」と「ギア比」だ。
まず乗車姿勢はロードバイクのほうが前傾する角度がきつく、いわば前のめりな姿勢で乗車する。
こうすることで体で風を受ける面積を減らすことができ、漕がずとも自転車が転がる距離が伸びる。
一方で、クロスバイクはやや前傾にはなるものの、T字ハンドルのシティサイクルとあまり変わらない程度の前傾なので、ロードバイクに比べ風の抵抗を受けやすくなる。
「風くらいで、なにを大げさな」と思うかもしれない。
だが強風の中ママチャリを漕いで全然進まない経験をした人も多いと思うが、自転車にとって風の影響度はかなり大きい。
風のものすごく穏やかな日でも、時速30kmを超えてくると激しい風の抵抗を感じるようになる。
まして瞬間的にはちょっとした差かもしれないが、それが何時間、何十kmも重なってくると取り返せないほどの大きな差になるというわけだ。
次のギア比は、詳細な説明は割愛するが、ようは「何段階ギアが変えられるか?」という違いだ。
▼筆者所有のロードバイクとクロスバイクのギア比の比較
ロードバイク | クロスバイク |
---|---|
22変速 | 16変速 |
なぜ細かくギアを変えられたほうが楽に走れるかというと、軽すぎず重すぎず「ちょうどいいペダルの重さ」に合わせることができるからだ。
重すぎるペダルは脚に疲労を蓄積してしまうし、軽すぎると速度を一定に保つにはよりペダルの回転数をあげる必要があり、これはこれで疲れる。
こうした微調整がよりしやすいのがロードバイクであり、楽に走れる分、結果として走行距離も伸ばせるというわけだ。
趣味として没頭できる
次のロードバイクのメリットは、趣味として没頭できるという点だ。
ロードバイクユーザーの大半が「ロードバイクに乗ること」自体が自己目的化していることは前章で触れたが、これは実際に乗ったことがない方にはあまりピンとこないかもしれない。
「自転車に乗ってるのが楽しいの?」と聞かれたら、その通りなのだ。
「それの何が楽しいの?」と聞かれたら、なんとも言葉に窮してしまう。
だが現時点では信じられないかもしれないが、あなたもロードバイクを手にすれば、毎週末の天気をチェックするようになり、次に攻める目的地へのルートを調べ上げ、計画立てるようになるのだ。
またロードバイクは、デメリットの章でも触れるが、いい意味でも悪い意味でも手がかかる。
当初は筆者も「面倒そうだから、メンテはサイクルショップに丸投げしよう」と考えていた。
だがパンク修理やタイヤ交換くらいならさして難しくないので、いつしか筆者も自分でやるようになってしまった。
まして昨今はYoutubeなどでロードバイクの解説動画が充実しており、わざわざサイクルショップに行って聞かずとも、ちょっとしたメンテなら誰でも自宅でできるようになっている。
その結果、自身のロードバイクにより愛着がわき、走っていると「人馬一体」としか言えないような心境を味わえる。
またロードバイクをバラしたり組み立てたりできるようになると、「輪行」(ロードバイクを電車内に持ち込み、より遠方へ行くこと)など、できることが広がっていく。
ちなみに筆者は車の運転が好きではなく、できれば助手席か後部座席に乗っていたいと願う人間である。
なにも走り屋気質ではなくとも、ロードバイクにハマれることは強調しておきたい。
ロードバイクのデメリット
次にロードバイクの悪い面、デメリットについても触れておこう。
ロードバイクのデメリットは。下記である。
以下、詳細を見ていくことにしよう。
購入費用が高すぎる
まずロードバイクの最大のデメリットと言えるのが、購入価格の異常な高さである。
これは「ロードバイクか?クロスバイクか?」で悩んでいる方が、もっとも引っかかっているところでもあるだろう。
2023年時点だと、物価高や円安の影響もあり、初心者向けのエントリーモデルですら10万円を超えてきている。
まして本格的なモデルになると20~30万円台はザラで、さらに上を見ると100万円を超すものもまったく珍しくない。
実際に今回アンケート調査したロードバイクとクロスバイクの所有者に、購入価格を聞いた結果が下図だ。
全体をパっと見たときに、クロスバイクユーザーの購入価格帯とロードバイクユーザーの購入価格帯がほとんど重なっていないことがわかるが、実際にロードバイクを10万円未満で購入した人はわずか9.1%のみだった。
裏を返せば、90.9%の人は10万円以上を購入費用としている。
また、クロスバイク所有者の平均購入価格は59,779円だったのに対し、ロードバイク所有者の平均購入価格はその4倍近い224,545円だった。
もちろん今回の回答者は初心者ばかりではなく、平均すると6.2年のロードバイク歴がある人たちだった。
そのため本格的なモデルを購入している割合が高い。
ちなみに回答者の中で最高の購入金額だったのは、1,100,000円でCOLNAGO社C60を購入した回答者だった。
(画像引用元:COLNAGO公式サイト)
このようにまるで入門者を拒絶するかのような価格設定で、世の大半の人にとって「ちょっと試しにやってみるか」で入門できるような価格でないことは確かだ。
実際筆者も、ロードバイクの購入価格に関しては大いに悩んだ。
ただし購入価格は中古のロードバイクを選択肢に含めれば、まだ手の出せる範囲にまで下がってくる。
このことについて、のちの章で詳しく見ることにする。
またロードバイクは本体だけを購入しても、公道に出ることはできない。
シティサイクルには当たり前のように付属しているものが、ロードバイクには一切付属していないからだ。
ロードバイクを購入したときに、最低でも必要になるものをリストアップしてみた。
▼追加で購入が必要な最低限のものと目安金額
ヘルメット | 4,000円~ |
チェーンロック | 2,000円~ |
ライト | 3,000円~ |
反射板orリアライト | 1,500円~ |
ペダル | 1,500円~ |
ベル | 1,000円~ |
空気入れ(仏式など専用のもの) | 2,500円~ |
ちなみにヘルメット・ライト(前のライト)・反射板orリアライト(後ろのライト)は道路交通法で、ベルは東京都や埼玉県等の条例で定められているものなので、つけないという選択肢はない。
またもちろんこれらのアイテムの中でも、ヘルメットなどは本格的なものは数万円のラインになったりする。
あくまで必要最低限の機能をもつものの価格だけでも、ざっと追加で15,000円ほどは生じてくる。
とはいえ、クロスバイクでも高騰化は進んでいるので、これはロードバイクに限ったデメリットとはいえない面もある。
慣れるのにトレーニングは必須
2つ目のデメリットは、ロードバイクに慣れるためのトレーニングが必要である点だ。
ロードバイクは、ドロップハンドルという特有のハンドルと、サドルを足がギリギリつく高さまで上げるため、かなり前傾した乗車姿勢になる。
「頭から下に突っ込む」ような乗車姿勢といえばピンときてもらえると思うが、実際にまたがってみると、最初は頭から落ちそうで怖く感じるかもしれない(実際に急ブレーキをかけると頭から落ちるので、ヘルメットは必須だ)。
これは同時に「クロスバイクの延長上に、ロードバイクはない」と言ったもう一つの根拠でもある。
つまりいかにクロスバイクに乗り慣れていようと、クロスバイクはストレートバーというT字型のハンドルで、乗車姿勢も比較的シティサイクルに近い感覚だ。
しかしロードバイクについているのはドロップハンドルであり、いかにクロスバイクに慣れていようと、ドロップハンドルへの慣れは必要になるということだ。
またロードバイクには、ビンディングペダルという、初心者にはメリットよりも恐ろしさしかないペダルをつけることが一般的だ。
ビンディングペダルというのは、ペダルに専用シューズ自体をはめこみ固定するタイプのペダルで、ロックを外さないとペダルから足を離すことができなくなる。
それゆえに「引き足」といって、ペダルを下方向に押す力だけでなく、足を引き上げる力もペダルに伝えることができるのだが、一方で「立ちゴケ」といってロックが外れずに倒れてしまうこともある。
もちろん毎週末に1か月も乗り続けていればなんてことなくなる程度の難易度だし、ビンディングペダルは最初から無理をしてつけなくとも、シティサイクルと同じペダル(フラットペダル)をロードバイクにつけることもできる。
購入していきなり交通量の多い公道デビューすると恐い目にあうリスクが上がるので、道幅の広いサイクリングロードなどでしっかりヘルメットを着用し、少なくとも1~2時間は練習をしてから公道に出ることをおすすめする。
メンテの手間がかかる
ロードバイクの最後のデメリットとして、メンテの手間がかかるという点がある。
具体的にどういうメンテが必要になるかというと、日常的におこなうメンテの主なものに空気入れとチェーンへの注油、洗浄である。
特に空気入れは、ロードバイクに乗るたびに毎回おこなう必要がある。
ロードバイクはシティサイクルと異なり、タイヤがカチカチに硬くなる(空気圧が高い状態)まで空気を入れる。
そうすることでタイヤと地面とが触れる面積が少なくなり、より転がりやすくなるからだ。
また空気圧が高い状態を保つことで、パンク予防にもなる。
おおむね50kmほど走り、次に乗ろうとすると、タイヤが推奨している空気圧の下限値を下回っているので、やはりロードバイクに乗る前の下準備で空気入れは必須と言える。
またシティサイクルでチェーンの洗浄などやったことがない人が大半だと思うが、チェーンの汚れや錆はロードバイクの性能を大きく落としてしまうのが実感できるので、1か月に1回くらいは注油とセットでやっておきたくなる。
とにかくこのように「出発前にやることが多い」のが、ロードバイクの難点である…。
それでは次にクロスバイクのメリット・デメリットにも目を向けていこう。
クロスバイクのメリット
クロスバイクのメリットは、下記だ。
使えるシーンが多い
これまでに何度も触れてきたが、クロスバイクはシティサイクルの上位版だ。
そのため街乗りや通勤でも使えるし、ちょっとしたサイクリングにも使える。
そのため走ることだけに特化したロードバイクにはない、汎用性の高さがある。
実際にクロスバイクとロードバイクの、それぞれの使用頻度を聞いたところ両者には明確な違いがあらわれた。
クロスバイクユーザーは、「ほぼ毎日」使用している人が34.0%にも登り、ロードバイクの9.1%と比べると4倍近い割合になる。
また「週に1回以上」使用している人の割合も、クロスバイクは85.1%を占めるが、ロードバイクは54.5%と半数ほどしかいない。
大半のロードバイクユーザーは、休日でかつ天候がいいときにしか乗れないので、使用頻度が週1回を下回る人がおよそ半数というのはうなずける結果だ。
「買ったものを壊れるまでしっかり使い倒す」という意味では、明確にクロスバイクに軍配が上がる。
ロードバイクに比べてタフにできている
ロードバイクのデメリットとしてメンテの煩雑さを挙げたが、もちろんクロスバイクも同様のメンテをするに越したことはない。
ただクロスバイクはロードバイクに比べて、太いタイヤを履いている。
ロードバイク | クロスバイク |
23mm | 32mm |
タイヤが太いということは、パンクもしにくくなる。
ロードバイクのように乗るたびにきっちり空気圧の調整をしたり、走行中にそこまで路面の段差を気にしなくても気兼ねなく走れる。
もちろんメンテをしたほうが本来のクロスバイクの走行性能を引き出せるので走っていて気持ちいいのだが、毎日の通勤や日常使いではそうも言っていられないこともある。
そうしたハードな使用状況に耐えられるタフさが、クロスバイクにはある。
クロスバイクのデメリット
次にクロスバイクのデメリット面にも目を向けておこう。
クロスバイクの最大のデメリットは、「何事においても中途半端」という一点に集約される。
メリットでクロスバイクの使い勝手のよさを見たが、その反面どの観点においても器用貧乏的な面があるのはどうしても否めない。
それはクロスバイクとロードバイクとの対比でもそうだが、クロスバイクと電動アシスト付き自転車と比べるとその中途半端さがより鮮明になる。
・スピード→ロードバイクに劣る
・乗り心地→電動アシスト付き自転車に劣る
・使い勝手→電動アシスト付き自転車に劣る
・価格→中途半端に高い
まずスピードに関しては先にも触れたが、サイクリングロードをクロスバイクで走っていると、あなたが豪脚でもない限り、ロードバイクに次から次へと抜かされる。
「なぜこんなに頑張ってペダルを回しているのに、いとも簡単にぶっチギられるのだ!?」という忸怩たる思いをすることになるので、その点は覚悟するしかない。
ちなみに電動アシスト自転車とのスピードは?というと、クロスバイクのほうがやや早い。
とはいえ、電動アシスト自転車もシティサイクルと比較すると速く、漕ぎだしからの加速や登りでは電動アシストが作動する分、クロスバイクより速くなる可能性もある。
また乗り心地に関していうと、クロスバイクについているサドルはシティサイクルのサドルではない。
軽量化されクッション性が低くなったサドルなので、当初は30分も乗っているとお尻が限界を迎えるだろう。
もちろんお尻の部分にクッションの入ったサイクルショーツ(レーパン)を履くことでお尻の痛みは対策できるのだが、ピチピチのサイクルショーツを履いて出社できるかは疑問だ。
また使い勝手に関しても、クロスバイクはスポーツ自転車なので、前カゴや後輪の泥よけがついていないものが多い。
カゴがないと不便なのは説明するまでもないが、雨の日や雨上がりなど路面が濡れていると、泥よけがついていないクロスバイクに乗ることは避けたほうがいい。
後輪が跳ね上げた泥が、背中にびっしりつくからだ。
もちろんクロスバイクに泥よけを後付けすることもできる。
だがせっかく不要なパーツを省いて軽量化しているところに、そのパーツを付け直してしまうことになり、「スポーツ自転車とは?」という問いに立ち返らずにはいられなくなってしまう。
その点、電動アシスト付き自転車は前後にしっかりと泥よけがついているので、路面の泥など気にする必要がない。
最後に価格の点においてもクロスバイクは中途半端さが目立つ。
かなりざっくりではあるが、いろいろなタイプの自転車の価格帯は下表になる。
シティサイクル | 1万円前後 |
クロスバイク | 5~10万円前後 |
電動アシスト付き自転車 | 10万円前後 |
ロードバイク | 10万円~ |
ロードバイクや電動付きアシスト自転車と比べると、クロスバイクは比較的安価だが、それでも決して安い買い物ではない。
もちろん有名メーカー以外のクロスバイクであれば、3万円程度まで価格は落ちるが、それはそれで注意点がある。
つまり、ルック車をつかんでしまうリスクのことだ。
ルック車というのは、見た目こそスポーツ自転車だが、性能はシティサイクルそのものというものだ。
搭載しているコンポーネントの目利きができればルック車をつかむことは避けられるが、これからスポーツ自転車を始めようかという人に、その目利きはなかなか難しいかもしれない。
あとの章で触れるが、スポーツ自転車の有名メーカーがいくつもあるので、そのメーカーの中から選択しておけばルック車をつかむようなことはない。
さてここまでロードバイクとクロスバイクの、メリット・デメリットをそれぞれ見てきた。
改めておさらいしておくと、こうだ。
▼ロードバイクのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・速く、遠くに行ける ・趣味として没頭できる | ・購入費用が高すぎる ・慣れるのにトレーニングは必須 ・メンテの手間がかかる |
▼クロスバイクのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・使えるシーンが多い ・タフにできている | ・すべてが中途半端 |
いまの時点で、サイクリングやロングライドを少しでもやってみたいと感じているなら、筆者は迷わずロードバイクを購入することをおすすめする。
最初はロードバイクの慣れない操作感に少し戸惑うかもしれないが、1時間も走っていれば要領がわかってくるはずだ。
ロードバイクで走っているときの爽快感や、自転車と人馬一体になったような感覚は無二のもので、こればかりはロードバイクでしか味わうことはできない。
そしてもしロードバイクを購入してハマらなかった場合、あなたは間違いなくクロスバイクにもハマらない人だ。
そのため「普通のシティサイクルにすればよかった…」という後悔はあるかもしれないが、「ロードじゃなくてクロスにしておけばよかった…」という後悔はないと断定できる。
一方で、もし現時点でサイクリングをするつもりがまったくないのであれば、ロードバイクは真っ先に選択肢から外れる。
サイクリングをしない人に、ロードバイクは無用の長物でしかないからだ。
そしてクロスバイクか、電動アシスト自転車の選択になる。
実用性や機能面では電動アシスト自転車に軍配が上がるだろうが、それでも「見た目がかっこいいからクロスバイクに乗りたい!」という選択はアリだ。
逆に見た目より実益という方はスポーツバイクである必要はなく、実用性において電動アシスト自転車の右に出るものはない。
実際筆者は、ロードバイクもクロスバイクも所有しつつ、妻が所有する電動アシスト自転車も借りて乗ることもある。
もっとも乗る機会が多いのは、実を言うと電動アシスト自転車だ。
それも群を抜いて、乗る機会が多い。
一度電動アシスト自転車の楽さを覚えたら、誰もその誘惑に抗うことなどできはしない…。
ロードバイクを安く購入するならヤフオク
ここまでで「やはりロードバイクにしよう!」と、意向が固まった方も少なくないと思う。
そこでぜひ覗いてみてほしいのが、ヤフオクに出品されている中古ロードバイクである。
「なんだ、中古か…」と思うかもしれないが、ちょっと待ってほしい。
デメリットの章でも触れたが、ロードバイクの最大の難点は購入価格が10万円を超すことだ。
もっと言うと、「ロードバイクは105(イチマルゴ)から」(最近ではTIAGRAから)という不文律のようなものまである。
これはロードバイク用のコンポ―ネント(ブレーキや変速機などの機構)の話で、Shimano社が発売しているコンポーネントのグレードのことを指す。
もちろんレースにでも出ない限り、エントリーモデルに搭載されているSORAやCLARISでもロードバイクの楽しさは存分に味わえる。
しかし、もし仮にこの105を積んだ新車を買おうとするなら、少なくとも20~30万円は見込んでおく必要がある。
より一層手の出しにくい金額になってしまうのだ。
また中古車を販売している、サイパラやバイチャリなどにも10万円未満のそれなりの中古ロードバイクが販売されている。
ただし、こうした中古サイクルショップのサイトは、そもそもの中古ロードバイクの販売数がさほど多くない。
ものすごく限られた選択肢の中から気に入ったものを探すことになるので、気に入ったものが販売されているかは運要素が大きくなる。
だがヤフオクだと、10万円未満でも105を搭載した有名メーカーのロードバイクが多数流通しているのが確認できる。
もちろんオークションなので、出品されているロードバイクは玉石混交状態にある。
そこでハズレを引かないための、手堅い見分け方を説明しておきたい。
▼ヤフオクでハズレを引かないコツ
・サイクルショップが「ストア」として出品しているものから選ぶ
・年式が古すぎるものは省く
・送料が高いので要チェック
・購入期間は2~3週間を見込んでおく
まず個人の出品者が「乗らなくなったので譲ります」と出品している場合、どういう状態のロードバイクなのかは写真だけではとても判断できない。
また知識不足から防犯登録を抹消してくれていないケースもあり、そうなると盗難車に乗っているのと同じ状態になってしまう。
そのため出品者情報を確認して、何度も取引履歴のあるサイクルショップが整備を入れ「ストア」として出品しているロードバイクの中から探すのが比較的安全だ。
ストアであれば防犯登録の抹消や譲渡証明書もスムーズに発行してくれるので、購入後は最寄りのサイクルショップに行き、防犯登録(600円)をし直すだけでいい。
またロードバイクの製造年数が10年以上前のものも避けるべきだ。
もちろん年式が落ちれば落札価格は安くなるのだが、ロードバイクのフレームの寿命は5~10年と言われている。
実際には期間よりもどれくらい乗っていたか?や、常日頃どのように保管していたか?(室内か野ざらしか?)のほうが影響度が大きいだろうが、そこはオークションではそこまではなかなかわからない。
そのため年式が10年を超えているものは、選択肢から外すようにしよう。
次に「送料」である。
大半は落札者負担となっていて、ロードバイク(完成車)の送料は大型の荷物となるので1~2万円近く発生する。
せっかくオークションでリーズナブルに落札できたのに、送料がかさんでしまったのでは意味がない。
必ず送料をチェックしたうえで、送料込みの価格で判断するようにしよう。
最後に購入期間として「2~3週間」を見込んでおくことをオススメする。
というのもオークションなので、ほしいと思っても必ず落札できるとは限らない。
筆者の経験からいうと、入札終了時間の5分前になると、ライバルとなる入札者が現れて、最終的にそれまでの入札価格から倍近くまで跳ね上がることもザラにある。
ここで熱くなって予算を越えた入札をしてしまっては、割高で入札することにもなりかねない。
あらかじめ「ここまでは頑張って出すが、ここを超えたら諦める」というラインを決め、本当に超えてしまったら撤退することが重要だ。
ヤフオクでのロードバイクの流通量は潤沢なので、そのロードバイクを逃してもまた別のお気に入りが必ず見つかるものなのだ。
もしオークションがどうしても苦手という方は、「即決価格」が設定されているものの中から選ぶという手もある。
みんなが乗ってるロードバイクとクロスバイク
ここまででロードバイクとクロスバイクをどう選ぶかに加え、ロードバイクを格安で入手する方法も紹介した。
そこでスポーツ自転車初心者が気になるのは、「どのメーカーのスポーツ自転車を買うべき?」という点ではないだろうか?
結論からいえば、2023年時点で有名メーカーのスポーツ自転車はおおむねどのメーカーも、同じような価格帯で設定されており、メーカーによる高い/安いはほぼない。
また価格帯が近いからか「あのメーカーはダサい・カッコいい」のようなブランドマウンティングもスポーツ自転車界にはないように感じる(コンポーネントのグレードによるマウンティングはあるような気はするが…)。
もちろんメーカーごとにフレーム等の細かい性能差はあるのだろうが、レースに出てカンマ数秒を競い合うような世界に足を踏み入れない限り、そうした性能差を感じる機会はほとんどないと思われる。
となると有名メーカーのスポーツ自転車であれば、シンプルに「見た目のカッコよさ」で選んでしまってOKという話になる。
特にロードバイクに関しては、自分がカッコいいと思っているスポーツ自転車に乗ることが長続きする最大のコツであるし、またロードバイクユーザーの大半が「自分のロードバイクこそが最高にイケてる」と思いつつ走っているのも事実だ。
とはいえ、有名メーカーの数もかなり多いうえに、そもそも「このメーカーって有名なの?」というところからあいまいという方も多いと思われる。
そこで今回の回答者はどんなメーカーのスポーツ自転車に乗っているのか?をザっと眺めておくことにしよう。
ロードバイクの人気メーカー
まずは今回の回答者の中から、ロードバイクユーザーが所有しているロードバイクのメーカーを見ていこう。
ぶっちぎりで多かったのがイタリアのメーカー「Bianchi(ビアンキ)」だった。
特にBianchiは女性からの支持が厚く、今回の回答者女性の4/7人(57.1%)というかなり高い割合がBianchiだった。
Bianchiはヨーロッパの老舗スポーツ自転車メーカーで、Bianchiといえばこの「チェレステカラー」である。
かわいいカラーなので女性からの人気があるのはうなずける結果だが、日本国内での販売台数も多く、サイクリングロードを走っていると1日に1台はBianchiを見かけるというのが常である。
次いで、多かったのがGIANTだ。
GIANTは台湾のスポーツ自転車メーカーで、かつてはほかメーカーからの発注を受けてスポーツ自転車を製造する工場だった。
だがそうした受注生産で蓄えた製造ノウハウから自社ブランドを立ち上げたのが、このGIANTというわけだ。
かつては「高性能なのに比較的安価に買えるメーカー」という位置づけだったが、近年ではほかスポーツ自転車メーカーと変わらない価格帯になっており、ブランドイメージが大きく変わっている。
ちなみに今回の回答者の中には含まれていなかったが、最近頻繁にサイクリングロードで見かけるメーカーだと米国メーカーのTREKがある。
クロスバイクの人気メーカー
最後にクロスバイク所有者の自転車メーカーも見ておこう。
クロスバイクではGIANTが大きく突き出た結果となり、やはりクロスバイクでもBianchi愛好家の多さがうかがえる。
またクロスバイクではBianchiにBridgestoneが並んでいるが、こちらは言わずと知れた日本国内のメーカーだ。
ちなみに同社は「Anker(アンカー)」というスポーツ自転車に特化したブランドもあり、同じBrigdestone社製のスポーツ自転車だ。
これらは愛用者が多いからいいメーカーと言いたいわけではなく、自身のロードバイクを探すときのアテにしてもらえばいい。
また「ほかの人とカブるのはイヤ」という方は、あえて愛用者が多いメーカーを外す手もアリだ。
まとめ
以上が今回の調査結果だ。
まだスポーツ自転車を選んでいる段階だと、実際に購入した後先のことはなかなか目が向きにくい部分でもあるが、ロードバイクを買うべきか?はたまたクロスバイクを買うべきか?の判断の一助になれば幸甚である。
最後に本調査の結論をおさらいしておくと、下記となる。
▼本調査の結論
・現時点でサイクリングすることが視野に入っているならロードバイク一択
・クロスバイクと本当に比較すべきは電動アシスト自転車
・通勤、街乗りなら電動アシスト自転車のほうがメリット多い
・「どうしてもスポーツ自転車!」ならクロスバイク
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