やってみたら楽しいのはわかりきっているが、なかなか一歩が踏み出せないもの。
それが「ヒトカラ」(1人でカラオケをすること)である。
最初に結論を言っておくと、本稿では全日本人に対して、ヒトカラを強く推奨する。
もちろん
「1人でカラオケなんて、友達いないの?」
「ヒトカラする人って、ちょっと気持ち悪いかも…」
なんていう声があるのは十分承知の上だが、それでもなおヒトカラを推したいと思う。
なぜならヒトカラには、こうした批判の声を差し引いてもあまりあるメリットがあるからだ。
今回【300人のホンネ】編集部では、日本全国の男女300人のヒトカラ経験者にアンケート調査を行った。
本稿を読み終わるころには、あなたはヒトカラでデビューする勇気と、ヒトカラを心行くまで楽しむ知恵を手にしているはずだ。
では詳しく見ていくことにしよう。
ヒトカラは特に女性層から支持されている
早速だが、核心からスタートしよう。
日本全国のヒトカラ経験者300人に、1人でカラオケに行くのと、複数でカラオケに行くのとではどちらが好きか?を問うた。
その結果が下図だ。
男性はおおむね半々に割れたが、一方で68.5%の女性は「ヒトカラのほうが好き」と回答している。
また全体ではヒトカラ支持派が63.0%と過半数となり、本調査結果では「ヒトカラ支持派」のほうがマジョリティ(多数派)となった。
「ヒトカラなんてほんの一部の陰キャがやってるだけでは?」と思っていた方にとっては大変ショッキングな結果だろう。
もちろん今回の回答者はあくまで「ヒトカラ経験者」であり、これをそのまま日本国民全体に当てはめることはできない。
だが、ここで大事なのはヒトカラ経験者の半数以上が「複数人でカラオケに行くよりも、1人で行ったほうが楽しい」と好評している点だ。
また女性からのヒトカラ支持率が高くなった理由はさまざま考えられそうだが、女性は複数人で行くカラオケに生じるもろもろの制約を受けやすいという可能性が考えられる。
その反発としてヒトカラ支持に回る女性が増えたと言えそうだが、これについては後述する。
ヒトカラに「ウマヘタ」など関係ない
さらに付け加えておくと、ヒトカラの支持派に「歌唱力」の差はない。
これをご覧いただきたい。
あくまで自身の歌唱力を自己評価してもらった「歌唱力」ではあるが、歌に自信がある人もない人も、いずれも半数以上が「ヒトカラ支持派」となっている。
確かに歌うことに「まったく自信がない」回答者たちは、ヒトカラの支持率が76.9%と頭一つ高い割合となったが、「かなり自信がある」回答者たちも66.7%と過半数がヒトカラ支持に傾いている。
ここで重要なのは、どんな歌唱力の持ち主であってもヒトカラ支持派のほうが多い、という事実である。
間違っても、歌がうまい一部の人だけが自己満のためにヒトカラに行っているわけでもなく、歌が下手な一部の人だけが人目を避けてこっそりとヒトカラに行っているわけでもないのである。
ヒトカラは特定の歌唱力をもった人にのみ利用する閉鎖的な行為ではなく、どんな歌唱力の人も等しく楽しむ権利をもっている開かれた行為なのである。
ヒトカラ最大のメリットは「選曲の自由さ」
さてそんなヒトカラだが、複数人で行くカラオケと比較してどんなメリットがあるのだろうか?
結論から言うと、ヒトカラのメリットは想像以上に多い。
ヒトカラのメリットとして、半数以上の回答者から同意を得られたメリットは下記の4点だ。
いずれのメリットにも複数人でカラオケに行ったときに感じる、ちょっとしたストレスが根っこにあることがわかる。
たとえば「選曲で引かれる」という例だと、カラオケ合コンのような場で、マニアックなアニソンや推しのキャラソン、その場にいる全員にヘドバンを強いるようなメタル曲、こってりした赤裸々な失恋ソングなどをチョイスできる人は少ない。
一方で、引かれる相手自体が存在しないヒトカラでは、「選曲=本当に自分が歌いたい曲」というわがままを常時押し通すことができる。
また誰が決めたのか知らないが、複数人で行くカラオケには「同じ曲を何度もリピートしてはならない」という不文律が存在する。
しかしながら、ヒトカラにおいてはそんな不文律は存在しない。
本当に歌いたい曲を、自身の納得がいくまでエンドレスリピートしていいのである。
また筆者も歌には苦手意識があるほうだが、ヒトカラではよほどマイク音量を上げない限り誰かに聞かれる心配もないし、他人が歌う妙に長たらしいバラードにイラつくこともない。
まさに「ずっと俺のターン」状態である。
これらのほかに挙がったヒトカラのメリットを、いくつか紹介しておこう。
「一番しか歌わなくても良いし、ちゃんと歌えなくても気にならない。踊ったりしても引かれない」(30代、女性)
「強いクセで歌っても問題がない」(30代男性)
傍若無人の振る舞いとは、こういうことだ。
複数人でのカラオケならバッシングの嵐に遭うこのような振る舞いも、ヒトカラならば許される。
このような話を聞いていると、むくむくとヒトカラしたい欲求が芽生えてくるのを感じてこないだろうか?
ヒトカラのメリットの本質、それは「Release yourself(己を解き放て)」にほかならない。
あなたはいま、紛れもなく、ヒトカラを欲し始めている。
ヒトカラだからこそ歌う曲がある
ところでヒトカラのメリットとしてもっとも多く挙がった「どんな選曲をしても引かれない」というメリットだが、これをもう少し深掘りしてみたい。
「引かれないための選曲」ということは、裏を返せば、複数人でいくカラオケでは絶対に歌わないが、ヒトカラなら歌う曲が存在するということになる。
そこでそうしたヒトカラ専用の曲があるのか回答者に聞いてみたところ、大きく分けると4つのパターンが確認できたので、順に紹介していく。
【1】異性のアイドルソング
「恋するフォーチュンクッキー(AKB48)」(20代男性)
「明日の傘(V6)」(30代、女性)
アイドル好きの方ならアカペラでも歌えるくらい常日頃聞きこんでいる一方で、披露する機会にまったく恵まれないのが、異性が歌うアイドルソングである。
唯一披露できる舞台としてヒトカラが選好されることになったようだ。
【2】コアなアニソン・キャラソン
「クックロビン音頭(パタリロ)」(40代女性)
「檄!帝国華撃団(サクラ大戦)」(30代女性)
「水の証(機動戦士ガンダムSEED)」(30代女性)
こちらのコアなアニソンやキャラソンもアイドルソングと似ているところがあり、人前で歌う機会にまず恵まれないジャンルと言える。
ヒトカラはこうしたコアなアニソンにも、歌いあげる舞台を提供してくれる。
【3】オペラ・クラシック名曲
「魔王(シューベルト)」(30代女性)
「愛あればこそ(宝塚歌劇団劇中歌)」(40代女性)
その手があったか、と膝を打ってしまいそうな選曲である。
意外と複数人で行くカラオケでもこうしたオペラやクラシック曲を歌うと、スマホや曲予約に没頭している友人も手を止めて聞き惚れてしまうくらいの効果があるかもしれない。
ただしそれに伴うリスクは自己責任でお願いしたい。
【4】アーティストのメドレー曲
「BUCK-TICKメドレー」(40代女性)
オールでカラオケを続けてきた明け方に、みんなの持ち歌がなくなって曲も途切れ途切れになったときにのみ歌うことが許される「アーティストメドレー」。
しかしながら、ヒトカラにおいては一曲目からいってもらってもかまわない。
7分を超す長尺のものがメドレー曲には多いが、なんならメドレー曲をリピートしてもらっても誰もあなたを咎めることはない。
ヒトカラ最大のデメリットは「入店/退店時の気まずさ」
さてここまでヒトカラの自由奔放なメリットや魅力について見てきたが、一方でデメリットのほうにも目を向けてみることにしょう。
結果は下図だ。
まず全体では、デメリットとして過半数を超えた項目はなかった。
これは先ほどのメリットと比較すると、ヒトカラのデメリットをあまり感じていない回答者が多いことがうかがえる。
ただそうした中でも47.7%の回答者がデメリットと感じたものが「入退店時の気まずさ」である。
これは受付をしてくれる店員の目もあるし、空き待ちをしているほかの利用客と鉢合わせしたときの状況を指している。
「ドリンクを運んでくれる店員の目が痛い」(34.7%)も同じようなデメリットだ。
ただこうしたデメリットは、あまり気にする必要はない。
というのも、まず「対店員」の気まずさに関しては、店員はもはやヒトカラ利用客に対して慣れ切ってしまっている。
今回の調査に伴い筆者が調べた限りだと、「ヒトカラ」という現象は少なくとも15年以上前にすでに発見されていただけでなく、2009年にいったんのピークをつけている。
またここ2、3年内ではヒトカラ専門店の出店数も増えており、店員側に変な目で見られるという時勢はとっくに過ぎていると考えることができる。
一方で「対ほかの利用客」からの視線に関しても、案ずることはない。
「一人で空き待ちはしたくないので、空いている時間やお店を選んで入るようしている」(40代女性)
のように、利用客が集まる店やタイミングを工夫するという手もある。
またカラオケを併設しているインターネットカフェなら、カラオケ客なのか漫画やインターネットを利用しに来た客なのか見分けがつかないので、ネットカフェでヒトカラを楽しむというのも一手だ。
もちろんヒトカラ専門店が近所にあるなら、そこも選択肢として加えるのも有力な手だ。
総じてこれまで見てきたように、ヒトカラで得られるメリットと瞬間的な気まずさというデメリットを天秤にかければ、メリットのほうが大きいことは明確である。
ヒトカラの利用実態
ここまでヒトカラの魅力を見てきたが、いよいよヒトカラのために一歩を踏み出す決心がついたのではないだろうか。
となると次に気になるのは、経験者たちはどのようにヒトカラを利用しているのか?の利用実態である。
そこでヒトカラ経験者の利用実態について見ていくことにしよう。
ヒトカラに行く理由は「ストレス発散」が最多
まず「人はなぜヒトカラに行くのか」という理由から見ていこう。
結果は「ストレス発散」(47.0%)が最多となり、次にレパートリーの「練習ができる」(26.7%)が続いた。
先にも見たとおりヒトカラの魅力の本質は「Release yourself」のマインドであり、心のままに振る舞うことにある。
利用動機として「ストレス発散」や「他人を気にせず歌える」に約7割もの票が集まったのはうなずける結果だ。
また歌のうまい人はさらに腕を磨くため、歌が苦手な人は人前で歌っても恥ずかしくないレベルに引き上げる鍛錬の場としてヒトカラを利用していることも、確認できた。
ヒトカラはたまに行くもの
理由に続いて、次はヒトカラに通う頻度について見ることにしよう。
総じて「月に1回以上」ヒトカラに行く人は33.0%と、やや低めの頻度が多い結果となった。
「気が向いたらたまに行く」というのが、多くの人のヒトカラの利用頻度と言えそうだ。
もちろんヒトカラだけに、誰かとスケジュール調整をする必要はないので衝動にまかせて行ってしまえるのは利点である。
ヒトカラの滞在時間は2時間程度が最多
利用時間では「2時間以内」の回答者があわせて72.7%と多くなった。
5時間くらい粘る猛者も5.3%ほどいるが、おおむね2時間も歌い続ければ自身のレパートリーは使い果たすし、のどの調子も悪くなってくると考えられる。
ヒトカラ初心者の方は、時々休憩をはさみながら気が済むまで歌いこめる2時間コースをおすすめしておきたい。
逆に言うと、フリータイムを利用しても2時間程度で限界がくるため、自分ののどの強さを確認するまではヒトカラのフリータイム利用は避けたほうが無難である。
ヒトカラの平均費用は「1,500円以内」が7割超え
ヒトカラにかかる費用では、「1,500円以下」が77.0%となった。
料金はカラオケ店や店舗ごとに異なるが、たとえば筆者の最寄りの「ビッグエコー」では、
・室料300円(30分、平日18時以降)
・ドリンクバー 495円
だったので、2時間の室料とドリンクバーをつければおおむね1,500円ほどになる計算だ。
もっと安く押さえたい場合は、平日午前などの割引制度を利用してコスパをあげることもできる。
いずれにしても、マッサージや遠方地へ出かけることを考えればストレス発散方法として気軽に利用できる価格帯ではないだろうか。
カラオケチェーンは軒並みヒトカラ利用できる
最後にヒトカラをどこのカラオケ店で利用したか?について見ておこう。
地元のカラオケ店を含めると収拾がつかなくなるため、ここではカラオケの全国チェーン店と、1人カラオケ専門店、インターネットカフェに絞って見ることにする。
▼ヒトカラを利用したカラオケチェーン店
まねきねこ | 40.7% |
ビックエコー | 34.7% |
カラオケ館 | 26.3% |
ジャンカラ | 20.3% |
JOYSound | 17.3% |
カラオケBanBan | 14.0% |
コート・ダジュール | 10.0% |
歌広場 | 9.7% |
カラオケJOYJOY | 4.7% |
コロッケ倶楽部 | 3.3% |
1人カラオケ専門店 | 4.0% |
ネカフェ・漫画喫茶 | 9.7% |
店舗数の多さが回答者の割合の多さになっているので、割合はあまり気にすることはない。
ここで大事なのは全国チェーン店なら、ヒトカラの利用ができるということだ。
ただしヒトカラの利用にあまり寛容ではないカラオケ店もあり、「混雑時にはヒトカラお断り」という制度をとっているところもある(歌広場やコート・ダジュールなど)。
またこの中にはないが、人数単位で料金設定しているのではなく部屋単位で料金設定しているカラオケ店だと、ヒトカラはかなり割高になってしまう。
そのためヒトカラに出陣する際には、下記の3点をチェックしておくようにしよう。
・ヒトカラに対応しているカラオケ店か?
・混雑する店舗・時間・曜日か?
・料金は人数単位で設定されているか?
経験者が教えるヒトカラを心ゆくまで楽しむTips
さてこれであなたはヒトカラデビューをする勇気と、どこの店舗に出向き、どのプランを選択するべきかの方針を手に入れたことになる。
あとあなたが手にしなければならないのは、デビュー戦からヒトカラをとことん楽しみ尽くすための知恵だけだ。
そこで300人のヒトカラ経験者が教えるヒトカラを楽しみつくすためのコツを、いくつかピックアップしながら紹介していくことにしたい。
歌いたい曲目リストを持っていくべし
「歌いたい曲を事前にまとめておくことです。考える手間も省ける上に、行った時は思い出せなかったのに、帰り道にあれも歌いたかったなって思い出すことがあるので、良い方法だと思います」(20代女性)
意外にも多かったのが、この曲目リストに関するアドバイスだ。
ヒトカラでは誰かが歌っている間に次の曲を予約する、ということがない。
そのため自身が曲を選んでいる間は完全な無駄時間になってしまう。
限られた時間を有効活用するためにも、また歌いそびれを防止するためにも、せめて絶対に歌いたい曲のリストだけでも作っておくようにしよう。
のどのケアは入念に
「インターバルなしで長時間次々と歌うことになるので、喉のケアが大切だと思います。飲み物はお茶やコーヒーは避け、お水(できれば温め)が好ましいです」(40代男性)
せっかくヒトカラを満喫しようとしても、満足するより先にのどがやられてしまっては台無しだ。
ほかにも「トローチ」や「龍角散ののど飴」の持参を推奨する声もあった。
ボイトレをやり込んでいるプロの歌手でも、ライブは曲間のMCを含めて2時間程度なのだ。
素人の私たちののどは思っている以上にもたないことを念頭に置こう。
ゾーンに入った者勝ち
「1人だからといって恥ずかしがらずに、1人だからこそ、アーティスト気分で気持ちを込めて熱唱すること」(30代女性)
「歌ってる歌手のように、顔の表情や手振りなどをつけて自分に酔って楽しむ」(50代女性)
ヒトカラではその場にいるほかでもない、自分だけのために歌うことに集中するべきだ。
自分以外いない室内で、一体だれに遠慮する必要があるというのだろうか。
ライブをしているアーティストになりきったり、振り付けをつけて歌ってみたり、自分が最高だと思えるやり方で、最高の時間を過ごすからこそ高い満足感が得られる。
もし消化不良のまま部屋をあとにしたら、あなたは来週またヒトカラに行く羽目になるかもしれないのだ。
――燃え尽きろ。真っ白な灰になるまで。
まとめ
以上が2022年時点のヒトカラに関する調査報告だ。
最後に付記しておきたいのは、このヒトカラに関するアンケートで300名の回答者を募集した際、異例の短時間で回答が集まったことだ。
通常なら2~3日程度300票を集めるのにかかるものが、たったの一晩で集まったのだ。
それはヒトカラ経験者が多いことも意味するし、またみんなヒトカラに関して一家言あるようにも感じ取られた。
少なくともヒトカラは調査前に思っていたよりも世間に浸透している現象であるし、また肯定的に印象を持ちながら利用している人が多いということは間違いない。
ぜひこれを機会に充実したヒトカラでデビューしていただきたい。
アンケートについて
アンケート実施法
・アンケート方法 インターネット上でアンケートを実施
・回答者数 300名
・調査日 2022年7月13日
・設問は単一選択式
・調査主体 【300人のホンネ】編集部
・回答者性別 男性32.3%、女性67.7%
・回答者年齢分布 10代1.3%、20代30.7%、30代41.0%、40代18.0%、50代以上9.0%
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