ビジネスシーンでの電話対応に苦手意識があり、「先方に電話しといて」と言われるたびに神経をすり減らしたりしていないだろうか?
実を言うと筆者も電話対応が苦手で、つまずくどころか転がりまくったタイプである。
しかし電話対応への苦手意識は、ちょっとしたコツや心構えで気持ちが楽になり、落ち着いて対応できるようになることがある。
そこで営業職として電話対応の経験がある全国の男女215名にアンケート調査を実施し、いまこの瞬間から使える電話対応の対処法を調査した。
本稿の調査結果は下記である。
▼本稿の調査結果
・8割以上の人が電話対応に苦手意識がかつてあった
・電話対応は半年で7割の人が慣れる
・どういう面が苦手かを自己分析し、それに合った対処をとる
・大半の人が電話対応で盛大にやらかした過去がある
本稿を最後まで読めば、苦手な電話対応を前にしても少しばかり気持ちに余裕ができ、受話器を手にとる勇気が自然と湧いてくるはずである。
ビジネスシーンでの電話対応に苦手意識をもっていた人は8割越え
まずは先輩方のこんなデータから見ていただきたい。
営業職として電話対応を担当することになった当初を思い出してもらい、電話対応への苦手意識がいかほどであったかを問うた結果が下図だ。
ビジネスシーンでの電話対応への苦手意識が「かなりあった」(49.8%)、「ややあった」(34.0%)と回答した人が合わせて83.7%にも及び、実質ほとんどの人が多かれ少なかれ苦手意識を持っていたことがわかる。
これはすなわち、あなたの職場にいる先輩や上司も、かつては電話対応に苦手意識をもち、あなたと同じように悩んでいたということに他ならない。
社会人となったときに受ける洗礼は数々あるが、この電話対応業務もそうした洗礼の一つと言えるだろう。
50代以上の人に電話の苦手意識を相談するのは不毛
ただし、ほとんどの人が電話対応の苦手意識をもって社会人生活をスタートしているのだから、つい職場の誰しもがこの苦手意識をわかってくれるはずだとは考えてはいけない。
というのも50代以上の人には、あなたの電話対応に関する苦手意識は理解できない可能性が高いからだ。
どういうことかと言うと、先ほどの回答を年齢層別に集計し直した結果が下図だ。
40代までは80%超が電話に対する苦手意識を経験しているので、電話対応への苦悩をわかってもらえる可能性が高いだろう。
しかし50代になると苦手意識があった割合が59.4%まで下がり、60代にいたってはなんとゼロ化してしまう。
つまり40代と50代の間に、明確な壁の存在を感じざるを得ない結果となった。
この原因は色々と考えられそうだが、そのひとつに「ポケベル・PHS」が普及した世代が現在の40代に当たることと関係がありそうだ。
つまり50代以上の世代が青春時代を謳歌しているとき、恋人や友人と電話で話したいとなると、その恋人が住む家の固定電話にいきなり電話するしか手がなかった。
これは現在の20代には想像しがたいことかもしれないが、当然ながら固定電話だけに、本人が出るとも限らず、その両親が電話に出てしまうこともある。
恋人の父親が「誰だね、君は?」と電話に出たときなどはビジネスシーンでの電話対応より何倍も気まずい状況になるわけで、こうした修羅場をくぐり抜けることで電話への耐性を身につけた可能性が考えられる。
一方で40代が青春時代を謳歌しているときには「ポケベル(ポケットベル)」というカタカナで16文字だけメッセージを送信できるデバイスが普及した。
固定電話に架電するまえに「イマデンワシテモイイ?」などのメッセージは送れたので、それ以前に比べ飛躍的に両親との遭遇率が下がったのは疑いない。
苦手意識が克服される期間は「半年」内
話を戻して、いまあなたの職場にいる多くの先輩や上司が電話対応で苦手意識を持っていたことはわかった。
しかしながら電話対応は今のあなたにとって不慣れで戸惑う業務かもしれないが、やっていることは「電話で話している」だけであり、単純そのものである。
そのため当然ながら「場数を踏めば慣れる」のである。
ではこの電話対応の苦手意識は、どのくらいの期間を経れば克服できるだろうか?
先輩諸氏がかつて苦手意識を克服するのにかかった期間を問うた結果が、下図だ。
苦手意識がかなりあった人は「1~3か月」、「ややあった」人は「3か月~半年」あたりが克服期間としてのピークとなった。
またどちらの場合でも半年が経過すれば、7割以上が電話対応への苦手意識がなくなっている。
つまり半年後あなたは、息を吸うように電話対応ができるようになっている可能性が高い。
そのためもしあなたが先輩方に電話対応に関するアドバイスを求めると、「そのうち慣れるよ」という答えが返ってくるかもしれない。
そのアドバイスは決して間違ってはいない。
しかし半年も先の話となると、ずいぶん気の遠くなる話に聞こえないだろうか?
というのもあなたが求めているのは、いま目の前にある電話対応業務を卒なくこなすためのメソッドであるはずだからだ。
そこで半年後のような悠長な話ではなく、もっと即効性のある対処法について深掘りしていくことにしよう。
電話が苦手な理由別対処法
いまこの瞬間から電話対応のスキルを瞬発的に上げる対処法を探るため、まず問題を切り分けることから始めたい。
というのも、あなたが電話対応にどういう苦手意識をもっているか?で、その対処法が変わるからだ。
まずは社会人の先輩たちに、これまでの電話対応の指導経験や自身の経験から、どういうポイントで電話対応につまずくのか?を調査し、分類したのが下表だ。
もっとも多かったのが「自身で判断できないことを聞かれ焦ってしまう」(37.7%)で、次に「電話口で噛む・うまくしゃべれないことへの苦手意識」(21.4%)、「知らない人に電話をかけることへの苦手意識」(14.9%)が次いだ。
人によってはいくつも当てはまるかもしれないが、以下それぞれのつまずきポイントごとに対処法を見ていく。
自身にもっとも当てはまるつまずきポイントの対処法へジャンプできるので、リンクをタップしていただきたい。
▼つまずきポイントごとの対処法
判断できないことを聞かれる苦手意識 | 対処法を見る |
電話口で噛む・うまくしゃべれない苦手意識 | 対処法を見る |
知らない人に電話をかける苦手意識 | 対処法を見る |
ビジネスマナー特有の言葉遣いへの苦手意識 | 対処法を見る |
相手の表情が読めない苦手意識 | 対処法を見る |
まわりからの視線への苦手意識 | 対処法を見る |
沈黙が続くことへの苦手意識 | 対処法を見る |
判断できないことを聞かれる苦手意識
自身が判断できないことを聞かれることへの恐怖や、実際に聞かれたときに焦ってしまうことへの対処法は、自分がなんでもかんでも答えなくてもよいと割り切ることだ。
実際に先輩方から寄せられたアドバイスを見ると、
「わからないことを聞かれても、わからないまま答えてはいけない。確認しますと言って保留にするか折り返す」(31歳、女性)
「お待たせしてもいいから、曖昧な回答は避け、その都度確認し確かなことを相手に伝えること」(30歳、女性)
実際にビジネスの世界では「言った/言わない」で、トラブルに発展することがある。
もしなりゆきで「できます」と答えてしまって「さっき電話した方はできるとおっしゃってましたが?」などとつけこまれることこそ、あなたが絶対に避けなければならないシナリオだ。
もちろんマニュアルや事前に指導されていたことならそのまま答えればいいが、自分にわからないことが出てきたときに、担当の先輩や上司につなぐことことがあなたの役目だ。
その時相手が忙しそうなら「折り返します」と伝え相手の名前を聞き直し、少しの間なら待ってくれそうなら「確認いたします」の言葉を添えて保留ボタンを押す。
中には「これくらい自分で答えられないのか?」などと嫌味をつけてくる上司もいるかもしれないが、それはマニュアルを整備しておかなかったほうが悪いので気を病む必要はまったくない。
繰り返すがあなたが絶対に避けなければならないのは、いい加減な回答をして話をこじれさせることであり、それが回避できていればあなたはうまくやれている。
電話口で噛む・うまくしゃべれない苦手意識
電話口で噛み噛みになってしまったり、言葉がつかえてうまく出てこなくなることへの苦手意識がある人は、自身に課しているハードルが上がりすぎている。
「一言一句間違えずに話そうと思うとより緊張してしまうので、絶対に言わなければならないことや聞かなければならないことだけを決め、それさえクリアしたら自分を褒めてあげること。ハードルを低くして自分はできるんだ、と自信を持つことが大事」(29歳、女性)
一度まわりの電話対応を冷静に聞いてみるとすぐにわかるが、みんな噛んだり、変な日本語や敬語で受け答えしているものだ。
そもそも人間が口頭で話す言葉(口語)というのは、文法的にはかなり不正確だし、発音もいい加減だし、言い間違いも多発している。
あくまで電話対応は流ちょうに話せることを競う場ではなく、用件を正確に伝えることのほうが圧倒的に大事なので、たとえ噛み噛みでも用件さえ伝わればOKと考えよう。
電話口できれいな日本語で話すことを目指すのは、電話対応が息を吸うくらい自然にできるようになったあとに向き合えばいいのだ。
知らない人に電話をかける苦手意識
知らない人に電話をかけることへの苦手意識がある人は、サンプルにできそうな先輩になりきって電話してみるのがおすすめだ。
つまり、モノマネである。
「職場の諸先輩方がどのように電話されているか観察し、真似から始めるのがいいと思います」(26歳男性)
誰しもが話したことがない人と話すのは、身構えてしまうものだし、緊張するものだ。
そんなときは「職場の誰か」になりきって対応すると、まるでその人に全責任をなすりつけられるかのような感覚になり、気が楽になる。
声のトーンから名乗り方、相槌の打ち方、電話の締め方など、「あの人だったらこう言いそう」なことを丸パクリして対応してみよう。
思っている以上にリラックスして電話対応している自分の姿を発見できるだろう。
ビジネスマナー特有の言葉遣いへの苦手意識
「お世話になっております」や「御社」などの特有の語から、敬語の使い方など学生時代には無縁な言葉遣いへの苦手意識がある人は、カチカチすぎる言葉遣いも変だと考えるようにしよう。
「ある程度基本的な言葉遣いは勉強するべきだけど、すごくかしこまった表現だと逆に距離を感じさせてしまうから、丁寧な言葉遣いくらいで十分」(26歳女性)
特に企業間のやりとりの場合、中長期的には折り目正しい姿勢よりも、担当者とざっくばらんな関係性を構築したほうが圧倒的に有利という場面が数々ある。
そんなとき「~でございます」と答えるよりも「~ですね」と答えるほうが自然だし、距離も縮まる。
結局ビジネスの世界で相手から見られるのは言葉遣いではなく、対応のスピードや誠実さの部分が大きいので、正確な敬語ではなくとも、丁寧な言葉遣いが保てていれば問題ないだろう。
相手の表情が読めない苦手意識
電話相手の表情が読めなくて話しづらいという苦手意識をもつ人は、表情をつけて電話するように心がけるといい。
「電話の際は相手の顔が見えないが、せめてこちらは無表情でなく、相手がいることを想像して表情を作ったり、ジェスチャーをつけて電話応対すると伝わりやすい」(46歳男性)
表情は意外と声に乗りやすく、笑顔を作って発生すると1トーン明るい声になるし、本当に申し訳なさそうな表情を作って「申し訳ございません」と言うと、本当に申し訳なさそうに聞こえるものだ。
なによりこちらの表情が伝わることで、相手も電話口から表情をのぞかせてくれることもある。
電話口だからと無表情にならず、表情をつけて話してみることを試してみてほしい。
まわりからの視線への苦手意識
電話している自分に対する周囲の視線が気になる人は、ひと言でいえば気にしすぎである。
「まわりには相手の声が聞こえず会話内容がわからないので、気にしない方がいいと思う」(34歳女性)
よほど大声で話していたりすれば注目を集めるかもしれないが、みんな自分の業務に忙しいのであなたの動向をつぶさに観察している暇などない。
またこの手の苦手意識は、実際に電話を手にするまでに時間を置けばおくほど、「課長が離席したらかけよう」とか「誰かが電話し始めたらかけよう」などと逡巡しだし、より電話をするタイミングを失いがちだ。
いったんくよくよしだすと沼の奥深くまで落ちてしまうので、「電話しなきゃ!」と思った瞬間に、あまり考えず「なんとかなるだろ」と勢いで電話をかけてしまうくらいがちょうどいいだろう。
沈黙が続くことへの苦手意識
電話相手と沈黙が続くことに苦手意識がある人は、事前にメモ書きで伝えなければならないことを準備しておくことで恐怖心が緩和する。
「話したい要点を自分なりにまとめて整理してから架電する」(36歳女性)
このときあまり台本を作り込みすぎてしまうと逆に話しにくくなるので、箇条書きの簡単なメモ程度のほうがいい。
「一方的にこちらが話すのではなく、相手に話させることが大切だと思います」(47歳女性)
また沈黙を恐れるあまりに、一方的に話しまくってしまいたくなるかもしれないが、電話で沈黙が訪れるのは相手が考え中のことが多い。
この時に変に話しかけると頭の中の整理がかき乱されて、より沈黙が続く原因になってしまうので、相手のテンポに合わせて間をとってあげるというのも大事だ。
みんなやらからしている!電話対応失敗エピソード
さて、ここまでで電話対応をする一握りの勇気が湧いてきたのではないだろうか?
最後にその一握りの勇気を揺るぎない決意に変えるために、こんな話をしたい。
つまり先輩たちが電話対応でいかにやらかしてきたか?のエピソードだ。
ハッキリ言って、電話対応はみんなやらかしているし、今後もみんなやらかすだろう。
間違いなく言えるが、電話対応でミスるのはあなただけでなく、あなたの先輩、上司、いまからかける電話相手でさえもやらかしている。
実際に冒頭で触れたように8割の人は電話対応に苦手意識をもっていたのは、やらかしてきた経緯があったからとも考えられる。
つまりミスったところで、所詮それは当たり前であり、「あるある」のひとつでしかない。
仮にその瞬間やらかしたところで、あとでしっかりフォローを入れておけば何の問題もないので、0になるはずがない電話対応のミスを怖がること自体ナンセンスだ。
では先輩たちのやらかしエピソードを見ていくことにしよう。
唐突すぎる終話
「クレームの電話を、保留したつもりで切ってしまった」(30歳女性)
「急に怒鳴られて怖くて、思わず途中で切ってしまいました」(52歳女性)
もし相手が携帯からの電話であれば、実質セーフである。
切ったのか/電話が悪くて切れたのか、切った本人以外は確証がないので、「失礼いたしました」とケロっとかけ直せば実質セーフ扱いである。
また別バージョンとして保留になっておらず、社内の会話が筒抜けというエピソードもある。
果たせない約束
「名前を聞き忘れて、かけ直せなくなった」(33歳男性)
「かけ直します、と伝えたのに相手の電話番号を聞くのを忘れた」(55歳女性)
着信履歴が追えるならなんとかなるが、その機能がなければもうどうしようもないケースである。
これだけIT化が進んだ現代のセキュリティホールと言える事象で、本当に打つ手がないので「待つ」の一手である。
本当に大事な用件なら追って連絡がくるので、謝罪の準備を粛々と進めておこう。
「正しい」間違い電話
「電話に出た第一声で「いらっしゃいませ!」と言ってしまいました」(46歳女性)
「転職した際に初めて取った電話で、以前の勤め先の名前を言ってしまいました」(32歳男性)
電話をかけたほうも受けたほうも、同時に「しまった!間違った」と思わずにはいられない奇妙な一致が訪れる瞬間である。
特に後者の場合は「おたくとあそこの会社はどういう関係性なの?」と勘繰られること請け負いだ。
口癖になってしまっているので止めようもないが、電話相手を秒でひるませる効果も期待できるかもしれない。
社長の電話
「ただの横柄なお客様だと思って対応していたら、自分の会社の社長からの電話だった」(33歳女性)
なぜ社長も話したい人の携帯電話を鳴らさず、わざわざ会社の番号にかけてくるのかわからないが、これは筆者も経験がある。
また自分の電話の声が社内に浸透していると思い込んでいるのかわからないが、名乗りもせずに用件から切り出してくるので、「誰だね、きみは?」という対応になってしまうのも不可避だ。
また別バージョンとして、こんなエピソードもある。
「「社長」と「所長」を聞き間違えて、「社長」に電話をつないでしまったこと」(37歳女性)
つながれた社長がどう対応したのか、通話記録を聞いてみたいものである。
名前の間違い
「相手の名前をずっと間違えてました」(23歳女性)
実際に筆者も遭遇したことがあるが、「お世話になります。○○株式会社(筆者の社名)の△△(筆者の名前)と申します」と電話がかかってきたことがあった。
「奇遇ですね、私も○○株式会社の△△と申します」と言うべきなのか、自分の知らないところでもう一人の自分が暗躍している世界線なのか、かなり混乱してしまったが名前の呼び間違える人はかなり多い。
また別バージョンとして、こんなエピソードもある。
「相手の名前を3回聞いても聞き取れなかった」(22歳男性)
声質なのか電波状況なのかわからないが、電話口でなにを言っているのかまったく理解できない人は一定存在する。
またそういう人に限って、聞き馴染みのない珍しい名前をしている。
このように電話対応でのやらかしエピソードは星の数ほど出てくることが、おわかりいただけただろう。
と同時に、電話対応を苦手だと感じるのは正しくなく、流ちょうな電話対応をできる人こそが少数派であり、みんな拙い日本語でやりくりしているだけというのが実情だろう。
まとめ
以上が、電話対応にまつわる本稿の調査結果である。
本調査の結論をおさらいすると、こうなる。
▼本稿の結論
・8割以上の人が電話対応に苦手意識がかつてあった
・電話対応は半年で7割の人が慣れる
・どういう面が苦手かを自己分析し、合った対処をとる
・大半の人が電話対応でやらかしている過去がある
電話対応業務はミスするのが自然と考えると、気持ちが楽になったのではないだろうか?
本調査結果を受けてあなたの手が受話器に伸びるようになれば、幸いである。
アンケート実施方法
▼アンケート方法
・アンケート方法 インターネット上でアンケートを実施
・回答者数 営業職として電話対応業務をしたことがある全国の男女215人
・調査日 2023年1月26~31日
・設問は単一選択式、および記述式
・調査主体 【300人のホンネ】編集部
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