「自身が使う一人称はどれにするべきか？」
この問題を真剣に考えたことがある人はあまり多くないかもしれないが、かっこいい一人称やかわいい一人称が存在するのであれば、これを使わない手はない。
英語なら「I（アイ）」の一語しかないところを、日本語にはとんでもない量の一人称が存在する。
我々は本当にベストな一人称を選択できているのだろうか？
そこで全国の男性54人、女性121人に、男性のかっこいい一人称と女性のかわいい一人称についてアンケート調査をおこなった。
今回の調査の結論からお伝えすると、このようなものになる。
▼本調査の結論
・男性のもっとも女性受けする一人称は「オレ」
・女性のもっとも男性受けする一人称は「わたし」
・王道の一人称を使うことが、もっとも異性受けがいい
本稿では、2024年時点で覇権をとっている一人称だけでなく、その一人称を用いる人物がどのようなイメージで見られるか？までを追った。
それではじっくり調査結果をご覧いただきたい。
女性から見た男性のカッコいい「一人称」は「オレ」
最初に、女性目線から見た男性のカッコいい一人称から見ていこう。
結論からいえば、女性からもっとも人気のある男性の一人称は僅差で「オレ」（33.1％）となった。
実際の女性回答者の声を紹介すると、一人称が「オレ」の男性にはこのようなイメージがあった。
「オレが一番飾らず、かつ自信があるように響く一人称だからです」（34歳女性）
「一番男らしくて大人っぽさもあるから、大人の男性っぽくてかっこいい」（40歳女性）
「わたしや僕というと丁寧で好感できるけど、少しよそよそしい感じがする。オレの方が心を許してくれているイメージが強いので」（46歳女性）
確かに幼稚園くらいの男の子が「オレ」という一人称を用いている印象は薄く、また女性に「僕っ娘」は少数いても「オレっ娘」になると、そうそうお目にかかれない。
また仲のいい男性間だと「オレ・おまえ」と人称をお互いに使いあうことが多いため、確かに「オレ」という人称には距離の近さを感じさせるものがある。
「オレ」支持派の女性は、男性に「大人の男らしさ」を求める女性が中心となっていることがうかがえる。
一方で、「オレ」に対して少し粗野な印象をもったり、威圧感を感じる女性は、僅差で2位にあがった「僕」（31.4％）の支持に回った。
「誠実な感じがしてかっこいい」（30歳女性）
「僕だとカジュアルだけど優しい感じで、少し上品な感じもするのでかっこいいなと思ったからです」（20歳女性）
このように「僕」という一人称を使う男性に、女性は誠実さや品のよさを感じることが多いようだ。
「わたし」ほど距離を感じさせないが、「オレ」ほどもグイグイ迫ってこない。
「僕」という人称は、そうしたバランスのよさを好感する女性が多かった。
男性から見た男性のカッコいい一人称は「わたし」
女性から見たかっこいい男性の一人称は、「オレ」と「僕」が人気を二分したが、では男性目線での男性のかっこいい一人称はどうだろうか？
意外にも同性である男性からもっともかっこいいと思われる一人称は、「わたし」だった。
実際の回答者の声を紹介すると、「わたし」が一人称の男性にはこのようなイメージがあった。
「大人として教養や社会経験豊富な常識人で、その方の人間性がある程度、信頼できそうだから。(特に初対面の時)」（51歳男性）
「落ち着いた大人のイメージがあるからです。公の場などで自然と使用できたらかっこいいと思います」（39歳男性）
このように男性回答者は職場やフォーマルな場での一人称を念頭において回答する人が多かった。
確かに会議等の場で「今回の事案に関してオレの所見から述べますに～」などと始まったシーンを想像すると、かなりの違和感がある。
また目上の人に対しても、後輩や部下に使っても丁寧な印象を与えられるという汎用性の高さも「わたし」支持者に多く見られた。
このように「わたし」にはやや差をつけられたものの、次いで「オレ」（25.9％）という一人称が男性からも支持を集めた。
「「オレ」という一人称はシンプルかつ力強く、男性らしさを感じさせる一人称だと思います。普段の会話の中でも使いやすく、親しい間柄で特に自然に感じます。また、「オレ」は余計な気負いや形式ばった印象がなく、フランクでありながらも自己主張をしっかりできる点が魅力です。特に「俺」を使うことで、自分自身のありのままのスタイルを表現できると感じています」（45歳、男性）
「へりくだるでもなく、謙譲するわけでもなく、芯があってカッコイイと思う」（34歳男性）
平成の時代に「オレ流」という語がブームになったが、相手がだれであっても己を貫き通す芯の強さに一種の憧憬を覚える男性も少なくない。
以上のことを総合的に見ると、男性のかっこいい一人称はプライベートでは「オレ」、フォーマルな場では「わたし」を適切に使い分けられる男、ということになる。
では次の章からは、女性が使う一人称に目を向けていきたい。
つまり女性が使うとかわいい一人称はなにか？というテーマである。
男性から見た女性のかわいい「一人称」は「わたし」
まずは男性から見た、女性が使うともっともかわいいと思う一人称から見ていこう。
結論からいくと、「わたし」（42.6％）が圧倒的な差をつけ、1位にランクインした。
なんとも無難な結果にはなってしまったが、一人称に「わたし」を使う女性に男性はどのような印象を抱くのだろうか？
「社会性があり場をわきまえた話ができそうで、心が美しい中にかわいさがあると思ったから」（35歳男性）
「感情に乱れがない感じがする。言葉遣いがしっかりしている人でかわいいと思うから」（41歳男性）
今回の男性回答者は仕事中に回答でもしているのか、とにかく職場など公のシーンを念頭において回答する人が多かった。
ただ確かに一人称に「わたし」を使う女性は、オーソドックスだが自立してしっかりしている印象があり、万人受けする一人称であることは間違いない。
「わたし」に次いで多かった、男性が思うかわいい一人称が意外にも「うち」（18.5％）だった。
この「うち」という一人称に対して、このような印象をもつ男性が多かった。
「うる星やつらのラムちゃんが使っていて、かわいいいなと思ったからです」（22歳男性）
「あまり聞かない一人称で、方言っぽくてかわいいと思うから」（30歳男性）
実際に「うち」は西日本の女性が使う一人称で、筆者は関西出身だがクラスや職場に必ず何人かは「うち」を一人称にしている女性がいた。
関西出身の筆者の目線からすると、少し古風であったりコテコテな印象を受けるが、この受け取り方も男性によってかなり割れそうだ。
ちなみに関西では年配の女性になると、この「うち」は「わて」という一人称になったりもするが、わては今回かわいい一人称としてランクインしなかった。
また男女差でいうと、着目したいのは「自分の下の名前」（16.7％）だ。
つまり名前が「あおい」なら、「あおいはね、今日～」と話す女性のことだ。
「自分の名前を一人称で使っている女性はなぜかかわいく思います。うまく説明できませんが、甘えているとかあざとく感じることがあるので、かわいがりたくなることが理由だと思います」（25歳男性）
「自分の名前を言ってるのがあざとくて、無難でいいと思った。ぶりっ子に多いイメージ」（19歳男性）
このように男性には、下の名前を一人称にしている女性の「狙っている」感を、あえて好感する声が多かった。
女性から見た女性のかわいい一人称も「わたし」
一方で、女性目線から見た女性のかわいい「一人称」はどうだろうか？
女性目線でも、男性同様に「わたし」（52.9%）が圧倒的な1位になった。
また女性からみた「わたし」を一人称にしている女性の印象には、このようなものが多かった。
「ちゃんとしていて、真面目で、ついかわいがりたいと思ってしまうかわいさを感じる」（34歳女性）
「普通に生きていれば、自然と行き着く一人称だと思う」（38歳女性）
「オンでもオフでも使えて汎用性が高いからです」（26歳女性）
確かに男性のように公私で一人称を使い分ける必要がない「わたし」には、一生の間使い続ける一人称として抜群の安定感がある。
また中には「わたし」以外の一人称を使っている女性は全員どこか変だ、という過激な意見まで散見されたが、当事者である女性からすれば「わたし」一択状態に考える女性も少なくない。
一方で「わたし」とかなり似ているものの、似て非なるものである「あたし」（14.9％）は、大きく溝を空けられる2位に甘んじた。
「文字にする分には「私」でもいいと思いますが、話し言葉だと「あたし」と言っているほうが柔らかくかわいいイメージがあります」（39歳女性）
「「わたし」と言おうとして言えていないような印象があるので、一番かわいい響きの一人称だと思います」（34歳女性）
例は古いが、筆者が「あたし」と自称する女性を初めて認識したのはJUDY AND MARYの各楽曲の歌詞だった。
ほかにもaikoなど歌詞に「あたし」を使う女性アーティストは多く、「あたし」にはそうした影響もあってか、ポップさやかわいらしさというイメージがついているように思える。
さてここまでは、男性・女性が使う一人称としてポジティブな印象を与えるものを見てきた。
ただし、これらの結果にベタな印象をもった方も少なくないはずだ。
裏を返せば、ベタで王道な一人称こそかっこいい・かわいいという結論になる。
そこで次章では、多数派の支持は得られなかったものの、キャラ付けに役立ちそうな一人称についても目を向けていこう。
そのほかの男性が使う一人称へのイメージ調査
まずは男性が使うあまり一般的ではないが、かっこいい一人称から見ていこう。
下図は女性回答者にとりあえずかっこいいと思うものをすべて選択してもらった結果で、下位の一人称に注目いただきたい。
まず4位にランクインした「自分」という一人称だ。
古くは高倉健さんの「自分、不器用ですから」や、最近では主に体育会系の男性が好んで使う一人称として定着している。
この「自分」という一人称に女性は、硬派、我が強い、いつまでも心を開かなさそうなどの賛否両論状態だが、職場等で使っても明らか変というわけではない使用のしやすさはある。
またマジョリティではないが、一部の女性から熱狂的な支持を受けた一人称が「わし」である。
「現在どハマりしているアーティストが自分の事をそう言ってるから」（57歳女性）
中国地方等で「わし」は、男性が使う比較的一般的な一人称であることもあり、もっとも自然体な一人称と評する女性もいた。
そうした一般性はないが、完全に狙いにいくのであれば、「余・予」も、チャレンジしてみる価値はある。
「大層な人物を想定させられ、一度会ってみたいと思っているからです」（26歳女性）
「余の顔を見忘れたか」と上様が登場しそうな雰囲気があるが、明治・大正期の文豪の日記を見ると、おおむねこの「余・予」が使われている。
「この前の飲み会代、まだ払ってないの誰？」
「余である」
などとLINEで返信がきたら、なにか深い考えがあって支払いをあえて遅らせていた、ということを匂わせられる威力ももっている。
そのほかの女性が使う一人称へのイメージ調査
では最後に女性が使うその他のかわいい一人称について見ておこう。
こちらも上位陣はこれまで見てきたので、下位に注目いただきたい。
まず5番目に男女双方から支持を受けたのが「僕」だった。
つまり「僕っ娘」である。
「僕をつかっているかわいい芸能人がいるから」（35歳男性）
特にアイドル界隈ではちょくちょく見かけられ、ボーイッシュ・中性的なイメージを打ち出したい女性には格好の一人称となるようだ。
ちなみにこの僕っ娘に関しては、過去に調査したことがあるので、あわせて参考にしていただきたい。
また筆者は「自分の下の名前」ではなく、「自分の名字」を一人称に使う女性とリアルで会ったことがある。
一人称もさることながら、普段やっていることが芸大で大型公共施設内にある休憩スペースの利用率を上げる研究をしていると聞いて、とんでもないインパクトを感じてしまった。
仲良くなるのは時間を要しそうではあるが、唯一無二の存在をアピールするには格好の一人称である。
まとめ
以上が、今回「男性のかっこいい一人称」と「女性のかわいい一人称」に関して調査した結果だ。
総じて、男性は「オレ」女性は「わたし」と、極めてありがちな一人称に落ち着いたところを見ると、一人称は王道の一人称を使っているのが一番かっこいい・かわいいという結論になる。
おさらいがてら本調査の結論をまとめておく。
▼本調査の結論
・男性のもっとも女性受けする一人称は「オレ」
・女性のもっとも男性受けする一人称は「わたし」
・王道の一人称を使うことが、もっとも異性受けがいい
コメント
コメント一覧 （1件）
「自分」を使用する者、またそれを良しと思う者、
彼奴らには曲者が多い説を検証いただきたい。