幽体離脱というと、最近では明晰夢(自分の意のままにできる夢)だという論調がよく聞かれるようになった。
ただすべての幽体離脱が明晰夢として片づけられるのか?は誰にもわからない。
いずれにせよ、幽体離脱は多くの人にとって「人生で一度は経験してみたいことリスト」に入ってくるだろう。
しかし、である。
今回、幽体離脱を経験したことがある全国の男女30名に対して調査を行ったが、幽体離脱には未経験者の私たちが見落としている重要な側面があることが判明した。
本稿では、幽体離脱経験者から得た回答をもとに幽体離脱の成功率を上げるコツを紹介しつつ、実際に幽体離脱する前に知っておくべきことをレポートしていく。
いい意味でも悪い意味でも、本稿を読めばこれまでの幽体離脱に対するイメージが変わるはずだ。
幽体離脱したことがある全国の男女30名からの回答を単純集計。インターネットアンケート。実施日2023年4月28日。
ちなみに今回調査した幽体離脱経験者の7割以上が「1回のみ」の経験者だった。
何度も幽体離脱をしている人は違った見方になるかもしれないが、この読者の大半の人は幽体離脱の未経験者かビギナーであるはずなので、より読者に近い回答者と考えてもらって差し支えない。
幽体離脱を意図的に起こすのは大半の人にとって難しい
まず最初に幽体離脱に関して、知っておくべき前提となる知識を見ていただきたい。
というのも大半の人にとって、幽体離脱は自由気ままに出たり入ったりできるような類のものではないからだ。
幽体離脱経験者の実に96.7%もの人が「意図的に幽体離脱をすることはできない」と回答している。
また「おおむね意図した通りに幽体離脱ができる」と回答した人は0.0%であった。
幽体離脱の経験者でさえ、この割合である。
いままでに経験したことがない人が、幽体離脱をするハードルはかなり高いと言わざるをえない。
一方で3.3%のごく少ない回答者は、失敗することはあれど「ある程度意図的に幽体離脱をすることができる」と回答している。
この3.3%がいる限り、あなたが幽体離脱ができるようになる一縷の望みが残っている。
ただしそれにはかなり高い壁を超えなければならないことは再度強調しておく。
相応の覚悟をもって、以下を読み進めてほしい。
経験者から割り出した幽体離脱のコツ
次に実際に幽体離脱を経験したことがある回答者から、幽体離脱したときの状況を聞き出し、そこからコツとなるヒントを探ってみることにした。
ところでなぜ状況に着目したかというと、幽体離脱関連の情報を洗うと、まず目にするのが「ローリング法」である。
ローリング法のおおまかな流れはこうだ。
▼ローリング法の流れ
1.布団に横になりリラックスする
2.眠りには落ち切らず、ギリギリ意識がある状態を保つ
3.耳鳴りと金縛り状態になる
4.勢いよく寝返りをうつ
5.幽体離脱完了!
経験者側もなんとかコツを伝えようとしてくれているのはうかがえるが、未経験の我々にとっては、まずステップ2でがっつり寝落ちして挫折することになる。
そもそも「眠ってはいないが、眠っているかのような全身の力が抜けた状態」というのが感覚的にとらえにくいのだ。
実際に過去に数十回以上幽体離脱しているという男性の言葉を借りればこうなる。
おわかりいただけただろうか…?
もしかするとこのあたりは、バク転できる人に言葉でコツを説明してくれと頼んでいるのと同じなのかもしれない。
「いい感じに後ろに飛ぶイメージで…」などと教えてくれるだろうが、聞いているこちら側は「そ、そうなんだ…」としか言いようがないアレである。
このローリング法は幽体離脱界隈では有名なテクニックであるらしいが、未経験の我々にとっては再現するのが難しいと言わざるを得ない。
だが経験者が幽体離脱した状況と同じ状況に自らを置けば、このローリング法のステップを進む成功率が少しでも上がると考えられる。
コツは「クタクタに疲れる」と「寝付けない状態」の合わせ技
結論から言えば、幽体離脱しやすい状態を作り出すコツはクタクタになるまでハードな運動を行い、厚着をして布団をかぶり横になることだ。
経験者が幽体離脱したときの状況をまとめたものが、下図だ。
もっとも多かったのは「特に原因と考えられるものはなく、突然幽体離脱した」という46.7%だが、この回答から得られるものは何もない。
一方で、「ものすごく疲れていた」という26.7%には再現性があるように思われる。
実際の回答者の言葉を引くと、このような状況だ。
「とても疲れていてストレスが溜まっている時、気付けば自分を見ていたことがあった」(38際、女性)
「凄く疲れていた時に幽体離脱が起こりました。急に凄く体が軽くなりました」(26歳、男性)
「とても疲れた日に起こったんですが、気がついたら自分が天井にいて寝てる自分を上から見下ろしていることがありました」(35歳、男性)
幽体離脱しやすいひとつの状況として、あえてハードな運動をおこない、肉体をかなり疲労させるということが考えられる。
実際に多くの人がクタクタに疲れているのに、なぜかなかなか眠りに入れない経験をしたことがあるのではないだろうか?
ローリング法のSTEP2である「変性意識状態(目は覚めているが普段とは異なる意識をもった状態のこと)」に入りやすくなる状況となりそうだ。
また6.7%の「なかなか寝付けない」という状況も、人為的に作り出すことができそうだ。
実際の経験者の言葉は、このような感じである。
「寝苦しく目が覚めると、自分の体を見下げてました」(50歳、男性)
「夜布団に入って、そこからなかなか寝付けないときなど、金縛りのような状態になり、体は動かないのに意識はあるような状態になります。しばらくすると寝ている自分を俯瞰でみているような状態になります」(36歳、男性)
この寝付けない状況を作るポイントは、体温が下がらない状態にすることだと考えられる。
つまり厚着をしたり、寝具に毛布を追加したりすることだ。
というのも、睡眠の第一波は体内の深部温度が急激に下がることで起こるとされている。
つまりその逆で、厚着するなどでこの体内の温度がうまく下がらなければ、「寝付けない」という状態をある程度人為的に作ることができそうだ。
このように、経験者たちの声から考察するに、
・クタクタに疲れる
・厚着をして寝付きを悪くする
というあわせ技で、ローリング法がよりしやすくなる状況を作ることが、幽体離脱の成功率を高めるコツと言えそうだ。
霊感の有無はあまり関係ない
ところで幽体離脱を、心霊現象としてとらえる見方もある。
仮に心霊現象であるならば、霊感の有無が大きく関わってきそうなので、そのあたりを経験者に聞いてみた結果が下図である。
幽体離脱を経験した人のうち、「霊感がない」と回答した人が66.7%を占めた。
つまり、幽体離脱は霊感がなくともできることがわかる。
一方で「霊感がある」と回答した人は33.3%だったが、あくまで体感だが全人口の3割が霊感があるというのはいささか多すぎる気がする。
おおむね霊感のある人がクラスで1人か2人くらいと考えると、3~6%程度の割合になるはずだからだ。
このことから推測にすぎないが、霊感がある人は幽体離脱をしやすいという傾向があるのかもしれない。
いずれにしても霊感の有無に関わらず、幽体離脱は可能であるということができそうだ。
幽体離脱は恐怖体験の割に得るものは少ない
ところで話は変わるが、あなたはなぜ幽体離脱がしたいのだろうか?
もっというと、幽体離脱をして一体なにがしたいのだろうか?
大半の人が純粋な好奇心という理由からだろうが、もし幽体離脱後に透明人間のような状態になることを期待しているのなら、それは幽体離脱によっては実現できない公算が高い。
というのも、今回の幽体離脱経験者の声に耳を傾けていると、「幽体離脱って空が飛べたりして楽しそう」という牧歌的なイメージとは異なる一面が見えてきた。
そこで本稿の最後として、幽体離脱の実態についてレポートしておこうと思う。
幽体離脱経験者の6割が「恐怖体験」と認識している
まず幽体離脱をしたことがある経験者の60.0%が、自身の幽体離脱してしまった経験を「恐怖体験」として位置づけていることを見落としてはならない。
「幽体離脱をもし、頻繁にできるようになってしまったら、いつか元の体に戻れなくなってしまうのではないかと思います。また幽体離脱をして以降、またいつかなるのかなと思うと嬉しい反面怖さがあり、寝るのが少し怖くなるようになりました」(34歳、女性)
「戻れるのか不安になります」(50歳、男性)
「めちゃくちゃ怖いことです。幽体離脱をしたときは嬉しさより断然恐怖が勝りました。このまま戻れなかったらどうしようという恐怖に襲われるのが良くないです」(35歳、女性)
幽体離脱体験の恐いところは、「そのまま戻れなくなる=死」の可能性があり、もしその仮定が正しいなら、肉体に戻らないとどうなってしまうのか?を知る人がこの世には生存していないという点だ。
実際に幽体離脱をして、宙に浮く感覚を味わえたことを楽しいと感じた人もいるが、それはあくまで10.0%の人にしか過ぎなかった。
大多数の人は、恐怖体験であったり、恐怖とまではいかないまでも気味の悪い経験という印象を語っている。
さらにいうと、36.7%もの経験者は、幽体離脱を「なにもいいことがない経験」と明言している。
「はっきり言っていいことはありません。怖いので二度とごめんです」(33歳、男性)
「私は今まで数回そういう経験がありますが、特に良かった事はありませんでした」(41歳、女性)
強いていえば、幽体離脱をするメリットは「飲み会のときのネタになる」程度のものであった。
幽体離脱をしても現実には関与できない
さらに幽体離脱時の気になることとして、どの程度現実に関与できるか?がある。
もし現実に関与できるのであれば、他人には見えない状態で物を動かしたり、友人の様子をちょっと覗きに行って「昨日の晩飯はUberで頼んだ餃子ライスと生ビールだったろ?」などと驚かせることができることになる。
もちろんもっとえげつない邪悪なこともできる。
ところが、幽体離脱時に現実に関与することは、相当厳しいことがわかる結果となった。
実に93.3%もの経験者が、幽体離脱時の現実への関与を否定している。
さらに言うと、経験者の話を総合的に勘案すると、幽体離脱体験のマジョリティというのは、単に「ふわふわと宙に浮いている状態で寝ている自分の姿を見下ろしている」だけに過ぎない。
それに伴う感覚がリアルなため、気味まで悪く、経験者は口々に「狙ってやるようなものではない」と語る。
果たして何度も失敗を繰り返し、多大な労力をかけてまで経験すべきことなのか、いよいよ疑問になってくるのは筆者だけだろうか?
もちろんそれでもトライしたいという方はチャレンジしてみればいいと思うが、苦労して幽体離脱した先に得られるものが「たったのこれだけ…?」と失望しないためにも、ぜひとも事前に知っておいてほしい情報である。
まとめ
以上が、幽体離脱のコツおよび経験者の話から得られた知見である。
もしかすると本稿を読んで、幽体離脱に対する期待感がすっかり萎んでしまった方もいるかもしれない。
ただ総じて幽体離脱時の体験談は、回答者ごとにバラバラになりそうなものだが、実際はかなり類似しているというのは興味深いことだ。
なぜここまで類似するのか?までは今回の調査ではわからないが、幽体離脱は作り話などではなく、決して少なくない人が経験する現象として存在するものと改めて認識させられた。
それが明晰夢であっても、脳が記憶処理上に見せる映像であっても、心霊現象であっても、錯覚であっても、幽体離脱は今日あなたにも起こる可能性がある。
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