あなたはお店の店員にタメ口で話している人を見て、イヤな気持ちになり本稿にたどり着いたのだろうか?
確かに筆者も旧友と久しぶりに飲んでいる場で、「生おかわりね。あとこれはもう下げて?」と店員にタメ口で話している男がいて、「昔はそんな感じじゃなかったよね?」と強い違和感を覚えたことがある。
この店員にタメ口で話すことの問題は、いまこうしている間も多くの人を混乱に陥れている。
そこで本稿では全国の288人の男女にアンケート調査をおこない、店員にタメ口問題の解決の糸口を探ることにした。
早速だが、本調査の結論はこのようになった。
▼本調査の結論
・店員にタメ口で話す人はどの年齢層でもかなり少数派
・店員にタメ口で話す友人、恋人を大多数が不快感
・タメ口ユーザーは悪意ではなく対等視
本稿を読めば、店員にタメ口で話すことが極めてマイノリティな人たちであることが理解できるだけでなく、タメ口を使う人の心理まで理解できるようになる。
他人の言動にいちいちイラつかないためにも、ぜひ最後まで一読いただきたい。
9割以上の人は店員とタメ口で話すことはない
まず前提として、初見の店員とタメ口で話す人の割合はどのくらいいるのだろうか?
そこで行きつけでもない飲食店の店員との言葉遣いについて聞いた結果が下図だ。
男女ともに7割以上の回答者が、店員と「タメ口で話すことはまったくない」と回答した。
また店員とタメ口で話すことが「あまりない」と回答した人を合わせると、女性は94.4%、男性は94.5%も占める結果になった。
このことから、馴染みでもない店員にタメ口で話す人は全体の5%程度であるということができる。
またSNS上では「タメ口おじさん」という、店員にタメ口で話す中年男性を揶揄する言葉があるが、年齢層別に見ても取り立てて中高年が高いということはなかった。
確かに年齢層が上がるに連れ、店員にタメ口で話す人の割合は若干増えるが、もっとも高い「50歳以上」でも93.0%の人はタメ口ではなく敬語を使っている。
もちろん店員にタメ口で話す人が珍しいから目立ち、それを見た者に衝撃を与えるわけだが、今回の結果を見ると、タメ口ユーザーは思っている以上に少数派であることがわかる。
では、この希少種といってもいい存在のタメ口ユーザーであるが、店員にタメ口をきいている姿を、世間の人たちはどのように受け止めているのだろうか?
店員にタメ口で話す人には7割超が不快感
結論からいえば、店員にタメ口で話す友人や恋人の姿に不快感を覚える人は8割近くも占めた。
店員にタメ口で話しかけている他人の姿を見るのは、圧倒的に不評ということになる。
まず上の飲食店の店員にタメ口で話す「友人・知人」に対して、「やや不快」、「かなり不快」と回答したのは、女性79.3%、男性75.2%だった。
一方で、店員にタメ口で話す友人・知人に「かなり好感できる」「やや好感できる」と回答したのは、わずか女性1.7%、男性1.8%に止まった。
これが一緒に同席している「恋人・配偶者」が店員にタメ口をきいている姿になると、「やや不快」、「かなり不快」に感じる人は、女性84.9%、男性78.9%までさらに上昇する。
デート中に立ち寄ったお店の店員への対応は、敬語や丁寧語で話すのが圧倒的に無難である。
ではなぜ店員にタメ口で話す人は、ここまで大多数から嫌われるのだろうか?
回答者の声を紹介すると、このようなものが目立った。
「TPOをわきまえておらず無神経でみっともない」(58歳男性、かなり不快を選択)
「人を見下しているように見えるから」(25歳女性、やや不快を選択)
「初対面の人に適した言動や行動ができないわけで、人間性を疑ってしまう」(39歳男性、かなり不快を選択)
「客の立場とはいえ、初対面の相手にタメ口でしゃべる人は常識がないなと思ってしまいます」(46歳女性、かなり不快を選択)
この馴染みでもない店員にタメ口で話す人への不快感の根っこには、「店員側は接客マニュアルとしてタメ口で対応できない」という不公平感があるからと考えられる。
実際行きつけの居酒屋で、馴染みの店長とお互いにタメ口で軽口を言い合ってる姿に、不快感を覚える人は少ないだろう。
また仮に初見であっても、例えばおばちゃんが切り盛りするレトロな定食屋で、店員であるおばちゃんが「すぐ鮭が焼けるから、もうちょっと待ってねー」とタメ口をきいてきたり、そのおばちゃんに対して客が「おばちゃん、お水おかわり!」とタメ口をきいていても不快感はない。
なぜなら、そこに不公平感はないからだ。
つまりお店の雰囲気や周囲の状況を見て、タメ口が使えないことがわかりきっている店員に対して、一方的にタメ口を使うことの不公平さ。
この無抵抗の者をなぶるかのような一方的な構図が、不快感の正体だろう。
少数派のタメ口に好感できる人は「フレンドリーさ」を好感している
では一方で、店員にタメ口で話している友人や恋人の姿に好感を覚える1%前後のタメ口肯定派は、どういう理由から好感しているのだろうか?
当たり前ではあるが、この友人や恋人がタメ口を使っている姿を好感する人たちは、自身も店員に対してタメ口を使う層とおおむね重なっていた。
ではそれは一体どういう理由からなのだろうか?
結論からいえば、このような声がタメ口肯定派では主流だった。
「アメリカなど海外では非常にフレンドリーな接し方で、客はもちろんですが店員も客に対しため口で会話を交わします、敬語は日本の文化だとか礼儀作法として常識だと言う日本人が非常に多いですが、私からすると飲食店で食事をする際には楽しい時間を過ごしたいので、店員とはため口でフレンドリーに接したほうが愉快なため友人や知人が店員にため口で会話していたらフレンドリーな人間で好感が持てます」(48歳男性)
「ナチュラルな感じで店員と距離を近づけようとしている雰囲気なら、好感がもてます」(56歳女性)
「敬語は固苦しい感じがして、しんどいから」(48歳女性)
つまりタメ口肯定派の人たちは、なにも店員を見下しているわけではなく、あくまで対等に親密さを込めてタメ口を使っているというわけだ。
言われてみれば、敬語を使って店員と距離感を置く話し方と、店員がタメ口を使うことを認めたうえで自身もタメ口で話すことの、どちらが本当に店員との関係性を対等視しているのか?と問われると、おそらく後者だ。
あくまで店員に敬語で話す人は「店員は敬いあうべき相手」と考えているのに対し、店員にタメ口を使う人は「店員は対等であるべき相手」と考えている。
ところが前者が絶対的な正義かと言われると、微妙なラインだ。
というのも店員に「私も敬っているのだから、私を適当に扱ってくれるな」と求めているわけで、ある意味店員により大きな精神的負担をかけているとも見ることもできる。
またこれが行き過ぎると「お客様は神様」という、法律を無視した信仰のようなものにまで発展し、店側に過剰なサービスを求めるのはお客である私たちの当然の権利だ、と言わんばかりのカスハラに発展する危険性まで内包している。
ただ一方で日本の習慣・慣例から「店員は敬いあうべき相手」と考える人が圧倒的マジョリティのため、「店員と対等」という見方は違和感を感じる、というのも事実だろう。
少なくとも、店員にタメ口を使っているという事実だけを見て「店員を見下している」と断罪することはできない。
結局は言い方や言葉遣い、態度などを総合的に勘案して「見下しているのか?対等視しているのか?」をジャッジする必要がありそうだ。
状況がどうであれ店員にタメ口の不快感は根強い
ここまでは行きつけでもないお店の店員とタメ口を使っていることへの不快感を見てきた。
では、今度は逆にどのような状況なら店員にタメ口を使っていても違和感がないのか?について見ていきたい。
結論から先に言ってしまうと、どんな状況であっても店員にタメ口を使っていることへの不快感は根深いことがわかった。
10回以上来店していても6割はタメ口に不快感
まずは「何回くらい来店してれば、その店の店員とタメ口でも問題ないのか?」を探ることにした。
結果は下図で、何回来店していても違和感を覚える人が最多の43.1%となった。
一方で、「5~9回」(18.4%)、「10回以上」(19.4%)を合わせると、37.8%になるので、来店回数が増えてくると店員にタメ口を使っても問題ないと考える人が増えてくるという面も見られる。
つまり何回来店していてもタメ口はダメ派と、来店数が多ければOK派で割れる結果となった。
ただ割合としては、何回来店していてもダメ派が若干上回ったので、来店回数いかんに関わらず敬語を使っておくべきと考える人が最多となった。
店員と何歳離れていても半数はタメ口に不快感
次に気になるのは「店員との年齢差」だ。
ただし、ここでいう年齢差はお店でお互いに「何歳ですか?」と年齢を確認しあうことはほぼないので、あくまで自身と店員との見た目上のざっくりした年齢差という意味合いに考えてほしい。
結果は「店員と何歳差であってもタメ口は違和感を覚える」という回答者が51.7%の最多となった。
店員との年齢差が何歳であれ、初対面の相手なら敬語を使うべきと考える人が多いことがわかる。
一方で面白いのが「同い年くらいならタメ口でもOK」と考える人が次いで多く、19.8%いることだ。
確かに同級生や同期の職場仲間にバリバリの敬語を使うと、ものすごく他人行儀な感じがして「あなたとは関わりたくありません」レベルの冷たい印象を与えてしまうこともある。
その延長上に、同い年くらいの店員ならタメ口でもいいという判断が生まれることになる。
あくまで2割程度の割合なので少数派ではあるが、これも「同い年なんだから、敬い合うよりも対等であるべきだ」という対等路線の思考が見られる。
自分が店員なら不快感はやや劣る
最後にもし自分が店員だったら、タメ口を使ってくる客は不快なのか?を問うた。
結果は、「やや不快」(34.4%)、「かなり不快」(29.2%)のあわせて、63.6%が不快感を覚える結果となった。
ただしこの不快に思う人たちは、自分が客側の立場だったときよりも、若干減少している。
自身が客側だったときは、8割近くいた不快に感じる人も、店員側になると6割まで減少する。
これは不思議な感じもするが、一方で多くの人の感覚に沿うものでもあるのではないだろうか?
筆者は幼少の頃からの習慣で、ほぼ無意識に店員に敬語を使って話している。
だがコンビニのバイトをしていたとき、近所のおじさんやおばさんにタメ口で話しかけられても、特に違和感を感じることなく「そういうもの」として受け入れていた。
自分が客としてタメ口を使うのは気持ち悪いが、自分が店員としてタメ口を使われるのは「なんとも思わない」(35.1%)のである。
ただやはり不快感を大なり小なり感じる人のほうが多いわけで、この店員にタメ口問題の根深さを感じられる結果となった。
まとめ
以上が店員にタメ口で話すことの問題に関して調査してきた結果だ。
おさらいがてら本調査の結論をまとめると、このようなものになる。
▼本調査の結論
・店員にタメ口で話す人はどの年齢層でもかなり少数派
・店員にタメ口で話す友人、恋人を大多数が不快感
・タメ口ユーザーは悪意ではなく対等視
あなたがもし常識を逸脱した人間と見られたくないのであれば、どんな状況下にあっても店員とは敬語で話しておくのが無難である。
ただし、店員にタメ口を使っている人がいてもそれは悪意ではない可能性も高いので、「タメ口即悪」と反応するのはいささか早計なのかもしれない。
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