働き方改革が叫ばれて久しいが、そもそも同じ日本人と言えど「いい働き方」のイメージは人によって異なるものだ。
その働き方に対するイメージの違いが、鮮明に浮き彫りになるのが「残業」であり、残業に対する考え方だ。
つまり1分たりとも残業したくないという人もいれば、深夜におよぶハードワークは仕事の成果を出すうえで不可欠なものと考える人もいる。
昨今ではリモートワークの普及やデジタルトランスフォーメーションなど、働き方自体が激変しつつある現代社会においてひとびとの「残業像」も大きく揺れているはずだ。
ひと昔前であれば「残業したくないなんて甘えだ!」というブラック全開の論調もまかり通ったであろうが、令和の日本では果たしてどうだろうか?
そこで【300人のホンネ】編集部は、300人の会社員のみなさんに「残業」に関する意識調査を実施した。
本稿の要旨
・会社員の7割近い人が1時間以下の残業をしている
・「残業したくないなんて甘え論」に同調する人は全世代で少数派
・一方で、残業がゼロ化することには心理的な抵抗を感じる人が多い
・残業していた時間を自由に使えるなら「家でまったり」
・定時退社を実現する最強メソッド
では詳しく見ていこう。
平均的な残業時間は1時間/日
まずは300人の会社員のみなさんの残業状況をたずねた。
「大体定時に帰れている」(39.0%)と「月20時間くらい」(33.7%)で72.7%となり、1日あたり1時間以下の残業をおこなっている人が大多数となった。
感覚としても「定時ピッタリに帰るのは気が引けるが、ちょっと残って帰宅する人の第一波が出始めたころに便乗する」というやり方なら、気持ちよく帰れそうだ。
一方で、過労死ラインと言われている「月100時間以上」(2.3%)も少ないが存在することは注目に値する。
「ブラック企業」というレッテルを貼られたら、企業として存亡の危機に瀕するご時世でもハードワークをこなす人は依然としているようだ。
残業する理由はネガティブな理由が約半数
では、残業している人は一体なぜ残業しているのか?について聞いた。
なお残業理由をポジティブな理由と、ネガティブな理由で色分けした。
「定時に帰れないほど仕事量が多いから」(35.3%)が最多となり、青色で色付けしたネガティブな理由で残業している人は合計で46.0%となった。
一方で、ポジティブな理由は全体の25.7%にとどまり、もっとも多かったポジティブな理由は「残業代がもらえるから」(18.7%)だった。
当たり前かもしれないが、残業を好んでする人はあくまで少数派という結果となった。
「残業したくないなんて甘え論」については8割が否定的
続いて「残業したくないなんて甘えでしょ?」という論調に対して、どのような印象をもつかを聞いてみた。
「やや間違っていると思う」と「完全に間違っていると思う」と否定的に回答した人が84.4%を占め、圧倒的な多数派となった。
この点については世代差もありそうなので、年代別に回答をまとめ直したのが下表だ。
全体的に世代が上になるほど、「残業したくないなんて甘え」に賛同する人の割合が増えていく傾向となった。
60代以上では実に3人に1人以上が「甘えだと思う」という印象をもっていることがわかる。
世代論にひもづけていろいろと言えそうな結果ではあるが、単純に年が上の世代ほど役職についている可能性が高いわけで、スタッフ目線ではなくマネジメント目線で回答している可能性も考えられる。
ただしいずれにせよ、どの世代においても「残業したくないのは甘え論」には否定的な層が過半数となっており、この論を声高に振り回す人はあくまで少数派であることがわかる。
残業はなくなるべきと考える人は3割に止まる
ここまでで、多くの会社員にとって残業は歓迎されるべきものではないことは明確となった。
ではここで逆方向に極端に論を進めてみることにしよう。
これだけ多くの人が残業に対して否定的であるのであれば、残業という慣習はなくなるべきなのだろうか?
意外なことに「残業は今後なくなるべきだと思う」と回答した人は30.0%にとどまった。
これは「会社のために残業して当然」(3.3%)と「組織の一員である以上残業は必要」(26.3%)と回答した残業肯定派の割合とほぼ同じである。
残業をゼロ化したらしたで気色悪いし、かと言って残業して当然と思われるのもイヤ、というなんとも玄妙な結果である。
一方で、少し聞き方を変えて「毎日定時に帰る同僚への印象」もあわせて聞いてみた。
結果は「自身のタスク終わったなら問題ない」(56.3%)が最多だった。
つまり日本の平均的な職場では、特に同僚が定時に帰ること自体が問題視されるわけではないことがわかった。
裏を返せば、片付いていないタスクを誰かに押し付けて自分だけ帰るのはご法度と言えそうだ。
残業時間を自由に使えるなら「自宅で休養」が最多
では一方で、本来なら残業に奪われるはずだった時間を自由に使えるなら、一体なにに使いたいのか?を聞いてみた。
結果は、「自宅でリラックス&休養」(49.0%)が最多となった。
仕事が終わった後、特になにかをしたいというわけでもないようだ。
コロナ禍のご時世もあるのかもしれないが、自分の時間をゆったりした気持ちで過ごすというのが、多くの会社員にとって理想的な余暇の過ごし方のようだ。
また前章で残業撤廃派が30%に止まったことに触れたが、もしかすると「早く家に帰ってもやることがない」という背景も撤廃派が伸び悩んだ一因のように見える。
令和の時代にあっても、日本人の生真面目さは不変と言えそうだ。
定時に帰るための最強メソッド5選
では本稿の最後に定時で帰るための最強のメソッドを紹介することにしよう。
人間は機械ではない。
毎日毎日単調な生活をしていたら逸脱したくなるし、どうしても今日は定時ピッタリに帰りたいという日もある。
そんなどうしても残業したくないときに使える定時帰りの最強メソッドを300人に聞いたので、効果がありそうなものを5つ紹介する。
残業をどうしてもしたくない人はこれらをローテーションして使えば、1週間しのげるはずだ。
事前に根回ししておく
出勤した時点で今日はどうしても外せない用事があるので定時で帰りますと上司に伝えます。
(26歳、女性)
お昼や休憩の時など、ちょっとした会話の中で定時に帰らなければならない理由(予定や気分など)をさらっと話しておくなどの根回しをあらかじめしておく。
(47歳、女性)
定時帰りのメソッドとして、もっとも多かったのがこの「事前の根回し」である。
確かに突然定時に帰ると「逃げた感」がどうしても出てしまうが、事前に根回ししておくとやましさを吸収してくれるなにかがある。
また「もう定時だよ?帰る支度しないと!」なんていう同僚からの援護射撃も受けられることもあるので効果は絶大だ。
根性でタスクをさばく
定時までフルスピードで頑張って帰る!
(35歳、男性)
時間管理をしっかりして、一日を行動していくことです。
(34歳、男性)
人間は目先の願望のためなら、頑張れるところがある。
普段ダラダラやってしまっていることなどを、最大の集中力で取りかかればあっという間に終わるなんてこともザラだ。
毎日はとても使えないが、誰も傷つけず、誰にも迷惑をかけないという意味でいいメソッドである。
道連れを作る
仕事が遅い人がいればその人の分も手伝って、ともに早く上がる。
(29歳、女性)
仕事中も雑談やちょっとした休憩などを極力取らず、嫌味でない程度に人の仕事も手伝う。
(37歳、女性)
自分ひとりだけ定時で帰るのはどうしても気まずい場合は、道連れを作ることも手だ。
また自分の周りを手伝っておけば「あの人は自分の仕事が終わったのに、ほかの人の仕事まで手伝って偉いな」という見え方にもなるので、上司からの評価もまずまず期待できそうだ。
強行突破する
全身から急いでます!もう帰ります!話しかけないでね!という雰囲気をダダ漏れにして、有無を言わさず帰宅準備をどんどんする。
(33歳、女性)
「お先、失礼します!!」と元気に挨拶して、さっと帰る。
(66歳、男性)
周りの人に謝り倒して帰る。
(33歳、男性)
上記はいずれも表現は違えど、強行突破策だ。
わざわざ定時に帰る理由など説明するから、ウソ臭くなるのである。
なにも理由を明かすことなく勢いだけで押し通れば、残った人がいいように解釈してくれることもある。
発作的に帰りたくなったときは、この強行突破に限るだろう。
まとめ
以上、令和の日本における「残業像」を見てきた。
多数派のホンネは、「残業を強いられるのはイヤだが、なくなると気色悪い」というところに落ち着くのではないだろうか。
意外と会社員のみなさんは「今日は誰が先陣を切って帰るのか?」という微妙な空気や駆け引きを楽しんでいるのかもしれない。
本稿の要旨
・会社員の7割近い人が1時間以下の残業をしている
・「残業したくないなんて甘え論」に同調する人は全世代で少数派
・一方で、残業がゼロ化することには心理的な抵抗を感じる人が多い
・残業していた時間を自由に使えるなら「家でまったり」
・定時退社を実現する最強メソッド
アンケート実施方法
アンケート方法
・アンケート方法 インターネット上でアンケートを実施
・回答者数 300名
・調査日 2021年2月8日
・設問は単一選択式
・調査主体 【300人のホンネ】編集部
コメント