耳を疑うような話だが、マタニティマークを着用している女性をうざいとし、嫌がらせを受けるというエピソードを聞いたことがある方も多いのではないだろうか?
またそうしたエピソードからリスクを感じ、マタニティマークをつけることをためらう女性も少なくない。
しかし結論からいえば、こうした「マタニティマークうざい論」はほぼ気にする必要がない。
というのも、マタニティマークをうざいと思う人たちから攻撃を受けるケースは、100回に1回起こる程度の頻度でしかないからだ。
本稿ではこうしたマタニティマークうざい論を取り巻く状況を、妊娠中にマタニティマークをつけていた全国の女性150名を対象にアンケート調査をおこなった。
本稿の結論は、下記である。
▼本稿の結論
・マタニティマークをつけて不快な思いをしたことがある人はわずか1.4%
・公共交通機関をよく利用する女性はマタニティマークのメリットを感じやすい
・公共交通機関をあまり使わない女性はデメリットもメリットも感じにくい
・マタニティマークは着用がおすすめ!気になる人は使い分けもアリ
もしあなたが現在マタニティマークをつけることをためらっている女性なら、本稿を読めばそうした懸念は払拭されることだろう。
もしあなたがマタニティマークをつけている女性をうざいと感じている人なら、本稿を読んで「なぜ妊娠中の女性たちはマタニティマークをつけているのか?」のホンネのところを理解するべきだ。
では以下詳細を見ていくことにしよう。
マタニティマークうざい論をおさらい
まずは本稿の前提として、巷でささやかれている「マタニティマークをつけている人がうざい」という論調を確認しておこう。
この「マタニティマークうざい論」の主要な言い分をまとめると下記となる。
なんとも陰湿で聞くだけで嫌な気分になる意見だが、ネットやSNS上にはこうしたマタニティマークをつけていることで、嫌がらせや不快な思いをした女性の体験談などが出てくる。
またマタニティマークを手にした女性が、こうしたうざい論を気にしてつけるべきか否か悩んでいる声も散見されている。
しかしながら結論から言えば、こうしたマタニティマークうざい論は、まったく気にするに値しない。
どういうことか次章で詳しく見ることにしよう。
マタニティマークをつけ嫌がらせや不快な思いをした人はたったの1.3%
今回調査において、妊娠中にマタニティマークをつけていた全国の女性150人に、「マタニティマークをつけていたことで嫌がらせや不快な思いをしたことがあるか?」を問うた。
その結果、マタニティマーク着用時に嫌がらせや不快な思いをしたことがある人は、たったの1.3%しかいないことが判明した。
また同時に嫌がらせや不快な思いを「まったくしたことがない」と回答した女性が、実に7割を超えた。
マタニティマークうざい論はショッキングな内容だけに、多くの人の耳目をひきつけてしまう。
その結果、マタニティマークをつけていると結構な頻度で、うざい論者から攻撃されるかのように錯覚してしまう。
だが、実態に目を向けるとマタニティマークをうざいと思っている人から嫌がらせ等を受けるのは、かなりのレアケースであることがわかる。
混雑している電車に乗ると、ほかの乗客に迷惑をかけたり、乗客を押しのけてでも自分だけ座席に座ろうとする人にまれに遭遇してしまうものだ。
割合としてはそういう人に、運悪くこってり絡まれてしまったくらいの事故率と言えるかもしれない。
まずここまででマタニティマークをつけていた女性たちは、7割以上がそうした災厄から無風で過ごしていたことを強調しておきたい
マタニティマークをつけていてよかったと思う割合は半数以上
では一方で「マタニティマークうざい論」とは逆に、マタニティマークをつけていてよかったと思っている人の割合はどのくらいなのかを見てみよう。
マタニティマークをつけてよかったと思ったことが「かなりある」人が8.0%、「ややある」人が45.3%となり、合わせる53.3%の女性がマタニティマークをつけることのメリットを感じている。
ただ冷静に見ると「あまりない」(32.7%)、「まったくない」(14.0%)の割合も46.7%と約半数いる。
つまりマタニティマークをつけても、特にメリットを感じなかった人も半数はいることになる。
先ほどの不快な経験をしたことがある人の割合の低さも考えると、多くの人にとってマタニティマークはつけていてもつけていなくともたいして変わらないもの、となってしまうかもしれない。
ただしこの結果を詳しく見ると、マタニティマークのメリットが大きくなる女性もいるので、もう少し掘り下げて見ることにしよう。
公共交通機関を使う人ほどメリットを感じやすい
結論からいえば、妊娠中に通勤や通院で電車・バスなどの公共交通機関を利用する頻度が高い人ほど、マタニティマークのメリットを感じている割合が増える。
オレンジと黄色の割合に注目すると、妊娠中に電車・バスに「かなり乗る」女性の7割以上が「マタニティマークをつけてよかった」と思っていることがわかる。
電車・バスに「やや乗る」女性も6割程度が、マタニティマークのメリットを感じている。
一方で、マイカーやタクシーなどを移動手段とし、妊娠中に公共交通機関をあまり使わなかった女性たちは「あまり乗らない」で4割程度、「ほとんど乗らない」ではわずか16.1%しかマタニティマークのメリットを感じていないことがわかる。
マタニティマークは周囲の人の目に留まってはじめて効力を発揮するものなので、当然といえば当然の結果だ。
しかし妊娠中にどのくらいの頻度で公共交通機関を利用するか?は、マタニティマークをつけるかつけないかを判断するのに重要な材料となることがわかる。
また実際に厚労省がマタニティマークを「妊婦さんが交通機関等を利用する際に身につけ、周囲に妊婦であることを示しやすくするもの」と定義しているが、その通りの結果と言える。
つまり今後妊娠中に公共交通機関を少なからず使うことになる人は、マタニティマークをつけるのが吉といえそうだ。
マタニティマークをつける最多の理由は「倒れたときのため」が約半数
では次に、妊娠中にマタニティマークをつけていた女性たちは一体なんのためにつけていたのか?を見ていくことにする。
もっとも多かった理由は、「万が一倒れてしまったときの備え」という回答で約半数を占めた。
実際の回答者の声を紹介すると、このような声が多かった。
「まだお腹がそんなに大きくない時に、公共の場で倒れたりした際は救急隊員に妊婦と気づかれないことがあると聞いたので念のためつけていました」(32歳女性、広島県)
「急に倒れて意識がない場合でも、救急隊や周囲の方に妊婦とわかるように」(37歳女性、東京都)
特に妊娠初期のころは、つわりなど体調がすぐれない時が多い割に、パっと見では妊婦とわからない。
倒れてしまったときに自身は、もちろん胎児を守る意味でもマタニティマークは有効と考えられているようだ。
こうした万が一の備えに次いで多かったのが、「周囲の配慮を得たいため」(28.7%)という理由だ。
次の「優先席に座る理解を得るため」(14.0%)と似ているのだが、実際の回答者の声はこのようなものだ。
「ぶつかってほしくない意思表示のため」(30歳女性、千葉県)
「優先席に座っていたときに、白い眼で見られないため」(30歳女性、長崎県)
妊娠後期にもなると、3kgの重りをお腹に巻いているのと同じことになるので、歩く速度が落ちたり、妊娠前のように機敏に動けなくなる。
そうしたとき、ちょっとした階段の昇り降りに戸惑ったり、群衆の歩くスピードについていけない事態も出てくる。
また優先席については、上記のような「周囲の目を気にせず優先席に座っていられる」という声が圧倒的に多かった。
優先席に座っているだけでイヤな目で見られるというのもなんとも息苦しい話だが、あらぬ誤解を避けるためにも、先手を打ってマタニティマークを着用する女性がいることがわかる。
マタニティマークをつけていた人は、基本的に「つける」ことをおすすめ
ここまでをおさらいすると、マタニティマークをつけるデメリットはほぼないと考えられる一方で、メリットも公共交通機関を利用していない限りは享受しづらいということもわかった。
デメリットがさしてなくて、メリットがややあるなら「つけたほうが得」と考えることもできそうなものだが、実際にマタニティマークをつけていた女性たちはどう考えているのだろうか?
メリット・デメリットを総合的に考えて、マタニティマークはつけるべきか?という問いに、回答は大きく2つ割れた。
まず「絶対につけるべき」(7.3%)と「つけたほうがいいと思う」(44.0%)の合わせて51.3%が、マタニティマークの着用を推奨している。
マタニティマークの着用を推奨する声としては、このようなものが目立った。
「妊婦ということを理解してもらえたほうが配慮を受けられる確率が高いから。嫌がらせよりも配慮してもらえる確率の方が多い」(33歳女性、三重県)
「スーパーなどの駐車場などでも妊婦の方が停められる場所があったり、周囲の方が気遣ってくれたりと素敵なことがたくさんあるから」(27歳女性、宮城県)
冒頭の繰り返しになるが、マタニティマークをつけて嫌がらせ等を受けた女性はゼロではないが、1.3%しかいない。
この限りなく起こる可能性の低いデメリットを恐れて、本来の自身と胎児を守るというマタニティマークの目的がおろそかになるのは、本末転倒と言えるかもしれない。
一方で、「状況によって使い分けるべき」と考える女性たちも48.0%いる。
「バスや電車を使う時はつけていたほうがいいですが、スーパーなどではあまり意味は感じません」(31歳女性、熊本県)
「基本はつけていましたが、産婦人科では外しました。流産された方や不妊の方もいて、マタニティマークを見てつらい思いをするというのを聞いたことがあったため」(35歳女性、神奈川県)
「状況によって」というのもややあいまいだが、ずっとつけっぱなしでいることに抵抗がある方は、メリットを受けやすい公共交通機関や飲食店、混みあう場所ではつけ、それ以外のところではすぐに取り出せるように鞄の内側にしまう、という使いわけが一例として考えられる。
いずれにしても、デメリットは神経過敏になるようなレベルではまったくないため、つけっぱなしでも問題がないことは強調しておきた。
まとめ
以上が、今回マタニティマークに関する調査結果のレポートだ。
改めて本稿をおさらいしておくと、このような結論になる。
▼本稿の結論
・マタニティマークをつけて不快な思いをしたことがある人はわずか1.4%
・公共交通機関をよく利用する女性はマタニティマークのメリットを感じやすい
・公共交通機関をあまり使わない女性はデメリットもメリットも感じにくい
・マタニティマークは着用がおすすめ!気になる人は使い分けもアリ
本稿が母子ともに健やかなマタニティ生活の一助になれば、幸甚である。
アンケートについて
アンケート実施法
・アンケート方法 インターネット上でアンケートを実施
・回答者数 150名
・調査日 2023年6月13日
・設問は単一選択式、自由記入式
・調査主体 【300人のホンネ】編集部
・回答者性別 女性100.0%
・回答者平均年齢 35.5歳
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