オトナと言えば、1人飲みをスマートに嗜める人というイメージはないだろうか?
実際に1人飲みをしている男性の背中はシブく見えるし、1人飲みをしている女性はクールでカッコよく見える。
ところが、いざ自分が店の扉の前に立ったところを想像すると、なかなかあと一歩が踏み出せないのが現実だ。
そこで当【300人のホンネ】編集部では、1人飲みを定期的に楽しんでいる男女253人にアンケートを実施し、1人飲みの実態調査を行った。
結論から言えば、本調査結果は下記である。
▼1人飲みに関する本調査の結論
・1人飲み時にスマホはマストアイテム
・1人飲みの最大のメリットは「自分のペースで飲める」
・1人飲みのお店選びの基準はカウンター席の多い居酒屋
本稿を読み終わるころには、たとえデビュー戦でもスマートに1人飲みを心ゆくまで堪能するための知識と勇気が手に入ることだろう。
1人飲みの実態から見るお店での正しい振る舞い方
まず1人飲みで気になるところは、店での振る舞い方である。
1人飲みビギナーが陥いる罠が待ち構えているかもしれないし、当日の予行練習も脳内で済ませておきたいところだ。
そこで1人飲み経験者たちは店内でどのように振る舞っているのか?を詳しく見ていくことにしよう。
1人飲みしてるときにすることは「スマホ」が圧倒的
まず圧倒的に疑問なところは、「1人でお店に入って、一体何をしているの?」である。
もちろん1人飲みなんだから、お酒を飲んだりツマミを食べているのは当たり前だ。
だがここで言いたいのは、そういうことではない。
複数人で飲みに行ったときは、その連れといろんな話に花を咲かせたりしているわけだが、その時間を1人でどう埋めているのか?という問題である。
結果は下図となった。
男女ともに1人飲みの時にしていることは「スマホ」が圧倒的多数となった。
さらにスマホで何をしているのか?に関しては、主に下記の内容が多かった。
・ゲーム
・映画や音楽の視聴
・SNS
飲み会の席でずっとスマホを触っていると、退屈しているように受け取られたり、食事中にマナーがなっていない人のように見られがちである。
だが1人飲みのときにスマホを触っていても、誰からも咎められることはない。
なんのことはない、スマホでいいのである。
筆者はなぜか「スマホを出したら負け」のように考えていたが、1人飲みで当てはまらない。
さらにスマホは手持ち無沙汰を解消してくれるだけでなく、「いま取り込んでるから、話しかけないで」というバリアの役割も果たしてくれる。
まさにスマホは1人飲みのマストアイテムと言えそうだ。
またスマホにつづき、「ボーっとしている」、「飲食に集中している」、「考えごと」が続いた。
やや1人飲み上級者の振舞いのように見えるが、初手はスマホで場をもたせ、場に馴染んできたらチャレンジしてみるのもよさそうだ。
滞在時間は「1時間ほど」が最多
続いて1人飲みの際、店内にどれくらいの時間滞在しているのか?について聞いた。
結果は「1時間ほど」が49.8%の最多となり、「1時間30分ほど」の24.1%をあわせると、1時間半以内に店を出る人が7割超えとなった。
なんと優れたタイムパフォーマンスであろうか。
ハードな複数人の飲み会だと、下手をすれば19時ごろから始まり午前2時くらいまで続くことがあるが、この間に失っている時間は7時間である。
しかもそうしたハードな飲み会では酔いが回りすぎて、7時間ものあいだ何をして、何を食し、何を話していたかなんてわずかな記憶しか残っていない。
もちろん翌日には、寝不足と二日酔いという地獄の業火に焼かれる羽目になる。
それに比べ1人飲みは、仕事帰りに90分だけのタイムロスで済むし、よほどハイピッチで痛飲しない限り翌日に響くこともなさそうだ。
おいしい料理をつまみながら、3、4杯飲んだらサッと店を出る…
――冷静に考えれば、それで充分はずなのだ。
1人飲みする頻度は「月に1回」が多い
続いて1人飲みする頻度について聞いた。
結果は「月に1回程度」が34.8%の最多となり、「数か月に1回程度」の23.7%を合わせれば過半数となる。
てっきり特定の店の常連となるために足しげく通う必要があるのかと考えていたが、実際は「気が向いたときにたまに行く」程度であっても1人飲みは満喫できるようだ。
ほかの設問でもそうなのだが、1人飲み経験者たちは行きつけの店に馴染んでいるというより、その時に気になった店にフラっと入っていく人のほうが多いように感じられる。
1人飲みをたしなむ人は、どこまでも自由気ままである。
1人飲みするのにコミュ力は必要ない
続いて気になるのは、店員やほかのお客さんたちとのコミュニケーションである。
カウンター席にでも座ろうものなら、「ほう。このかつおは伊豆の初物だね?」のような大将や女将さんと小粋な会話のひとつでもしないといけないような気がするが、実態はこうなった。
世間一般のコミュ力の分布がどうなっているのかわからないが、ここで大事なのは1人飲みする人は特別コミュ力が高い人というわけではなさそうだ。
あくまで自己評価だが、コミュ力が「高い」以上の人が27.3%いる一方で、「低い」以下で回答した人も23.7%いる。
先ほどの設問で、1人飲みのときスマホを見ている人が大多数だったが、そのことを考えれば1人飲みにコミュ力は不問と考えらえる。
もちろん人懐っこくて秒で店に溶け込んでしまう人もいるだろうが、それは必須スキルではないということだ。
1人飲みは男性「30~40代」、女性「20~30代」がメイン層
続いて1人飲みをしている人たちの年齢層についても見ておこう。
大衆居酒屋でよく見かける1人飲みしている存在はおじさんと相場が決まっているが、実際のところはどうなのだろうか?
今回の回答者のボリュームゾーンと言えそうなのは、男性は「30~40代」、女性は「20~30代」となっている。
20代や30代の女性が多く1人飲みしているというのは意外な結果だが、結婚して子育てとなるとなかなか夜に家を空けられないという事情もありそうだ。
1人飲みしてみたい20~30代の女性にとっては心強い結果となったのではないだろうか。
一方で男性のほうも全年齢層にまんべんなく分布していることから、「1人飲み=おじさんっぽい」というイメージから気兼ねする必要はなく1人飲みにチャレンジして違和感はなさそうだ。
1人飲み最大のメリットは「自分のペースで飲める」
ここまでは1人飲み経験者の実態面を見てきたが、ここからは1人飲みのメリット・デメリットについて見ていくことにしよう。
まずはメリット面だが、結果はこうなった。
もっとも支持されたメリットとして「自分のペースで飲める」が71.1%で最多となった。
複数人の飲み会だと付き合いや泣きの「もう一杯」が何度も繰り返されることが多いが、自分のペースというのは「自分が気持ちよく飲める量だけでいい」という意味合いも含まれていそうだ。
また場が盛り上がりそうな話を披露したり、コップが空きそうな人がいたら店員を呼んであげるなど配慮がいらない「人に気を遣う必要がない」(56.5%)や、「自分の好きなものだけを注文できる」(54.9%)が過半数越えとなった。
思えば複数人で行く飲み会でオーダーする料理は「みんなが食べられそうなもの」という最大公約数的な発想で選ぶことが多い。
その点1人飲みで、自分の好きな料理と酒だけで占められたテーブルを眺めるのはさぞ壮観なことだろう。
一方で、「店員や常連客と仲良くなりやすい」は16.2%と低い割合に抑えられた。
先ほどのコミュ力のところでも見たが、1人飲みに店員やほかのお客さんたちとのコミュニケーションは必須ではないことが、ここでも確認できる。
1人飲み最大のデメリットは「グループ客が多いと浮く」
1人飲みのメリットの一方で、デメリットのほうはどうだろうか?
結果は下図だ。
まず大きくみると、メリットのように過半数を越えるデメリットはなかった。
これは1人飲みのデメリットよりもメリットのほうを強く感じている人のほうが多いことを意味する。
ただそうしたデメリットのなかでも比較的多かったのが「グループ客が多いと浮いてしまう」(41.9%)というものだ。
これはのちの1人飲みに適した店選びの章で詳しく掘り下げることにするが、基本戦略として1人飲みをするときはグループ客がいない店を選択するのが得策だ。
理由は、まわりがうるさいと1人飲みに耽ることの妨げにもなるし、また居心地が悪く感じられてしまうからだ。
1人飲みをしっぽり楽しむための大敵は、このグループ客であることをまずは押さえておこう。
また18.6%と割合は少ないが「知らない人に絡まれる」という問題は、特に女性にとって大きな懸念事項だ。
そのためこの「知らない人に話しかけられる」という1人飲み時に起こる現象について、詳しく見ていくことにしたい。
女性はほかのお客さんに話しかけられることのほうが多い
結論から言えば、女性が1人飲みをする場合、知らない人から声をかけられることは避けられない、と考えておいたほうがよさそうだ。
こちらをご覧いただきたい。
衝撃的な結果となったが、「ほかの男性客」から話しかけられた経験がある女性回答者は57.4%にも昇る。
つまり1人飲みをする女性の2人に1人以上が、男性客に話しかけられているということだ。
これが男性の場合だと、異性である「ほかの女性客」から話しかけられたことがある人は23.4%なので(それも多いと思うが…)、単純にその倍以上は話しかけられることになる。
これをどう受け取るか難しいところであるが、おそらくお酒の勢いがついた男性客にとって、1人飲みしている女性はかなり話しかけたくなる存在であることは間違いない。
中には妙なイタリア人気質が憑依して「レディがひとりで飲んでいるのに、話しかけないなんて失礼だよ」という独自の価値観をもった男性もいるかもしれないが、とにかく話かけたくなってしまうのは間違いない。
もしかしたら一杯おごってくれるなどのメリットもあるかもしれないが、タイプでもない男性に延々と絡まれるのはストレス以外のなにものでもないし、なかにはよからぬ下心から近づいてくる男性客もいるだろう。
ひとまず1人飲みデビューを目指す女性は「見知らぬ男性客から話しかけられる」という事態は十分に起こり得ることだと想定しておくのが自然だ。
ただし、そのことを1人飲みしている女性たちはどう受け取っているのだろうか?
話しかけられることは比較的好意的に受け取る人が多い
まず1人飲みしているときに、誰かから話しかけられることを「大歓迎」もしくは「タイミングによっては歓迎」と回答したのは男性47.3%、女性34.7%であった。
一方で「あまり嬉しくない」と「一切話しかけないでほしい」と回答したのは、男性17.7%、女性29.7%だ。
男性はウェルカム状態の回答者のほうが圧倒的に多いが、女性に関してはやや僅差で歓迎が上回るという結果だった。
もちろんその場で楽しくおしゃべりするのが好きな女性にとっては、納得の結果かもしれない。
だが歓迎できない女性にとっては自衛策をとる必要がある。
ここは先輩である1人飲みをたしなんでいる女性たちの声に耳を傾けるのがよさそうだ。
「話しかけられたくなければ、イヤホンをしておくといいです」(20代女性)
「話したくない相手に絡まれた時はハッキリとした態度をとること。
若い頃は愛想笑いをしたせいで面倒な状況になることもありました。もし話相手が欲しいなら、店員さんにメニューの質問をするといいと思います」(30代女性)
総じて1人飲みで話しかけられたくない女性は、はじめから態度で示しておくことが大事なようだ。
それでも突破してこようとする男性には、「そろそろ帰るんで」や「いえ、結構です」など、毅然と流すのに尽きる。
おそらく大半の声をかけてくる男性は、単に酒の勢いで「かまってちゃん」化してしまっただけと考えられるので、実際たいした害はなく、かまってくれないとわかるとおとなしく自席に帰っていくはずだ。
それでも絡んでくるようなら迷わず店員を呼ぼう。
1人飲みしやすい店の選び方
ここまでで1人飲みする際の立ち回りはイメージできてだろうか?
では最後の関門、「1人飲みはどういう店ですればいいのか?」について迫っていくことにしよう。
結果は、こうである。
▼1人飲みしやすい店の特徴ランキング
カウンターのみ・多い | 41.9% |
完全個室・半個室 | 11.9% |
静かな落ち着いた店 | 9.9% |
1人客が多い店 | 9.1% |
こじんまりとした店 | 7.5% |
賑わって活気のある店 | 3.6% |
立ち飲み屋 | 2.8% |
店内が広い店 | 2.4% |
アットホームな店 | 2.0% |
チェーン店 | 1.6% |
まずもっとも多かった1人飲みしやすい店の特徴は「カウンター席が多い・カウンター席のみ」(41.9%)である。
理由は、カウンター席が多い店には、1人飲みをしている客も多いからだ。
先ほどの1人飲みのデメリットの章で「グループ客が多いと浮く」という声が約4割挙がったが、そうしたグループ客を避けるにはカウンター席が多い店に行くというのがセオリーと言える。
ほかの「1人客が多い店」(9.1%)、「こじんまりとした店」(7.5%)という特徴も、カウンター席が多い店の特徴と合致すると考えられるので、1人飲みデビューを無難にこなしたいならまずこのカウンター席の多さを基準にするのがよさそうだ。
「カウンター席に座ると店員さんと話さないといけないのでは?」という懸念が持ち上がるかもしれないが、それはむしろカウンター席が少ない店で起こりやすい出来事だ。
たくさんのカウンター席が埋まっているところに、なぜかあなただけ狙いうちで店員から話しかけられるのは考えにくい。
「1人で飲んでいると、世の中にはわりと1人飲みしてる人が多いことをわかる!」(20代女性)
という回答者の声もあるように、1人飲みの人が飲んでいるカウンター席をいったんの生息地と定めることをおすすめする。
一方でそれとは異なる考え方で、「完全個室・半個室」(11.9%)に入り周囲から遮断されることを目指す方向性や、あえてグループ客が多い「賑わって活気のある店」(3.6%)、「店内が広い店」(2.4%)に飛び込むことで場に紛れてしまう方向性もあるようだが、あくまで少数派にとどまった。
そのためやはりデビュー戦はカウンター席の多い席で、スマホを片手に1時間ほど飲食を楽しみつつ、ぼんやりしてみたり、ゆったりと時を過ごすことを目指すのが王道と言えそうだ。
業種は「居酒屋」が一般的
ところで単純に「カウンター席が多い店」と言っても、居酒屋やバーなどいくつか心当たりがあるかもしれない。
そこでどういう業種のお店が1人飲みに適しているか?という観点でも質問をおこなった。
結果は下図だ。
男女差はなく「居酒屋」が49.4%で最多となった。
バーも28.1%と一定数確認できるが、1人飲みのメリットである「自分の好きな料理だけを注文する」が食事メニューがさほど重視されていないバーでは享受しきれないという面もある。
そのため本稿では「カウンター席が多い居酒屋」を1人飲みの本線として推奨しておきたい。
1人飲みデビューを成功させるためのTips
ここまででもう1人飲みをデビューする上での知識面は十全に補完できた。
あとはほんの少しの勇気を振り絞るだけである。
そこで最後に1人飲みを嗜む先輩たちから、より1人飲みを楽しむためのアドバイスを聞くことにした。
いくつか先輩たちの声を紹介することにしよう。
「最初は一人飲みに抵抗がありましたが、勇気を出して店に入って、お酒を飲んで酔ってしまえば全然気になりません。むしろ一人の世界に没頭できますよ」(40代女性)
核心を突くアドバイスであり、「酔って気が大きくなってしまえば、こっちのもの」である。
ただし1人飲みのときは酔いが回るのが早いという声もいくつか散見されたので、酒量には注意が必要だ。
ベロベロになっても介抱してくれる仲間はいないので、気持ちよくなってきた程度にとどめておくのが無難だろう。
「会話をすることがないぶん、全神経を食べる行為に傾けることができます」(30代女性)
「自分のためだけに用意された飲み物や料理が並んだテーブルの「無敵感」は、1人飲みでしか味わえません」(30代男性)
王もしくは女王の食卓というべき、好きなものだけを詰め込んだキラキラと輝く卓上の壮観な眺め…
ぜひとも堪能してみたい絶景である。
宅飲みでは実現するのが難しいので、お店で1人飲みを醍醐味そのものと言えるだろう。
「1人で知らないお店に立ち寄って、自分だけの穴場を見つけるとなんだか1歩大人になったような、そんな気分になれます。ちょっとでも気になったらあまり悩まずとにかく入ってみるのが1人飲みのコツです!」(20代女性)
コレ、である…!
後日誰かを連れて行き「へえ、素敵な店ですね!どうやって知ったんですか?」と聞かれた時、「ちょっとね」と思わせぶりに返したいのである。
昨今飲食店のレビューサイトが店選びに活用されるようになって、いいお店を掘り当てるために「足で稼ぐ」ということが薄れてきたように感じないだろうか?
もちろん足で稼ぐとハズレを引くこともある。
しかしそうしたハズレを引いた経験こそが、当たりを引いた時の嬉しさを倍増させるスパイスになるのだ。
さまざまな味の好みをもった人からの平均点が高いお店よりも、おのれの味覚だけを頼りに作ったお気に入りリストのほうが尊いに違いないのだ。
こうした発掘作業も、気の向くままふらりとお店に入れる1人飲みの魅力である。
まとめ
以上が、筆者を含めこれから1人飲みデビューを目指す人たちでも、1人飲みを満喫するための調査報告となる。
おさらいとして本調査の結論をまとめておく。
▼1人飲みに関する本調査の結論
・1人飲み時にスマホはマストアイテム
・1人飲みの最大のメリットは「自分のペースで飲める」
・1人飲みのお店選びの基準はカウンター席の多い居酒屋
ぜひこれを機会に1人飲みをデビューしてみてはいかがだろうか?
アンケート実施方法
アンケート実施法
・アンケート方法 インターネット上でアンケートを実施
・回答者数 253名
・調査日 2022年7月22日
・設問は単一選択式
・調査主体 【300人のホンネ】編集部
・回答者性別 男性44.2%、女性55.7%
・回答者年齢分布 20代25.3%、30代38.7%、40代22.1%、50代以上13.8%
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