「買う」ものではなく、「買ってしまう」ものといえばアニメやゲームのキャラグッズではないだろうか?
2021年に矢野総研が発表した統計では、商品化権と版権をあわせたキャラクタービジネスの市場規模は2兆5000億円を超えると推計されている。
「全国民が1年間で2万円超をキャラクターグッズに使っている」と考えると相当な金額である。
そんなアニメやゲームのキャラグッズだが、一体みんなはどんなグッズを買っているのだろうか?
そこで当【300人のホンネ】編集部は、「ここ5年以内にキャラグッズを購入した男女140人にアンケート調査を実施することにした。
本調査における結論は、下記である。
▼本調査の結論
1.キャラグッズにおいても「鬼滅」旋風は健在(2022年5月時点)
2.キャラグッズへの課金合計額は「5,000円以下」が過半数も100万円超えも
3.高額になりがちなグッズ第一位は「BD・CD・イラスト集」
ではそれぞれを詳しく見ていくことにしよう。
信仰を集めるアニメランキングTOP7
まずはアニメファンたちの心をとらえて離さない、キャラグッズを購入したアニメのタイトルから見ていくことにしよう。
回答は多岐にわたり、実に66タイトルのアニメが票を得たが中でも支持率を集めたTOP7タイトルを見ることにする。
順位 | タイトル | 支持率 |
---|---|---|
1 | 鬼滅の刃 | 12.1% |
2 | 名探偵コナン | 7.1% |
3 | ポケモン | 5.7% |
4 | 呪術廻戦 | 5.0% |
5 | 夏目友人帳 | 3.6% |
5 | 東京卍リベンジャーズ | 3.6% |
7 | ウマ娘 | 2.9% |
7 | ワンピース | 2.9% |
7 | 僕のヒーローアカデミア | 2.9% |
「ここ3年以内」という条件をつけたので、「鬼滅の刃」旋風はキャラグッズにおいてもファンたちを席けんしたと言える。
ちなみに「鬼滅の刃」関連グッズでもっとも票を獲得したキャラクターは「竈門炭治郎」が最多で「竈門禰豆子」がそれに次いだ。
一方で、もはや国民的アニメといって差し支えない「名探偵コナン」が2位にランクインした背景には、このアンケート調査日と劇場版名探偵コナンの公開日がかなり接近しており、回答者の意識に昇りやすかったこともありそうだ。
ちなみに「名探偵コナン」関連グッズで支持を集めたキャラクターは「江戸川コナン」、「安室透」「赤井秀一」が同数だった。
また3位「ポケモン」や7位「ウマ娘」はゲームとクロスメディアしているタイトルだが、いずれも「キャラクター収集・育成」というゲーム性であり、キャラグッズの票が伸びやすい構造と言えるかもしれない。
信仰を集めるキャラクターは100キャラ以上に分散
先ほどのアニメタイトルでは66タイトルものアニメが挙げられたが、これがアニメキャラクターとなるとさらに支持率はバラけ、実に回答者の140人が109キャラクターのグッズを買うという乱戦状態が見られた。
見方を変えれば「キャラクターの飽和状態」とも言えそうだが、その中でも特に票を集めたキャラクターをいくつかピックアップすることにしよう。
タイトル | 支持率 |
---|---|
ニャンコ先生 | 2.9% |
竈門炭治郎 | 2.9% |
ドラえもん | 2.1% |
安室透 | 2.1% |
鬼滅の刃 | 2.1% |
江戸川コナン | 2.1% |
赤井秀一 | 2.1% |
竈門禰豆子 | 2.1% |
タイトル上位の「鬼滅の刃」と「名探偵コナン」のキャラクターが多く支持を集める一方で、「ニャンコ先生」(夏目友人帳)が「竈門炭治郎」と肩を並べているのが面白い。
また上位陣を見渡すと「ドラえもん」もランクインしていることから、「猫および猫型ロボット」はグッズ購入の課金率をあげるひとつの要因と言えるのかもしれない。
キャラグッズを買う理由は男性「応援」、女性「所有欲」
続いて我々アニメファンはなぜグッズを購入してしまうのか?の心理や理由について、調査することにした。
男女別でその理由の有意差が見られたので、ここでは男女別の結果を掲載することにする。
まず大きく見ると、グッズ購入する理由として「キャラクターや作品への応援」と「そのキャラクターを所有したいから」に二分された。
これをさらに男女別にみると、やや僅差ではあるものの、男性は「応援」(48.5%)、女性は「所有欲」(57.9%)を挙げる傾向が強かった。
「作品やキャラクターへの応援」という理由は、推し活ブームの現代においていかにもな理由と言えるが、キャラグッズの購入には単なる消費とは考えられない一面がうかがえる。
一方で、「他人との差をつけたいから」のようなSNSを通した誇示的消費は、今回の調査ではかなりマイノリティとなった。
キャラグッズで多いのは男性「鑑賞グッズ」、女性「実用グッズ」
キャラグッズを買う理由の違いと同様に、購入するグッズの品目も男女差が見られた(下図)。
市販価格が数百円で、比較的手が出しやすいキーホルダーが男女ともに最多となったのは当たり前なので取り立ててどうこうということはない。
しかしほかのキャラグッズの品目に注目したとき、男性は「ぬいぐるみ」(33.3%)や「フィギュア」(33.3%)の鑑賞用グッズが多くなったのに対し、女性は「ぬいぐるみ」(35.5%)が2位に続く一方で、「Tシャツ・パーカー」(14.0%)、「マグカップ」(12.1%)、「文具」(22.4%)と日常使いできる実用的な品目も多くなった。
対照的に男性は、そうした日常使いできるような実用的なキャラグッズはかなり低い水準にとどまっている。
完全に男性(おっさん)目線の話になってしまうが、女性が職場で使っているマグカップがさりげなくキャラグッズものだと話しかけやすいし、「ははーん。これは…!」と好感できるので個人的にアリである。
ところでここで「抱き枕」(男性0.0%、女性1.9%)というのに注目しておきたい。
「抱き枕」はそのキャラクターへの信仰心の高まりが極点に達した者のみ手にできるキャラグッズである。
このことについては詳しく後述する。
これまでに購入したキャラグッズの総額は「100万円超え」も!
キャラグッズの品目の次は、そのキャラのグッズに注ぎ込んだ合計金額について見ていくことにしよう。
多数派は「5,000円以下」の合計額におさまる男女で、男性は54.5%、女性は47.7%となった。
これは以前おこなった「投げ銭リスナーの心理調査」と似ており、少額のファン層が過半数を占める状況が一致している。
ところが、である。
やはり目を奪われてしまうのは高額課金者のほうではないだろうか?
本調査においても、キャラグッズに「100,001円以上」を注ぎ込んだ割合が、男性15.2%、女性14.0%存在し、また最高金額は「100万円」に達した。
もう一度言う。
1キャラクターに注ぎ込んだ合計金額の最高額は「100万円」である。
500円のキーホルダーを買う人が2,000人集まってようやく到達する水準を、たった1人の力で買い上げているのである。
推しが尊いというが、ここまでくれば尊いを通り越し、「信心」と言わずしてなんと呼ぼう。
キャラグッズ愛に年齢の垣根ナシ
アニメのキャラグッズといえば中高生がスクールバッグにつけているようなイメージがあるかもしれないが、実はそうではない。
上記の合計課金額を年齢層別にクロス集計しなおしたのが下表だ。
年齢層 | 割合 |
---|---|
18~19歳 | ¥11,167 |
20~24歳 | ¥67,071 |
25~29歳 | ¥29,649 |
30~34歳 | ¥43,606 |
35~39歳 | ¥39,825 |
40~44歳 | ¥4,667 |
45~49歳 | ¥29,045 |
50歳以上 | ¥48,600 |
「20~24歳」の層が67,000円超と最高になる一方で、全体を見ると「40~44歳」の層を例外とすれば、どの年齢層も一定の課金額を計上していることがわかる。
アニメのキャラグッズを購入する回答者に年齢の垣根はなく、「50歳以上」でも48,600円と世代中2位の合計金額を計上している。
キャラグッズが注目されだしたのはここ最近の話なのかもしれないが、もっと俯瞰してみると浮世絵(イラスト集)や仏像(フィギュア?)もある意味キャラグッズの一種とも言える。
日本人の特性として、こうしたグッズを好むという一面があるのかもしれない。
話は少し逸れたが、次章ではもう少しこの課金額については掘り下げることにする。
もっとも高額だったキャラグッズは78万円!
先ほどは1キャラクターに注ぎ込んだ合計金額だったが、今度は1グッズあたりの最高金額を聞いてみることにした。
こちらも「5,000円以下」の回答者が50.0%と多数派になったが、一方で「100,001円以上」のグッズを購入した回答者は2.9%いた。
さらにいうと、今回の調査で最高額だったグッズは78万円である。
78万円のキャラグッズとは、一体どんなグッズなのか?という疑問も生じるはずだ。
この最高額のキャラグッズを購入した30代女性の回答者は、「仮面ライダー龍騎 大人向け変身ベルトと召喚アイテム」(52,800円)を全種類コンプリートしている。
グッズを制作したほうもかなり思い切ったとは思うが、買い手のほうも真の意味で「オトナが本気を出す」ということは、こういうことなのかもしれない。
いずれにせよ、気持ちのいいお金の使い方である。
上級者向け?高額になりがちなキャラグッズ
ここで気になるのは、どういうキャラグッズを購入すると合計課金額があがるのか?という問題である。
そこで回答をもとにキャラグッズの品目別に購入金額の平均を出してみることにした。
意外にも、もっとも平均額が高かったのは「BD・CD・イラスト集」の平均27,875円だ。
この原因として考えられるのは、たとえばBD1枚の単価は5,000円前後だが、全巻コンプリートすると11~12巻になるので、55,000円~60,000円の金額に跳ね上がる。
CDやイラスト集も同様に、単価はさほどでも全集がある場合は「コンプ」すると同様の結果になる、というわけだ。
続いて高額な平均額になったのは「抱き枕」(23,250円)だった。
――抱き枕である。
ちなみに本調査における購入者は2人で、両者とも女性であった。
次いで「フィギュア」(15,157円)、「おもちゃ」(13,429円)が続くが、ここでいうおもちゃとはパズルやカードのようなものを指す。
グッズの品目を見ていると、購入平均額の高まりとともにそのアニメやキャラクターへの信仰心の高まりも感じられる並びになったのではないだろうか。
まとめ
これまでの調査報告でみんなが購入しているキャラグッズの全体像がおぼろげながら見えたのではないだろうか。
あくまでキャラグッズは「大多数のライト層と、ごく一部の重課金層」という構造をもっており、これは多くの推しカルチャーの消費と類似している。
改めて、本調査の結論を再掲しておく。
▼本調査の結論
1.キャラグッズにおいても「鬼滅」旋風は健在(2022年5月時点)
2.キャラグッズへの課金合計額は「5,000円以下」が過半数も100万円超えも
3.高額になりがちなグッズ第一位は「BD・CD・イラスト集」
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