「シチューでごはんが食べられるか?」
この「シチュー」を正確にいうとクリームシチューのことで、「ごはん」というのはもちろんライス(白米)のことだ。
この問題は数々の家庭やカップル間、友人観で論争を引き起こし続けている。
そこで本稿では、全国の男女300人を対象にアンケート調査をおこない、「シチューでごはん」はアリ派・ナシ派の状況を探ることにした。
早速だが、今回調査した結論はこのようになる。
▼本調査の結論
・シチューにごはんを合わせるのはアリ派が約65%で上回る
・アリ派の主な意見は「ドリアやカレーライスと同じ」
・ナシ派の主な意見は多様だが、大半は「食わず嫌い」
あなたがアリ派であろうとナシ派であろうと、本稿を読めばあなたと反対の立場の人はシチューをどのように位置づけ、なぜその立場をとっているのかが理解できるようになる。
それでは早速、調査結果を詳しくみていくことにしよう。
クリームシチューにごはんを合わせるのは約65%の人がアリ
まず結論からいうと、全体では63.7%の男女がクリームシチューにごはんを合わせることをアリと回答している。
一方でナシ派は35%前後に止まり、シチューとごはんは合うと見るアリ派が優勢となった。
またこの結果を男女別に見ても、このアリ派の割合はほとんど変わらず、アリ派とナシ派の割合はおおむね「65%vs35%」と考えて間違いはない。
ナシ派の筆者からすればショッキングな結果ではあるが、2024年現在の日本のクリームシチューとごはんの情勢は、このような状況になっている。
もちろん食に関する嗜好の話なので、アリ派・ナシ派のどちらが優れているなどと優劣がつくものではない。
だがこの結果を受けて、もしクリームシチューとごはんが食卓に並んでいても、ナシ派の人はうろたえてはいけない。
むしろクリームシチューとごはんが並んでいることのほうが自然という事実を、まずは受け入れる必要がある。
シチューにごはんは「アリ派」・「ナシ派」の意見
続いてシチューにごはんを合わせることへのアリ派・ナシ派双方の声に耳を傾けてみよう。
というのも、もっぱらアリ派とナシ派の議論は「クリームシチューにごはんは合うでしょ/合わないでしょ」という平行線になりがちで、それ以上の進展はなかなか見込めない。
これではこの「シチューでごはんが食えるか論争」に、解決を見る日はやってこない。
そこでこの機会に、アリ派・ナシ派双方の意見を深掘りし、相互理解につながるポイントを探してみようというわけだ。
シチューにごはんは「アリ派」の意見
まずはクリームシチューにごはんを合わせることをアリとする人たちの意見をまとめると、下表になる。
▼シチューにごはんアリ派の意見
ごはんと合う | 38.1% |
---|---|
ドリアと一緒 | 24.3% |
カレーライスと同じ | 16.9% |
幼いころからの習慣 | 13.2% |
手間が省ける | 5.3% |
食べやすい | 2.1% |
まずもっとも多かった意見は、「シチューはごはんと合うから」(38.1%)というものだが、これは先にも触れたように平行線の議論にしかならないので詳細は割愛する。
注目したいのは、それに次いで多かった「ドリアと一緒」(24.3%)、「カレーライスと同じ」(16.9%)という意見だ。
「ドリアと似ているので、特に違和感なく食べています」(51歳女性)
「カレーはご飯にかけて食べるから、同じようにシチューをご飯にかけてもいいと思う」(36歳女性)
確かにホワイトシチューにごはんを入れたものと、ホワイトソースのドリアの目立った違いはチーズの有無と、オーブンで焼いてあるかどうかくらいしか思いつかない。
またアリ派から「翌朝に余ったホワイトシチューにチーズを載せてオーブンで焼いてドリアにする」という声があったように、シチューとドリアの境界線は飛び越えることもできる。
カレーライスに関してもざっくり見れば、調理の工程や入れる具材はほぼ同じで、仕上げにカレーのルーを入れるのか、シチューのルーを入れるのか?の違いぐらいしかないともいえる。
これは「シチューにごはんはアリ派」の核心といえる主張だ。
つまりドリアやカレーはごはんと食べるのに、それらと酷似したシチューがダメになる理由がない、というロジックになる。
確かにナシ派の筆者も「シチューにごはんが合わないなら、キミはホワイトソースのドリアやカレーもごはんに合わないと感じているんだね?」と問われると、答えに窮してしまうところだ。
実際のところ、筆者はカレーライスやホワイトソースのドリアはごはんにこのうえなくマッチしている、と感じてしまっている。
このあたりのナシ派の動向は、あとでさらに詳しく見ることにする。
アリ派はパンよりもごはんをやや選好
では次に、シチューをごはんのおかずとすることへのアリ派たちは、どの程度ごはんを合わせることに熱量をもっているのか?という点を確認しておきたい。
ホワイトシチューはごはんに合うかもしれないが、バケットなどのパンにも合うメニューだ。
そこでもしホワイトシチューにパンとごはんを選べるなら、どちらを選ぶのか?を問うた結果が下図だ。
ホワイトシチューに合わせたいものとして、ごはん(56.5%)がパン(43.5%)をやや上回り、僅差ではあるがパンよりもごはんが選ばれる結果となった。
このことから、アリ派の多くの人は「仮にパンがなかったら、ごはんもアリ」というような消極的な熱量ではない。
そうではなく「シチューにはごはんを合わせたい!」という、アリ派の強い意思が感じられる結果といえる。
シチューにごはんは「ナシ派」の意見
では一方で、シチューにごはんを合わせることをナシと考えるナシ派の意見にも耳を傾けてみよう。
シチューにごはんはナシ派の主だった主張をまとめると、下表になった。
▼ナシ派の主だった意見
ごはんと合わない | 32.7% |
---|---|
パンと食べたい | 17.3% |
シチューだけを味わいたい | 13.6% |
生理的に無理 | 13.6% |
見た目がイヤ | 11.8% |
シチューは汁物 | 7.3% |
味が淡白 | 3.6% |
こちらもアリ派のときと同様に、「ごはんと合わない」という意見が32.7%ともっとも多かったが、これ以上議論も深まらない主張なので、簡単に触れておくに留める。
このナシ派の「ごはんにシチューは合わない」とする典型的な声は、このようなものだ。
「クリームシチューの甘めの味付けが御飯にはあまり合わないと感じてしまうので、ご飯にかけて食べるのはナシだと思います」(36歳女性)
つまり「甘い×甘い」のかけあわせになり、合わないとする声だ。
しかしこの主張は、アリ派から「じゃあ、おはぎはどうなるんだ?」というカウンターパンチがくることが容易に想像できるので、これ以上は深入りしない。
これに次いで多かったのが、「パンとあわせて食べたい」(17.3%)と「シチューだけを味わいたい」(13.6%)という意見だった。
「もしごはんと食べたいならドリアを食べたらいいと思うので、シチューはパンと食べたいです」(24歳女性)
「シチューは単品で味わいたいです。ごはんにかけると、クリームの本来の味がしなくなります」(53歳女性)
この両者はいずれもシチューを「ごはんと食べる」以外の食べ方をしたい、という点で共通している。
つまりごはんとシチューを食べるよりも、パンやシチュー単品で食べた方が好みだからナシという主張だ。
一方で、それに続く「生理的に無理」(13.6%)、「見た目がイヤ」(11.4%)という主張は趣きが異なる。
具体的には、このような声だ。
「牛乳をごはんにかけている感覚があるからです」(41歳女性)
「見た目が真っ白で美味しくなさそうだから」(45歳女性)
筆者がナシ派である理由も上の女性の意見とまったく同じで、牛乳をごはんにかけるという心理的な抵抗からだ。
実際にごはんに牛乳をかけて食す食文化も日本の一部の地域にはあるので失礼になってしまうかもしれないが、筆者はどれだけ頑張ってもごはんに牛乳をかけたものは食べられそうにない。
単に「ごはんと合わない」とする多くの回答者も、しっかり言語化すれば、実際はこの「ごはんに牛乳をかけることへの違和感」を感じている回答者が多いのではないだろうか。
しかしながらこれを見ると、「ホワイトソースのドリアにも牛乳は入ってるのでは?」と感じた読者も多いはずだ。
そこで先ほども少し触れた「ナシ派はホワイトソースのドリアにも抵抗を示すのか?」という問いに答えていきたい。
ホワイトソースのドリアはナシ派も約7割超がアリ
結論をいえば、シチューにごはんはナシ派も、ホワイトソースのドリアには心理的な抵抗を感じず食べられる者が圧倒的に多い。
アリ派の94.8%がホワイトソースのドリアを抵抗なく食べるのは当たり前だが、ナシ派も77.1%がホワイトソースのドリアを抵抗なく食べられると回答している。
「一体どういうことなんだ?」とアリ派の方は困惑してしまうかもしれないが、実は筆者も同じでシチューとごはんは食べられないが、ホワイトソースのドリアはいける。
もっと言うなら「ホワイトソースのドリアはむしろ好き」である。
「ドリアのホワイトソースも牛乳が含まれているのだが、なぜかドリアのホワイトソースには1ミリの抵抗も感じない。
アリ派の立場に立ってみれば、かなり困惑することを言っているのは間違いない。
しかしながら、実をいうとナシ派のこの不可解さは、まだほんの序の口である。
さらにナシ派の不可解さをご覧いただきたい。
ビーフシチューにごはんは6割のナシ派がナシ判定
シチューでごはんを食べることができなくても、ホワイトソースのドリアがいけるのであれば、ビーフシチューは抵抗なく食べられるのか?を聞いてみることにした。
というのも、ビーフシチューには牛乳は使われないし、見た目も白くなくカレーライスやハヤシライスのそれとかなり近い。
そうであるならビーフシチューでごはんを食べることに抵抗を感じるナシ派は、仮にいてもかなり少数と考えることができる。
そこでナシ派に「ビーフシチューならごはんと合わせても抵抗がないか?」を問うたのだが、結果は我々の予想を大きく裏切ることとなった。
なんと6割のナシ派が「ビーフシチューでごはんを食べるのもナシ」と判定しているのだ。
事態はいよいよ混迷をきわめてきている。
ビーフシチューには牛乳もかかっていないし、見た目も白くないにも関わらず、である。
ただ一方で、クリームシチューでごはんはナシでも、ビーフシチューでごはんはアリという者の割合が39.4%の4割近くいることは注目に値する。
実際に筆者も、クリームシチューとごはんは食べられないが、ビーフシチューならごはんと食べることに抵抗はない。
ここはナシ派の中でも意見がわかれるところのようだが、いずれにせよナシ派の主張はあまり一貫性がなくブレブレの印象を抱かざるをえない。
ナシ派の言っていることは、なぜこんなにブレるのだろうか?
次章では、そのあたりの原因に迫ってみたい。
「シチューにごはんはナシ派」の大半は食わず嫌い
前章で見たように、シチューでごはんを食べることを否とするナシ派は、「牛乳がイヤ」と言いながらホワイトソースのドリアは平気で食べる。
また「クリームシチューの白い見た目がダメ」と言いながら「ビーフシチューもナシ」と言ったり、とにかくブレブレな主張をしている。
ではなぜナシ派の主張はブレるのか?という疑問への回答として、こんなデータをご覧いただきたい。
下図は、ナシ派に「実際にごはんにクリームシチューをかけて食べたことはあるのか?」を問うた結果で、実に73.4%ものナシ派が「実際にかけたことはない」と回答している。
端的に言ってしまうと、筆者を含めナシ派のほとんどは単に「食わず嫌い」なだけである。
シチューにごはんという組み合わせはなんとなくイヤだという印象や思い込みがあるだけで、それゆえに根掘り葉掘りと聞かれると、主張がブレるのだ。
仮にホワイトシチューをドリア風にアレンジした料理なら、ナシ派は喜んで食べてくるはずだ。
またビーフシチューもハヤシライスだと偽って提供すれば、おそらくナシ派は「トマトソースの味が弱いな」くらいは感じても、抵抗なく食べてくる。
もしあなたがアリ派で、ナシ派の人にどうしてもシチューをおかずにごはんを食べるよさを布教したいなら、このように騙しうちのような形で食べさせてみるのは有効な手かもしれない。
というのもナシ派の大半は単に食わず嫌いなだけなので、一度食べてしまえば抵抗がなくなる可能性は高いからだ。
アリ派とナシ派の違いはシチューの位置づけの違い
これまで見たようにナシ派の主張の根底は、あくまで「食わず嫌い」であり、理詰めで論破しようと思えばいくらでもできる状態であることは確認した。
しかしそれ以外にも、シチューにごはんを合わせることに対してアリ派・ナシ派には違いも見られたので、紹介しておきたい。
その違いとは、「シチュー観」の違いである。
つまりシチューはメインのおかずなのか、それとも副菜なのか、はたまた汁物や軽食なのか?という問題だ。
このシチューのおかずとしての位置づけに、アリ派とナシ派では大きな違いが見られたので下図を見ていただきたい。
まずシチューを「メインのおかず」と見る向きは、アリ派では75.9%と大多数を占めているのに対し、ナシ派は53.2%とギリ半数越えの割合しかいない。
ではナシ派にとって、シチューとは一体なんなのか?
ナシ派の「メインのおかず」に次いで多かったのは「汁物・スープ」というシチュー観で、実に32.1%の割合がそう認識している。
実際にナシ派の男性からは、このような声が挙がっている。
「シチューはスープや汁物という位置付けなので、ご飯にかけるのは相応しくないと感じる」(52歳男性)
「シチューはスープのイメージが強いので無理ですね」(56歳男性)
つまり、シチューをごはんにかけるのはみそ汁をごはんにかけて食べているようなものだということだ。
ごはんにみそ汁をかけて食すのは確かにおいしいのだが、食事のマナーや作ってくれた人への配慮という面ではややあやしいところがある。
実際にごはんにシチューをかけるというマナーに関して、アリ派の中でも同様の声が聞かれている。
「人前ではやらないと思いますが、洋風ねこまんまのようで美味しく食べられるので私はアリです」(42歳女性)
これは人によって、かなり判断がわかれるところだろう。
つまり合理的な人は「別々に食べてもどうせ胃の中でごちゃ混ぜになるじゃないか」ととらえるだろうし、美意識の高い人は「食事のマナーとしていかがなものか」ととらえる。
いずれにしてもナシ派はアリ派に比べて、シチューを「汁物・スープ」と認識している人の割合が多く、シチューとごはんだけ食卓に並んでいると、ごはんとみそ汁だけ並んでいるようなもの足りない印象を受けるというということになる。
アリ派とナシ派にはこうしたシチュー観の違いも見られた。
まとめ
以上が「シチューをおかずにごはんを食べられるか問題」について調査結果だ。
あくまで本稿は、アリ派・ナシ派に優劣をつけることを企図しているわけではなく、アリ派の人はナシ派を、ナシ派の人はアリ派をよりよく理解することを目的とした。
そのうえで本稿の結論をおさらいしておくと、次のようになる。
▼本調査の結論
・シチューにごはんを合わせるのはアリ派が約65%で上回る
・アリ派の主な意見は「ドリアやカレーライスと同じ」
・ナシ派の主な意見は多様だが、大半は「食わず嫌い」
もしあなたがアリ派なら、ナシ派もおよそ35%の割合でいるので寛容なまなざしでナシ派の存在を受け入れることを、もしあなたがナシ派ならおそらく食わず嫌いだと考えられるので一度ひと口でも試食してみることをおすすめしたい。
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