あなたには人に言えない悩みがあるだろうか?
今回アンケート調査を実施し、全国の男女137人から人に言えない悩みを収集した。
すると言葉は悪いが、しょうもないとしか言えない悩みから、映画化すれば全米が泣き出しそうなほど壮絶な悩みまで、さまざまな人に言えない悩みが集まった。
回答数や集まるスピードから考えると、人に言えない悩みをもって生きている人はさほど多くないことが推測される。
ただし今回の悩みを見ていると、解決することがいいことなのか疑わしい悩みや、そもそも未来永劫解決しない悩みも多く含まれている。
実際に人に言えない悩みの解決のために、なんらかの努力をしているかを問うたところ、約半数の回答者はさして努力していないと回答している。
そのため本稿が目指すところは、人知れず悩んでいる人は少なくないという客観的な事実を提示することに努めたい。
つまり安易な解決法を示したり、「頑張っていこうよ」などという空言をいうことは目的としていない。
人に言えない悩みを持つ人は、おしなべて孤独である。
本稿を読んで「自分以外にも人に言えない悩みを抱えている人はいるんだな」と、孤独をつかの間でも癒すことができれば幸甚だ。
【カテゴリ別】人に言えない悩みランキング
まずは集まった137の人に言えない悩みをカテゴリに分類し、どういった悩みが多いのか?をランキング形式で見ていくことから始めることにしたい。
結果は下図で、「健康」に関する人に言えない悩みが30.7%で最多得票となった。
そうした「健康」の人に言えない悩みに、「恋愛」(16.1%)、「人間関係」(15.3%)、「金銭」(13.9%)の悩みが続いた。
人間の悩みのほとんどは人間関係に起因するという説もあるが、今回の「人に言えない悩み」という調査ではまた違う結果となった。
あくまで今回調査した悩みは「人に言えない悩み」であり、意外と人間関係の悩みは、ひとりで抱え込まず人に相談しやすい悩みが多いのかもしれない。
ここからは各カテゴリの悩みを個別に掘り下げて見ていくが、胸に迫るような悩みも含まれているので、読み進める前に心の準備をしてからご覧いただきたい。
「健康」に関する人に言えない悩み
人に言えない悩みとしてもっとも多く挙がった「健康」に関する悩みだが、個々の悩みは多種多様なものだった。
中でも多かったのは、メンタルヘルスに関する悩みをもっている人と、少し珍しい病気を患っている人だった。
「解離性人格障害があり、精神科に行っていること。自分の中にもう1人いてその人は同じ名前で攻撃性が高いこと」(33歳女性)
「統合失調症という病気を治療中」(45歳男性)
「過敏性腸症候群で悩んでいます」(46歳男性)
なぜこれらの悩みが「人に言えない」悩みになるかというと、友人や知人の誰かに相談しても、どうせそのつらさや気持ちはわかってもらえないという絶望があるからだ。
また周りに余計な心配をかけてしまうから、黙っているという声もあった。
これらほど深刻ではないが、筆者もかつてマムシに噛まれ、その毒が右足に回って太もものリンパ節が腫れ上がり、2週間ほど足を引きずって生活していたことがある。
すると痛みから早く歩けないため、階段の昇り降りなどもゆっくりになってしまうわけだが、それでも後ろからやんわり押してきたり、「邪魔だ」とばかりに舌打ちしていく人もいる。
たかがマムシに噛まれた程度でも、一部の心ない言動に心が荒む思いだったのだ。
それが見た目上は元気な人と変わらないメンタルヘルスの不調ともなると、周囲の人から傷つけられる機会も多くなるのは想像にかたくない。
それならいっそ人には言わず、自分だけで抱えようと考えてしまうのも無理はない。
一方でこれらの悩みほど深刻ではないが、人に言えない健康に関する悩みにはこのようなものも目立った。
「ずっとデリケートゾーンがかゆい」(51歳男性)
「今年の夏ごろから股間がひどくかゆくて悩んでいます」(48歳男性)
「長年の痔です」(63歳女性)
つまりデリケートゾーンの悩みである。
病院にいって患部を晒すことを想像すると、憂うつになってしまう気持ちも理解できる。
はたから見ていると「さっさと皮膚科に行きなさいよ」としか思えないが、当人たちは日々「今日は昨日よりましに見えるから、もしかしたらこのまま治癒するのではないか」などと逡巡し、人知れず期待と絶望を繰り返しているのである。
「恋愛」に関する人に言えない悩み
さて「健康」に次いで多かった人に言えない悩みは「恋愛」である。
ただし恋愛の悩みなら人に相談する人も多いわけで、ここでいう恋愛の悩みはもっとドロドロしている。
具体的には、このような悩みが多かった。
「W不倫歴10年目に突入したこと」(36歳女性)
「二股している」(33歳女性)
「会社の社長が既婚者なのに両思いだが、不倫になるので食事以外なにもできないこと」(28歳女性)
もちろん不倫や浮気の悩みは、誰かに相談することで周囲にバレる墓穴を自ら掘っているのと変わりないので、「人に言えない」となってしまう。
また仮に誰かに相談したところで、自ら悩みの種になるような状況に首を突っ込んでおいて、一体それの何を理解してくれというのか?という顔をされるのがオチだ。
当人たちがいかに苦しくとも、はたから見ると「自分が好きでやってるんだからどうでもいい」扱いされる、というなかなか稀有な悩みと言えるかもしれない。
また恋多き人たちの悩みとは対照的に、このような恋少なき人たちの恋愛の悩みもあった。
「モテそうと言われるけど、実はほぼ恋愛経験がないこと」(28歳女性)
「何十年と恋人がいないことです」(31歳女性)
「彼氏ができないと悩んで、yahoo知恵袋で質問していること」(24歳女性)
「非モテ」や「弱者男性」など、恋愛市場から淘汰された男性ばかりスポットが当たるが、原理的に考えてその裏では、ほぼ同数の恋愛市場から弾かれている女性も存在するはずである。
マッチングアプリやSNSなど、地縁とは関係のない男女が結びつくインフラが普及すればするほど、恋愛市場に参入することを拒む男女が増えるという謎の現象が起こっているのは確かだ。
また「恋愛」に関する悩みには、こうした悩みもある。
「特殊な性癖を持っている」(39歳男性)
「SMが好きだけど、変態と思われそうでいえない」(28歳女性)
「夫との夜の営みが満足できないこと」(36歳女性)
性的な嗜好というのは実は厄介なもので、その人の人格を歪んで見せてしまったり、時に法を逸脱するものも含まれてしまう。
そして面白いことに、その苦悩が文学になるというのは、近代の日本文学の巨匠と呼ばれる人たちの作品群を見れば明らかである。
大半の人は夢かなわず人生を終えてしまうだろうが、一生に一度でもよき理解者に出会えることを願うばかりである。
「人間関係」に関する人に言えない悩み
続いて「人間関係」に関する悩みを見ていこう。
人間関係の悩みには、主に家族との関係の悩みが多かった。
具体的には、このようなものだ。
「毒親と絶縁状態であること」(22歳女性)
「夫が反ワクチン・反医療の陰謀論者になってしまったこと。すべてのワクチンには効果がないと思っており、反論したら暴力を振るってくる」(42歳女性)
「なぜかわからないが義理姉に嫌われていて、嫌がらせをされること」(51歳女性)
家族というのは互いを深く理解し合い、切っても切れない心のつながりで結ばれているもの……であってほしいが、現実はそうはいかない。
もっとも典型的なのは戦国時代で、実の親子や兄弟が憎しみあい、互いを打ち滅ぼそうと国を挙げて戦争を起こすのだ。
美しく心温まる家族像を描いた小説や映画が流行するのは、現実の家族関係はそこまで美しくないからともいえる。
またこうした家族間の問題ではなく、生まれた瞬間から人に言えない悩みを背負った人もいる。
「自分は「母と祖父」の間に生まれた人間であり、そのことを知るのは私と母だけ(祖父は他界、育ての父は知らない)」(48歳女性)
「一緒に暮らしている子ども以外に、それぞれ別の女性と作った2人の子どもが県外に存在していること」(47歳男性)
まるでドキュメンタリー番組「ノンフィクション」に出てきそうな衝撃的な話だが、今回集まった人に言えない悩みで、こうした婚外子関連の悩みをもつ人は3人いた。
また2016年の調査では、日本の婚外子は2.3%となっており、2クラスに1人くらいの割合で存在する。
意外とこの婚外子の悩みを抱える人は、多くはないが一定数存在する。
「金銭」に関する人に言えない悩み
最後に「金銭」に関する人に言えない悩みを見ていこう。
金銭に関する人に言えない悩みは、おおむね傾向は同じだ。
「株式で大きな含み損をかかえていること」(39歳、男性)
「競馬で1000万円以上負けている」(36歳、男性)
「専門職でそこそこ高い年収を若い時から得ており、結婚を考えているパートナーもいますが、これまで趣味や浪費でお金を使い続けていたこともあり、結婚できるほどの貯金を持っていないことを、パートナーにも、家族にも言えない状況です」(35歳、男性)
つまり、借金やギャンブル癖、そして貯金がないという悩みだ。
筆者も20代は貯金ゼロ生活を送っていたので、人に言えないという気持ちがすごくよくわかる。
遊びに誘われて「金ないから無理」という言い訳が自然に通じるのは大学生までで、25歳にもなると「え、別に鳥貴族とかでいいんだけど?その金もないの…?」と不思議な生物でも見るかのような目で見られるのだ。
ちなみにこのあたりの苦悩も近代文学の鉄板ネタで、世界ではドストエフスキー、日本では武者小路実篤や石川啄木を筆頭に、文学まで昇華させた偉人たちがいる。
人に言えない悩みの解決に支払う金額ランキング
さてここまでは、さまざまなタイプの人に言えない悩みをカテゴリ別に見てきた。
笑ってしまうような軽い悩みから、小一時間考え込んでしまうようなヘビーな悩みまで入り混じっているが、一体どのカテゴリの悩みが深刻で優先的に耳を傾けるべき悩みなのだろうか?
そこで「その悩みの解決のために、いくらまでなら金銭を支払うか?」を問うた結果を、カテゴリ別にまとめた結果が下図だ。
その悩みの解決のために支払う金額として、もっとも高額だったのは「恋愛」に関する悩みで120,518円と2位よりも倍以上の差をつけた。
ただし「恋愛カテゴリ」で高額な金額を記入したのは、もちろん単純な「好いた、惚れた」に悩む人たちではない。
つまり特殊な性的嗜好をもつ人と、不倫関係に悩む人だ。
不倫関係に悩む人が高額な金銭を支払って、不倫関係を解消したいのか、はたまた不倫ではなく現在の配偶者と別れて再婚したいのかはわからないが、人間の業の深さが垣間見える結果だった。
また2位の「美容」(53,250円)で悩む人たちは、コンプレックスに悩む人たちが高額の金額を入れていた。
つまり胸のサイズであったり、頭髪が薄くなってきたことへの悩みだ。
3位の「金銭」(44,228円)で高額な金額をつけた人は、先にも見た通り借金にあえぐ人たちで、一体どうやってその金額を工面するつもりなのかはわからないが、借金がなくなることを心から希求していた。
一方で、悩みの解決にそこまでお金を払いたくないと考える人たちは「仕事」(28,200円)で、ずっと無職であることへの悩みを抱える人たちだった。
なんらかの職にありつければ無職であることのコンプレックスも解消するし、解決のために支払った金銭も十分ペイできそうなものだが、そもそも職を得ることへの意欲が低いのかもしれない。
総じて、悩みの深刻度でいうと、特殊な恋愛や自身へのコンプレックスに悩む人の深刻さがもっとも重いということになりそうだ。
人に言えない悩みを抱えている人は長期間抱え続けている
最後に人に言えない悩みを抱えている人は、その悩みとどのくらいの期間付き合っているのか?ということを見ておこう。
結果は下図で、「5年以上」と長期にわたって悩み続けている人が56.2%と半数を越えた。
もちろんこれまで見てきたように、持病やメンタルヘルスという健康の悩み、特殊な性的嗜好や家族関係の悩みは、長期間に及ぶ悩みだ。
そのためこの結果は自然な結果といえるが、長年付き合っている悩みというのは、もはやその人の人生の一部といっても過言ではない。
つまり人に言えない悩みを抱えている人というのは、その悩みがあるからこそ、その人独自のものの見方、感じ方、とらえ方を形成しているということだ。
人に言えない悩みは、人に言えないゆえに誰かからヒントをもらったり、手を差し伸べてもらえることはない。
そのため自分の頭で考え、自分で判断していく必要に迫られるが、そうした思考のプロセスはその人個人だけでなく、より多くの人の傷を癒すものになりうるものなのかもしれない。
まとめ
以上が今回調査した人に言えない悩みに関するレポートだ。
冒頭でもいお伝えしたとおり、本稿には安易な解決策やむなしい励ましはない。
ただ多くの人に言えない悩みを抱える人たちの声を紹介することで、「あなただけが孤独に苦しんでいるのではない」という事実を少しは示せたのではないかと思う。
本稿が一時の慰めになれば、幸甚だ。
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