あなたはもしかしたら今使っているイヤホンに不満があって、ヘッドホンを模索したいのかもしれない。
あるいは使っていたオーディオ機器が故障してしまい、イヤホンとヘッドホンのどちらを買うべきか検討したいのかもしれない。
いきなり結論を言ってしまうと、2023年現在はイヤホン全盛と言ってよく、イヤホンを選んでおけば大きな失敗はない。
ただしイヤホンを選択するにしても、単に「多くの人がイヤホンを選んでいるから」という理由だけでは腑に堕ちないところも出てきてしまう。
そこで本稿では、イヤホンもしくはヘッドホンを日常的に使用している全国の男女300人を対象にアンケート調査をおこない、イヤホンとヘッドホンはどのように選択すればよいか?を調査することにした。
本調査の結果、明らかになった事実は下記である。
▼本調査の結論
・日常使いではイヤホン派が圧勝状態
・半数の人がイヤホンとヘッドホンの二刀流
・家の外で使用するならイヤホンのメリットが大きくなる
・1時間以上使用するならヘッドホンのメリットが大きくなる
イヤホンやヘッドホンは、購入後ほぼ毎日使うという人も少なくないはずだ。
本稿を読めば、このイヤホンorヘッドホンの選択を自信をもってできるようになるだろう。
日常使いでは圧倒的にイヤホン派が多数派
まずは世の中的にはイヤホン派とヘッドホン派のどちらが多いのか?という基本的なところから確認していこう。
日常使いしているのは、イヤホンとヘッドホンのどちらか?を聞いた結果が下図だ。
イヤホン派が90.0%とヘッドホン派(10.0%)に大差をつける結果となった。
確かに通勤中の電車内を見渡しても、大半の人はイヤホンをつけているわけで納得せざるを得ないが、ヘッドホン派の筆者としてはもう少しヘッドホン派がいてもよさそうにも感じる。
そこでもう少しこのヘッドホン派を探索すべく、少しだけ掘り下げて見てみようと思う。
性別、年齢別に見てもヘッドホン派はマイノリティ
まずは男女別に見てみると、ヘッドホン派の割合は変わるだろうか?
結果は下図である。
男性はヘッドホン派が15.1%と、全体より少しだけ勢力を伸ばすものの、それでも84.9%がイヤホン派だった。
女性に至っては、実に95%近くがイヤホン派で固められていることがわかる。
では年代別に見ると、ヘッドホン派の割合はどのように変わるだろうか?
大きく結果を見ると、年代が上がるにつれてヘッドホン派の割合が少しずつ増えていくことが確認できる。
それでも最も多い割合で50代の14.3%止まりで、どの年代においてもイヤホン派が圧勝状態にあることに変わりはない。
まさに2020年代は、イヤホン全盛期と言えるかもしれない。
若い年代の読者の方にあえて説明しておくと、かつていい音で音楽を聞こうと思うとステレオスピーカーにこだわるか、ヘッドホンかの二択状態だった。
その潮目が大きく変わったのは、2000年代初頭にカナル型(耳の穴に深く端末を入れるタイプ)のイヤホンが登場したことではないか、と筆者は考えている。
それまでのイヤホンといえば、インナーイヤー型(iPhoneなどに付属してくるタイプのもの)しかなく、音質も低音のベースやキックドラムはなんとなくしか聞こえない「スカスカ」なものが多かった。
筆者は学生時代にバンドで音楽をやっていたが、先輩たちからまず言われたことは「ヘッドホンで音楽を聞け」ということだったほどだ。
ところが、である。
カナル型は、そこまで高価でない機種も、低音がしっかりと聞き取れたのだ。
実をいうと、筆者もそれまではヘッドホン派だったが、カナル型の爆発的な普及に伴いイヤホン派に一時期転向していた。
もしかしたら年代が上がるごとにヘッドホン派が増えるのは、こうした時代背景と経緯があったからかもしれない。
いずれにせよ、2023年時点では日常使いという観点だとイヤホン派が圧勝状態であることを再確認しておきたい。
では、イヤホンにこれだけの溝を開けられてしまったヘッドホンは、もはや一部の愛好家のみが用いる過去の産物になってしまったのだろうか?
実は、そうではない。
次章では、イヤホンとヘッドホンの所有数という観点で見てみよう。
イヤホン派もヘッドホンを所有している者が半数いる
結論からいえば、この令和の時代においても、ヘッドホンを1台以上所有している人は47.3%も存在する。
さすがにヘッドホンを2台以上所有している人は1割を切ってしまうが、少なくとも「ヘッドホンは持っていないからイヤホン派」というわけではないことがわかる。
これを素直に考えれば、ヘッドホンもイヤホンも両方持ってはいるが、なんだかんだでよく使っているのはイヤホンであり、ヘッドホンは押入れなどに眠っている人が多いということになる。
ヘッドホン派としては、より悲しい現実が浮き彫りになってしまったわけだが、ではイヤホンの所有数のほうはどうだろうか?
なんと97.5%もの人が、イヤホンを1台以上所有している。
さらに言うと、イヤホンを2台以上所有している人の割合も58.7%と半数を超えているのだ。
この背景には、いろいろな理由が考えられそうだが、おおむね下記のような理由ではないだろうか?
・iPhoneなどスマホを機種変更するとイヤホンが付いてくる
・100均にも並ぶほどイヤホンは安価で手に入る
実際に回答者に購入価格を聞いたところ、「0~999円」でイヤホンを入手した人が15%近く存在しており、もはやイヤホンは生活必需品どころか余剰物でさえあることがうかがわれる。
中には10台のイヤホンをもっている回答者もおり、イヤホン選びの沼にはまってしまってのか、はたまたわざわざ買わずとも自然と溜まっていくのか気になるところである。
では次の章からは、イヤホン派とヘッドホン派双方の具体的な主張を見ていくことにする。
イヤホン派の主張では、イヤホンのいいところとイヤホンの悪いところを、ヘッドホン派の主張では、ヘッドホンのいいところとヘッドホンの悪いところを、見ていくことにする。
イヤホン派の主張
まずは圧倒的な数のパワーをもち、マジョリティの座を占めまくっているイヤホン派の主張から見ていくことにしよう。
イヤホン派はイヤホンのどういったところを好感しているのか?から、見ていくことにしよう。
イヤホンのいいところ
イヤホンのいいところとして多く挙がったのは、下記の2点だった。
まずもっとも多かったイヤホンの利点は、携帯性やコンパクトさを挙げる声だった。
「かさばらず、ポケットなどにも入って持ち運びしやすいので」(57歳男性)
「主にジムで運動をする時に使うので、イヤホンの方が使いやすいです」(36歳女性)
ジョギング程度の軽い運動ならイヤホンをつけたままでも十分行えるし、またイヤホンが無線化したことで、より一層邪魔にならない存在となった。
また横向きに寝ているときにも使えるし、激しくヘッドバンキングできるのもイヤホンである。
その点ヘッドホンはコンパクトなものでもポケットには入らず、またヘッドホンをつけながらできる運動はエアロバイクなどかなり限定されるだろう。
「片耳だけでもつけられる。周りの音が拾えるから付けときやすい」(27歳女性)
「ヘッドホンだと完全に周りの音が遮断されてしまうから」(45歳女性)
次に多かった利点は、周りの音がある程度聞こえることを利点として挙げる声だった。
特に街なかや職場では、ある程度周囲の音が聞こえていないと、恐かったり気まずい思いをすることもある。
具体的には後ろから車が接近しているのに気づけなかったり、職場で誰かに話しかけられても気づかないということだ。
もちろんイヤホンでもカナル型のもので爆音で聞いていたり、しっかりしたノイズキャンセリング機能があるものを使っているとヘッドホンと同じだ。
だがイヤホン全般で安全面を考えると、周囲の音がある程度聞こえるイヤホンのほうに軍配が上がるだろう。
サイクリングなどでもっと周囲の音を聞こえやすくするためには、耳の穴をふさがない骨伝導タイプのものをつけるという選択肢もイヤホンにはある。
イヤホンの悪いところ
では次にイヤホンの悪い面にも目を向けてみよう。
主だったイヤホンの悪いところは下記だ。
「小さいので失くしやすいです」(37歳男性)
「よくコードが絡まり、そのたびに解かないといけない」(44歳男性)
ワイヤレスだと失くしてしまうし、有線式だとコードが絡んで面倒…。
特に人気のApple社製のAirPodsだと2~3万円の価格帯のため、シャレでは済まない紛失リスクを抱えている。
その真ん中のちょうどいいラインはないのか?と忸怩(じくじ)たる思いを抱えてるイヤホン派も少なくないようだ。
そして有線式は有線式で、カバンに突っ込んでおくと難解な知恵の輪状態になって発見されるのである。
絶対に絡まらない有線式イヤホンか、失くさないワイヤレスイヤホンの登場が待たれている。
「長時間つけると耳が痛くなる」(39歳女性)
「耳の穴にフィットしないときがある」(29歳女性)
筆者の体感ではイヤホンを1時間つけていると、耳の穴まわりに痛みを感じるようになる。
それをさらに我慢してイヤホンをつけ続けると、やがて頭痛も覚え始める。
またいつもと同じように装着したはずなのに、耳からやたらポロポロとイヤホンがこぼれ落ちてくる「イヤホンがはまらない日」というのもある。
無理に耳奥に押し込んで聞いているとやはり痛みを感じはじめ、痛みで音楽がまったく頭に入ってこないようになってしまう。
こうしたつけ心地の悪さをデメリットとして挙げる声も目立った。
ヘッドホン派の主張
では次にヘッドホン派の主張として、いいところ・悪いところの双方を見ていくことにしよう。
ヘッドホン派は数としてはかなりのマイノリティではあるが、彼らの声も一聴に値するものが多かった。
ヘッドホンのいいところ
まずヘッドホン派が感じている、ヘッドホンの利点は下記だ。
まずヘッドホン派が推す最大の利点は、音質のよさだ。
「音質が良く没入感があるから」(33歳男性)
「音が響いて、綺麗な音で立体的に聞こえるから」(23歳女性)
以前楽曲のミックスをするプロから、「ヘッドホンには耳との間にすき間があり、そこで空気と混ざるから音に立体感が感じられる」と聞いたことがある。
実際に音の高い解像度が求められる音楽制作の現場で使われるのも、イヤホンであることはほぼなく、ヘッドホンが現在でも主流だ。
もちろんイヤホンの音質も20年前と比べると飛躍的にあがったと言えるが、もし同じ価格帯のイヤホンとヘッドホンの音質を比べたら、ヘッドホンのほうが音質がよく聞こえるはずだ。
実際にイヤホンでは聞こえていなかった音が、ヘッドホンだと聞こえるということはよくあることだ。
もちろん「音がいい・悪い」にはその人の好みもあるが、音質を重視するのであればヘッドホンを選択しておくと大きく外すことはない。
「耳に負担がかかりにくいから」(35歳男性)
「イヤホンは耳の中が痛くなるのでヘッドホンの方が長時間使いやすいのが魅力です」(36歳女性)
ヘッドホンの中でも耳全体がすっぽりとおさまるタイプ(オーバーイヤータイプ)のヘッドホンなら、イヤホンのような痛みを感じることはない。
耳に載せるタイプ(オンイヤータイプ)は、イヤホンのように耳の穴まわりが痛くなることはないが、耳介(耳の上部)あたりは痛くなってしまう。
そのため耳の痛みを懸念するのであれば、しっかり耳がおさまるオーバーイヤータイプがおすすめだ。
ヘッドホンの悪いところ
では次にヘッドホンの悪いところも見ておくことにしよう。
ヘッドホンの悪い点として挙がった主なところは、下記である。
「大きいので使わないとき邪魔になる」(52歳男性)
「重さで首などに負担を感じること」(58歳男性)
しっかりしたヘッドホンを選べば選ぶほど、増長し始めるのがデカさであり重さだ。
イヤホンは10g程度の重さしかないが、ヘッドホンは平均的なもので200g前後はある。
また通勤バッグの中にはとても入らないようなかさばるものもあり、使用できるシーンが自宅に限定されてしまうことも。
同時に「横になって使えない」というのも、ヘッドホンのデカさゆえのデメリットと言えるだろう。
「周りの音が聞こえなくなるので、話しかけられてもわからない。一人で集中して聞ける時間が取れないと使いにくい」(45歳男性)
「外部の音が聞こえないから奥さんからいつも怒られる」(51歳男性)
ヘッドホンを装着していて話しかけられているのにまったく気づかず、肩を叩かれて飛び上がるほどビックリする――ヘッドホン愛好家あるあるのひとつだ。
またヘッドホンをつけたまま会話をしていて、自分の声もあまり聞こえないので自然と大声で話している、というのもまたヘッドホンあるあるである。
これだけ周囲の音から遮音されるので、勉強や集中したいときにヘッドホンを無音のまま着用したり、Youtubeなどの環境音を小さく流しておくという活用法もある。
ただし街なかや職場では、その遮音性ゆえに危険な目に遭うことも考えられるので、十分に注意が必要だ。
このようにイヤホンとヘッドホンには一長一短あり、一様にどちらが優れているということはできない。
しかしイヤホンとヘッドホンは、お互いの短所を補い合うような一面も見られる。
そのため今回の回答者の約半数がそうであったように、イヤホンとヘッドホンの二刀流という選択もアリだ。
本稿としては、これらメリット・デメリットを総合的に勘案し、それぞれの強みが発揮される使用シーンの提案しておきたい。
▼状況によるイヤホンとヘッドホンの使い分け
・外出時や運動時はイヤホン
・1時間以上着用することが多いならヘッドホン
イヤホンの平均購入価格は5,922円、ヘッドホンは平均9,977円
最後にこれからイヤホンやヘッドホンを新調しようとする方のために、みんなはイヤホンやヘッドホンにどれくらいの予算を割いているのか?という点を見ておくことにしよう。
▼購入金額の平均
イヤホン | 5,922円 |
ヘッドホン | 9,977円 |
ヘッドホンのほうが68.4%高い購入金額になっている。
これは先述の通り、iPhoneなどに付属しているイヤホンを使っている人も一定おり、0円でイヤホンを入手した人が平均値を押し下げたことが要因のひとつとして考えられる。
実際にイヤホンの購入金額としてもっとも多かったのは「0~1,999円」の33.7%であり、相応の割合となった。
一方でヘッドホンでもっとも多かった購入金額帯は「2,000~3,999円」で、40.0%の割合だった。
またイヤホンの購入額としてもっとも高額だったのは40,000円だったのに対し、ヘッドホンは64,350円だった。
6万円を超すヘッドホンで聞く音楽は、どのような聞こえ方をするのか一度は聞いてみたいものである。
まとめ
最後に、今回の調査結果についておさらいしておこう。
▼本調査の結論
・日常使いではイヤホン派が圧勝状態
・半数の人がイヤホンとヘッドホンの二刀流
・家の外で使用するならイヤホンのメリットがより大きくなる
・1時間以上使用するならヘッドホンのメリットが大きくなる
楽曲の聞き放題サービスもすっかり定着し、インターネット環境も整備されたことから、24時間いつでもどこでも音楽に接続できるのが現代社会だ。
イヤホンかヘッドホンかという二元論ではなく、シーンによって使い分ける二刀流が今後の主流となっていくのかもしれない。
アンケート実施方法
▼アンケート方法
・アンケート方法 インターネット上でアンケートを実施
・回答者数 イヤホンもしくはヘッドホンを日常的に使用している全国の男女300人
・調査日 2023年9月13日
・設問は単一選択式、および記述式
・調査主体 【300人のホンネ】編集部
コメント
コメント一覧 (1件)
ヘッドホン買おうかな!